2019.11.01【終わってみれば陽線だった10月のビットコイン。11月は?】

2019-11-01 14:55[ 松田康生

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Review

悪材料出尽くしか

10月のBTC相場は終わってみれば底堅い推移。月前半は横ばい圏も上値の重い展開が続いたが、レンジを下抜け一時80万円を割り込んだが、そこから強烈な反発を見せる荒っぽい展開となった。月前半は目立った材料が無い中、楽観的にリブラ構想を推し進めようとする運営側と対照的に、VISA・Master・Paypalとリブラ離脱の動きに嫌気を差したか、じりじりと値を下げる展開が続いた。83万円台でトリプルボトムの形を作り底値を固めると反発したが、結局、200日移動平均線で上値を抑えられた。その後は8000ドルのオプションの重力圏から脱出できず86-7万円近辺で推移していたが、ザッカーバーグ氏が米規制をクリアするまでリブラを開始しないと表明、Googleの量子コンピューターの量子超越性実証発表などでレンジを下抜け一時79万円台に急落。しかし、習主席のブロックチェーン発言あり、1日で約4割の暴騰を見せ、その後は100万円近辺での取引が続いている。

Outlook

10月の乱高下。終わってみれば

先月は3か月陰線が続いた場合、どこで陽転するか傾向は無いが、陰線の連続は最長6か月なので「10月か11月か12月のどこかで急騰」するとし底堅い展開を予想した。結果はかなりドラマチックで、月央まで横ばい、後半に入るとレンジを下抜けし10%近く急落した2日後に40%近く急騰するといった荒っぽい展開で、終わってみれば陽線引けとなった。材料的には9月は米連続利下げやBakktの開始といった好材料が続いたが、Sell the Factだったせいか上がり切れず反落。要は好材料の出尽くしだ。一方で10月の底打ちはリブラの実質延期や量子コンピューターの登場といったネガティブな材料が出尽くしたことが効いたか。習主席のブロックチェーンを技術革新の核にするとの発言がきっかけとなったが、その背後には、利下げの期待などもあり買いのタイミングを待っていた投資家が潜んでいたのだろう。

11月は年間最高

いよいよ年間のパフォーマンスが最高の11月を迎える。勝率(上昇した月と下落した月の割合)でも2月と4月と並び7勝2敗だ。因みに陰線から陽線に転じたケースが20回(今回が21回目)あるが、陽線が1か月で終わったケースは7回。ほぼ1/3の確率だ。FRBは7月も9月も利下げは予防的で今回限りと示唆していたが結局10月も利下げした。にも拘わらず市場は12月の利下げを2-3割しか織り込んでいない。これまで予防的利下げを行った例はオレンジカウンティ破綻やメキシコ危機の1995年やLTCM破綻やアジア通貨危機の1998年の2度あって、いずれも利下げが3回だった事が念頭にあるのだろう。従って、この次の利下げはそうしたシナリオが崩れ、トランプ大統領が言うように量的緩和再開、アメリカ初のマイナス金利導入の可能性まである。米政府債務は2000兆円を軽く越しており、そうした姿勢に不安を持つドル投資家の資金のほんの一部でも流入するだけでBTC相場は跳ね上がるものと考える。

予想レンジ:90万円~150万円


Topic

200日移動平均線に上値を抑えられたビットコイン相場、勝算はあるのか?
BTC相場の上値の重さの一因として8450ドル近辺にある200日移動平均線に上値を抑えられているという指摘がある。9月26日の下げで移動平均を割ってしまっている。ただし、何故200日かというと、土日祝日などを除いた年間の営業日数が近く、特に株や為替において過去1年の平均に近い数字として重視されている。為替などではモデル系と称してテクニカル分析に特化したヘッジファンドなども多く、こうした移動平均線の動きが自己実現的に意識されることも多い。これに対し24時間365日営業している仮想通貨市場において200日移動平均線に注目する意義はあまりない。実際、2015年の反騰前や2016年の2番底時などでもダマしが観察されており、これを割ったからと言って弱気になる必要は無い。ただ、あまり長く下回っていると投資家心理を冷やすので、強気相場継続のためにも正念場を迎えていると言える。
ビットコインの戻しは本物か。過去のパターンからみる見分け方。
今回の83万円からの反発がどこまで行けば本物と言えるか。200日移動平均線が通る92万円辺りが第一関門。昨年12月から今年3月までに30万円台から5回反発したが、うち3回の概ね10%の前後の反発はよくあるダマしの可能性。次に5回中2回は25-30%程度の戻しを見せている。これは10%前後のダマしを上抜けて反発局面入りしても、本格的上昇局面に至るかどうかはこの30%の反発の壁をクリアするか否か。今回の相場に当てはめると①92万円を上抜ければ一応の底固め②ダマしの可能性は十分にあり、底値から15%の95万円辺りを抜ければ25%から30%までの反発が見通せる③103-108万円を上抜ければ今年の最高値チャレンジ。今回の戻しは非常に有望だが、まだ判断を下すには時期尚早と考えている。
ビットコイン反発の要因探し。バランスシート拡大とは何のことか?
パウエルFRB議長のバランシート拡大表明が、今回の反発の一番大きな材料だと考える。市中銀行はNY連銀にドル口座を保有、この残高(プラス流通紙幣)がベースマネーと言われている中銀の債務だ。これを増やせば乗数効果が働き市中に出回るお金、マネーサプライが上がり、景気やインフレを刺激すると。このベースマネーを必要以上に増やすのが「いわゆる」量的緩和。今回の変更が量的緩和に該当しようが、しまいが、米国のベースマネーを増やす点では変わりはない。更に足元の経済指標の悪化を見れば、FRBがなし崩し的に量的緩和方向に舵を切っても不思議ではない。まさに、BitMEXのアーサー・ヘイズCEOがQE4の到来でBTCは2万ドルに到達するとしたシナリオが現実味を帯びてきた。
リスクアセットか逃避資産か、ビットコインとS&P500との関係
BTCは、デジタルゴールドとしての認知度が上がった結果、一部の投資家の分散投資として採用され始めている。分散投資する場合、例えば株価が下落するとBTCの割合が増えるのでリバランスで売却する。そういう意味ではリスクアセット化が進みつつある。BTCとS&P500の相関性は、逆相関になったり順相関になったり。今年5月半ばから9月後半まで逆相関が強かったがそれ以降、順相関に転じている。この時期は、バランスシート縮小ペースを停止、利下げも2回行った時期だ。こうした金融緩和、ドルの価値に疑問符が付くような局面ではBTCは逃避資産として株価と逆相関になる。そして、2回の利下げで一服感が出ると順相関に戻ったと見る。ただ、両者の関係は複雑なものだ。
ビットコイン急騰後の傾向と対策(その2)
「ビットコイン相場が底値を付ける3つの条件」として「①売り材料の一服②アルトコインが先導③強気派が日和る事」を挙げたが、①リブラ実質延期、量子コンピューター脅威論後退で売り材料が一服②XRPやETHが先に回復③は一貫して上目線だった弊社も「短期的には警戒が必要」に日和り始めた事などから、3つの条件が出揃った。2015年以降で前々日終値から2日間で高値が20%以上上昇した12回のうち高値を再び更新するのに半年近く要した2回を除くといずれも2週間以内に高値を更新している。短期間でこれだけの急騰を見せた場合、その勢いはしばらく続く傾向があるようだ。
中国のデジタル通貨(DCEP)は脅威、軽視すべきでないと考える理由
中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事が中国人民銀行が最初の中銀コインDCEP(Digital Currency Electronical Payment)を発行するとしたが、このシンクタンクの顧問には周小川や唐家センがおり、この黄氏も前重慶市長で軽視すべきでない。その影響に関しても、黄氏は「まず銀行への発行、そして一般国民へ流通が想定」され「人民元の流通と国際化が促進」することを意図しており、途上国の通貨主権どころかドル基軸性まで揺るがしかねない。中国は人民元の国際化だけでなく国民生活の監視も意図している。更に、ウォレット保有者の情報やどこまで規制するかなども中国政府の思いのままで、リブラと異なり、相手が中国政府となると文句が言い難い。日本でもこれを脅威として真面目に議論するべきだ。


Altcoin


上記は主要5通貨の8月1日を1とした増減率の平均から、各通貨の増減率がどの程度乖離したかを示したもの。これを見ると相対的にどの通貨のパフォーマンスが良く、相場を牽引いたかが分かる。8月は閑散相場の中でBTCのドミナンツが上昇していたが9月に入りETHやXRPが牽引役を取って代わっている。10月に入ると再びXRPが牽引、更にBCHが続いている。BTCも直近の急騰時に好パフォーマンスを見せたが再びBCHが牽引している状態。この様に9月以降の相場はBTCというよりアルトコインが主導している。これは弊社が指摘している大底を付ける3つの条件のひとつ「アルトコインが先導」というに当てはまる。また先導役も交代しながら循環しており、アルトターンの到来を予感させる。

ETH:10月のETHは上値の重い展開。2万円台で跳ね返され17千円台まで値を下げていたが、BTCの急騰で値を戻すも、2万円台では上値を重くした。実質的に日本でのSTO団体設立や10月8から11日にかけて大阪で開催されたDevconに対する期待感から堅調に始まったETH相場だが、ヒース新CFTC新議長がETHを証券ではないとした事もあり2万円台に乗せたが、好材料が出尽くしたこともありその後は上値を重くしていった。量子コンピューターの発表などのイベントをきっかけにBTCのロングの投げに連れられる形で17000円付近まで下落したが、習発言により仮想通貨が全面高となる中、ETHも2万円台を回復したが、その水準では上値を重くしている。


XRP:10月のXRP相場は好材料に支えられ底堅い値動き。リップル社による分散金融システムLogos買収に続き、アイスランドのトレーディング会社Algrimを買収というニュースに加え、xCurrentとxRapidとが統合、ODLという形でxRapidの潜在的導入先が数十社から200社以上に急増したことを好感した。また、ウォレットを提供するBRD社やXRPを用いた送金が増えていると伝わるメキシコのビットソーという交換所に出資、米国の首都ワシントンDCに新たなオフィスを設立し、仮想通貨・ブロックチェーン分野で政策決定者に教育を行い、政府との関係構築を強化するなどポジティブな材料あり、32円台まで上昇した。その後、量子コンピューターの発表のイベントによって下落したBTCに連れ、一時は28円台まで下落したが、バリデータが合意するコンセンサスアルゴであるXRPへの影響は限定的という見方もあってか30円台まで値を戻し、最終的には習近平のブロックチェーン関連の発言受け、32円台まで回復している。


BCH:10月のBCH相場は目立った材料が少ない中、動意の少ない展開が続いたが、月後半にかけては相場全体の牽引役として浮上した。BSVの20%の暴騰で連れ高となり25000円台まで値を戻すとその後はBTCの下落につれ一時22500円を割り込んだが、中国絡みのBTC上昇で一時28000円を付け、その後も27000円前後の高値圏で推移している。中国発の相場上昇にBCHも中国銘柄の一部として意識された部分もあったか。またBitmain社でのウー・ジハン氏の代表返り咲きで、カナーンに続き同社がIPOを目指すのではとの思惑もある模様。


LTC:10月のLTC相場は底堅い値動き。LTC財団が株主のWEG銀行、リテール向け仮想通貨決済を計画、また仮想通貨が証券に該当するか独自に格付けしたCrypto Rating CouncilがLTCをBTCと同じ最低ランクに位置付けた事も好感され、堅調に推移。その後、LTC Summitを前にLTC財団が破産寸前との報にチャーリーが反論するも急落したが、イベントへの期待感からかすぐに切り返した。月の後半は他通貨同様に、BTCのロング投げと習近平のブロックチェーン発言に振らされ、最終的には上昇し、6000円台後半まで値を伸ばしている。



FXcoin Monthly Report 2019.11.1.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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