パスポートとイスタンブール

2018-09-25 18:30[ にく

仮想通貨小噺 仮想通貨 bitcoin

2泊3日でフィリピンのセブ島に行ってきました。今週末のゴルフ合宿に向けたポイント稼ぎの総決算ですが、7月の転職以降、サイトの立ち上げなど忙しくてあまり遠出が出来なかったので、この3連休に思い切って行くことにしました。片道5時間弱、行き午前便、帰り午後便を利用すれば3日で行けなくはありませんし、家族4人で20万円強と連休の割に安いチケットが旅行会社経由で取れたこともあります。現地のホテルはラグーンと呼んでいる塩水プールの周りに部屋があって、ほぼ1日中遊べて子供たちも大満足でしたが、ここに至る道のりは平坦ではありませんでした。

まず、1歳の娘のパスポートを作成する必要があります。9月11日に問い合わせてみると、休みが多い関係でその日に申し込んでも受取は19日で、更に戸籍謄本が必要と言われました。今時、戸籍は住民票で確認できるから代用できるだろうという認識が甘かったです。大急ぎで実家に謄本を依頼、12日速達で送ってもらいました。出発が22日ですから13日申請がデッドラインです。滋賀からの速達が13日の午後2時になっても届かず、今回は見送りかと諦めかけたのですが3時過ぎに届き、大急ぎで4時半の締め切りに間に合せ、それを確認した上で飛行機を押えました。確か5年前に婚姻届を提出して新しい戸籍が作られたのですが、その時はシンガポール赴任中だったので当たり前のように実家の滋賀にしましたが、いざという時に本当に不便な制度です。

やれやれと思った次にふと不安がよぎります。結婚したのが5年前の12月で、渡星のために期限が6か月を切っていた家内のパスポートを切り替えたはずで、おぼろげながらパスポートの色は青だった記憶があります。急いで家内に確認すると、確かに5年有効で今年12月が期限で6か月どころか3か月も切ってしまっています。ああ、今度こそもうダメかと思いつつ、ダメ元で確認すると、なんとフィリピンは2015年からパスポートの残存期間6か月という条件が外れているではないですか。タイやシンガポールなどアセアンは大体6か月必要な国が多いとの認識でしたが、フィリピンは例外になっていたのです。そういえば、結婚式が終わってすぐに旅行に行き、すぐにシンガポールに行ったので、出発前に家内の親父さんが5年で申請していたことを思い出しました。

結局、パスポートの受取が出発前日になったのですが、旅行会社に連絡するために家内からコピーを写メして送ってもらいました。すると家内のパスポートが旧姓のままで、予約名と違うことが判明しました。旧姓なのは前回の切り替えタイミングからして当たり前で小職がうっかりしていました。気付いたのが出発前日の17時過ぎ。あわてて旅行会社に問い合わせると、原則としてパスポートと予約名が1文字でも異なると飛行機には乗れない、航空会社のカウンターに直接行って交渉する手もあるが、スペルミス等はともかく苗字が異なるケースだとなかなか難しく、乗れないケースもあると言います。ならば出発前日で高くはなるが、家内の分だけ新しく旧姓で予約して、今の予約をキャンセルする方法があると聞き、別部署の予約センターに連絡すると帰りの便が一杯で予約は出来ないと言います。旅行会社のキャンセルする部署と予約をする部署が別々なのです。では先にキャンセルをしたら1席空くはずだから、料金が異なっても構わないからその席を新しい予約に回してくれとお願いしても、空き状況は航空会社が管理しているので、キャンセルした席を新たに予約できるかは、キャンセルしてみないと分からないと言います。更にキャンセルが可能な18時半まであと10分で、もうどうしたらいいのか分かりません。そこで冷静になって考えると、①そもそもこの旅行は家族孝行のためで、空港に直接行くギャンブルは家族を不安にさせるのであり得ない②もしキャンセルして新しい予約を取るとして、もし新規予約に失敗したら、朝早い便か乗り継ぎ便で取り直せばいいと覚悟を決め、一か八かキャンセル部署で手続きをして、すぐさま新規予約部署に電話を繋いでもらうと、見事に1席空いていて無事予約を取ることが出来ました。差額プラスキャンセル料の〆て約9万円の追加出費は痛いですが、出発前日に中止になったり、空港のカウンターで足止めを食らい、みんなが落胆する事態は何とか避けられました。

今回の問題はこちらの手違いが主因ですが、航空券の名前の変更が出来ない融通の利かなさも原因の一つです。まあ、それが出来れば旅行者間で航空券の融通が出来てしまいますし、それ以上に航空券の名前は乗客名簿といって何かあった時に重要な書類で、確か飛行機が出発する際には最後に乗客名簿を渡してドアを閉める決まりになっていて、厳格な運用になっているのかもしれません。同じようにBTCの基本技術であるブロックチェーン技術の本質は書き換えを防ぐことにあります。上の例で行けば、例えば航空会社がカウンターで名前が間違っているからと変更に応じてしまうと、実はそれが虚偽の申し出で元の名前のパスポートを持った人が来た時に困ってしまいます。そもそも世の中でこれだけ紙の契約書が氾濫しているのは書き換えを防ぐためです。それをデジタルデータで実現したのがブロックチェーン技術で、それ故、価値保存手段や決済手段として利用可能になったわけです。とはいえ、銀行の預金残高などデジタルデータで改ざんが難しいものはいくらでもあります。しかし、デジタルデータの改ざん防止のために信頼できる管理者が強固なサーバーを準備し厳格に運用する必要があります。三菱UFJフィナンシャルグループの平野社長が日経新聞のインタビューでいわく(預金だけないにしろ)同グループのシステムの維持費だけで年間1000億円かかるそうです。それでは手数料を安くするのは容易ではないでしょう。

これに対し、ブロックチェーン技術ではP2Pと言って、取引台帳はネットワークの参加者で共有されており、お互いに監視することで不正を防いでいますが、このP2P自体はブロックチェーンに限った技術ではありませんし、このネットワークには誰でも参加できるので改ざんを防ぐのに十分とは言えません。これはビザンチン将軍問題と名付けられた1980年に数学者のランポート博士が提起した分散型ネットワークの信頼性に関わる問題で、お互い信頼できないネットワーク参加者の間でいかに真正性を確保するかです。そんな頃から分散型ネットワークのそれも問題点を議論していたとは驚きですし、よほどビザンチン帝国の将軍に裏切者が多かったのでしょう。BTCではProof of Workと言って難しい計算問題を解かせること(マイニング)で、不正なデータをブロックに記録させるのを困難にしています。さらにマイニングに対して報酬というインセンティブを与えることで、マイナーは誠実に行動していた方が経済合理性がある仕組みを作り上げています。すなわち、マイニング及び報酬というシステムを利用することで、ビザンチン将軍問題における裏切り者が現実的にいなくなる状況を作り出すことに成功した訳です。すなわち、ブロックチェーンを世に誕生させたBTCのブレークスルーは、それまで存在したP2Pや分散台帳、(一部関係するが)暗号化技術ではなく、マイニングと報酬という仕組みだった訳です。封建制度を成り立たせるためには忠義に対する恩賞が必要だということでしょうか。

因みに、ビザンチン将軍問題のビザンチンとは西ローマ帝国滅亡後の東ローマ帝国を指す言葉ですが、当時は主にバルカン半島を領地としていました。その後、オスマントルコの台頭によりコンスタンティノープル(現イスタンブール)に閉じ込められていきます。そこでビサンチン将軍問題は同国の将軍間の問題という説と同時にコンスタンティノープルを包囲したオスマントルコ軍の問題という説もあるようです。いずれにせよ、当時ビザンチン帝国やオスマントルコに対峙していたのがベネチアを中心としたイタリアの都市国家で、将軍たちに裏切りが多かったのは潤沢な資金を背景に彼らが裏から手をまわしていた様子が塩野七生氏の海の都の物語に描かれています。最終的にはオスマン軍に地中海東部の制海権を握られた欧州諸国は大航海時代に移る訳ですが、イスタンブール、ベネチア、ドブロブニクなど美しい街が多く残っているのは当時の遺産を多く受け継いで、大航海時代に没落したからかもしれません。個人的にはギリシャに行ったことがないので、子供たちが少し大きくなったら、是非ともエーゲ海のクルーズに連れて行きたいと思っています。セブに行ったりするのは家族孝行と言ったりしていますが、実は自分の旅行好きの虫が疼いているだけかもしれません。ただ、いま一番行きたいのはセントアンドリュースなので、その為には息子より娘にゴルフをさせた方が可能性は高いか、、、などと親バカなことを考えています。

(にく)

にく

前職は外資系金融機関外国為替営業。国内だけでなく海外を仕事(?)で飛び回る日々を送っていた。自らライオンと称しているが、他の動物に例えられることが多い。 好きなものは東南アジア諸国。趣味は早朝ゴルフ。特技はタイ語。

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