【第14回】 オプションディーラーの視点 ~リスクリバーサルはBTCコール高へ~

2019-10-30 13:46[ SF

オプションディーラーの視点 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

BTCオプション市場の動向(10/23~10/29)

直近1週間のビットコイン円相場は、10/23に一時80万円割れまで急落するも、10/25には一転して112万円近辺まで暴騰する荒々しい値動きとなりました。わずか2日間で32万円もの値幅を記録したことから、オプション市場では、ガンマ(Gamma)需要が急拡大。期近物インプライドボラティリティ(1week)は一時100%超え、フロントエンド(1month)も、55%近辺から95%近辺へと跳ね上がりました。8000ドルや、9000ドルの巨大ピン(=ガンマロング)が落ちたことも(オプション勢のガンマロングが無くなったことから8000ドルや9000ドル近辺での潜在的なBTC現物売り圧力が無くなったことも)、BTC価格を高騰させる一因であったと推察されます。



リスクリバーサルはBTCコール高方向に急拡大

ビットコイン価格の高騰を受け、仮想通貨オプション市場ではBTCコールの人気が高まっています(とはいえ、プライスがとてもワイド化しているので、気配値のみがひたすら右に寄っていくイメージです=オプションを積極的に売るプレイヤーが不在の状態)。リサーチ会社skewが提供する添付ピクチャによると、25deltaのリスクリバーサルが大きく下方向に向いていることが確認できます(下方向に沈めば沈むほど、BTCコールオーバー)。


出所:skewウェブサイトより作成(https://www.skew.com/dashboard/bitcoin-options



リスクリバーサル急拡大の背景は?

リスクリバーサルがBTCコール方向に急拡大している背景には、以下の2つの理由が挙げられます。

①市場参加者の相場観がBTC上昇方向に傾いている

こちらはとてもシンプルな理由です。相次ぐ中国発の好材料を受けて市場参加者の目線が「上方向」に傾いた可能性があります(BTCコールを買いたい人の数が単純に増えた状態)

②需給面でBTCコールの売り手が不在となっている

つまり、オプションを売ってくれる人が減っている状態です。個人投資家中心の仮想通貨オプション市場において、BTCコールの売りは、最もリスクが高い戦略です。BTCプットの売りは、損失がストライクレートに限定されますが(8000ドルPUTを1単位売れば、例え価格がゼロになったとしても、8000ドル以上損失を被ることはありません)、BTCコールの売りは、損失無限大です(BTC価格が暴騰すれば、暴騰後の実勢価格と行使価格の差がそのまま損失となる)。従って、オプションビジネスを前進させる為には、BTCコールの売り手(リスクを取ってくれるプレイヤー)を見つけることが最重要です。

ここからは推測の域を脱しませんが、仮想通貨オプション市場における「BTC売り」の主要プレイヤーは、(A)マーケットメイカー(LP=Liquidity Provider)と、(B)マイニングファームです。

前者については、今回のBTC価格暴騰を受けて、ポジションがかなり傷んでいると推測されることから、オプションの売却余力(マーケットメイカーとして追加でオプションを売る余力)が無くなっている可能性が挙げられます。こうした行動は、マーケットメイカーとしてオプションを売るケースが多い金融機関のオプショントレーダーにも見られる現象です。歴史的大相場(リーマンショックやギリシャショック、チャイナショック、スイスフランショック、ブレグジットショック等)を受けてポジションが痛み、本来マーケットメイカーとして売り手側に立つはずの金融機関がロスカットとしてオプションの買い手側に回る状態です。マーケットメイカーが一斉に買い手側に回ることで、オプション市場からオファーが消えます。まさに、今回と同じ現象です。

後者については、中国ファンダメンタルズの好材料を受けて、彼らがコンスタントに取り組んできたとされているレンジフォワード(=リスクリバーサルと同じ意味。BTCコールを売った際に得られるオプションプレミアムを用いて、BTCプットをゼロコストで購入するスキーム)の約定を躊躇させている事が背景と推察されます(※その理由が相場観なのか、既にオーバーヘッジなのかは不明です)。マイニングファームはオプション市場のみならず、スポット市場においても影響力のあるプレイヤーですので、彼らの動き(相場観やヘッジ動向)を、リスクリバーサルの観点で察知(予測)することは重要だと考えております。


まとめ

リスクリバーサルの高止まりを見る限り、市場参加者(個人投資家、ヘッジファンド、マイニングファーム、マーケットメイカー)の目線は上方向に転じたと判断できます。足元は9000-9500ドル近辺のじれったいレンジ相場が続いておりますが、ここから先は、11/1行使期日のオプションを保有するオプション・ロング勢が、セータ負担に耐え切れず、オプションを投げる動きが活発化する恐れがあります。その際は、前回のレポートでお伝え致しました通り、ガンマを投げた直後に相場が動意付く意地悪な現象が出てくる可能性がありますので、カットオフまで残り2日間、突発的な相場変動に注意が必要でしょう。

SF

赤色メガバンクの市場部門出身。英国ロンドンでチーフFXオプションディーラー → 東京本部でFXマーケットアナリスト → FinTechベンチャーで取締役チーフアナリスト → FXcoinでPM。為替一筋17年。G10通貨・新興国通貨・仮想通貨まで幅広くカバー。日本経済新聞社やテレビ東京などマスメディアへの寄稿・出演実績多数。Twitter:https://twitter.com/HelloDerivative

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