入門アルトコイン(その3)リップル(XRP)

2018-09-26 17:56[ 松田康生

入門アルトコイン トピック 仮想通貨 XRP


入門アルトコイン第3弾はXRPにすることにしました。他の紹介予定のアルトコイン〈ビットコインキャッシュ(BCH済)、ライトコイン(LTC)、イーサリアム(ETH)〉と比べて大分性質が異なるので最後にしようと思っていたのですが、最近の乱高下で注目度の高いXRPを先にご紹介したいと思います。

XRPとリップル社

まずリップルとXRPですが、両者とも“リップル”と呼ばれていますが、前者は会社の名前、後者は仮想通貨の名前として分けて使われています。その性質は、リップル社という管理者*が存在する中央集権型の仮想通貨で、発行元**である同社が約6割保有しています。またBTCのProof of Workという難解な暗号計算が存在せず、Proof of Consensusと言うリップル社が選んだ信頼できるバリデーターの8割が承認すれば記帳が完了する形を採っています。それ故、プライベート型ブロックチェーンと呼ばれたりもします。果たしてブロックチェーンなのかどうかも議論があり、BTCやBCHのような代表的な非中央集権的な仮想通貨とは随分、異なります。なぜ、そのような性質を採用しているのかと言えば、一言いえば処理速度を上げるためです。1ブロック(XRPではレッジャーと呼ぶ)の形成時間はBTCの10分に対しXRPは3-5秒で、BTCが1秒間に7-15取引を処理するのに対しXRPは1500取引とも言われています。議論はあるにせよ管理者がいて、ネットワーク参加者が信頼できる故、為せる業です。では、なぜそのような異なる性質となったのか、その歴史を紐解いてみましょう。

Ripplepay時代

リップル社の起源は2004年に創始者ライアン・ファガー氏が分散型支払プロトコルを発表した事に始まり、翌年Ripplepay.comが始動します。すなわちBTCが始まるずっと前の話でそもそもブロックチェーンではなく、決済システムの会社だった訳です。一方でジェド・マケレーブ氏が2011年コンセンサス・アルゴリズムを考案、2012年に同氏とBTCの開発者だったクリス・ラーセン氏がプロジェクトに参画、ライアン氏はクリスに指揮権を譲渡します。ここから支払システムから仮想通貨にぐっと舵が切られていきます。

クリス・ラーセンCEO時代

クリス氏はRipple Labs Inc***(リップル社)を設立、2012年9月にXRPを発行**します。この時に6割をリップル社とその関係者が保有し、最近ではジェド氏がXRPが上がってきたところで大量に売却したとWSJに報じられ話題となりました。また発行元が6割も保有して換金するならば、それは株式に類似した証券なのではないかという議論も尽きません。ただ、非中央集権で国を超えた世界通貨の誕生だと言って当局を含む既得権益層に警戒感を持たせた他の仮想通貨と一線を画し、海外送金に狙いを定め既存の金融機関と提携を進めたことクリスCEO時代がXRPを一躍仮想通貨界の中心に押し上げました。2014年に南米の送金業者と米Cross River bankが、2015年には豪州大手Westpacがリップル社のシステムを採用、2016年には日本のSBIグループとアジア法人を立ち上げ、同年には日本のメガバンクを含む多くの大手金融機関と提携を始めます。日本の内外為替一体化コンソーシアムが立ち上がったのもこの年で、各金融機関はリップル社と共にSWIFTに替わる次世代の送金システムの研究を始めた訳です。

ブラッド・ガーリングハウスCEO時代

2017年からCEOを引き継いだブラッド・ガーリングハウス氏は5月、同社が保有する550億XRPを売却しないと宣言しました。通常、XRPの時価総額はこのXRP社保有分を除いて計算するのですが、同社が保有する3兆円を超すXRPを市場で処分したら、おそらくXRPは暴落するでしょう。それ以上に、上記の証券問題で疑義を持たれない様にすることが理由とも言われています。同年、同社は主力商品である、xCurrent、xRapid、xViaの3種類を発表、RippleNetへの参加機関数も100を超え、2018年には本邦の三菱商事がタイ子会社とシンガポール子会社との間で、MUFG傘下のアユタヤ銀行とスタンダードチャータード銀行を経由してXRPを利用した海外送金を成功させて話題となりました。ブラッドCEOは8月に今後今まで見なかった規模での投資家の参入があると予言し、実際にXRPは30円割れから80円近くまで急上昇しました。しかし、前述のジェド氏の売りが水を差した形となっています。

xRapidリリース間近

では今回の上昇の背景に何があったのでしょうか?同社の今までベータ版だったxRapidの商用利用開始が来月に迫っていると同社の関係者がCNBCのインタビューで答えたことが大きいと指摘されています。また、同社のスマホでの送金アプリMoneyTapのリリースも今秋にリリースされる予定となっていることも影響していると思います。ただ、様々なアプリの名前が先行して、何が重要で、何が重要でないか分かり難さが仮想通貨業界にあります。xRapidリリースで何が変わるのでしょうか。

SWIFT 

まず理解すべきは、現在のSWIFTを利用した送金システムです。各銀行は取扱通貨の口座(預け口座・ノストロ口座)を海外の銀行に保有し、SWIFTで送金人や受取人、送金目的などのデータを送ると同時に、送金銀行の口座から受取銀行の口座にいくら資金自動するか、送金銀行の口座がある銀行に支払い指図を行います。この暗号化された支払指図を世界中の銀行が受け入れていれることで海外送金は成り立っています。因みにSWIFTを用いた送金は数日かかると言われますが、それは直接コルレス契約が無い銀行相手ですとか、現地拠点も無いような国に送る場合の話で、現在のRippleNetに参加しているような大手100行程度なら大して時間はかからないと思います。銀行の営業時間によるカットオフタイムや入金方法の確認、国によっては実需確認資料の提出など海外送金に要する時間の多くはSWIFTというより銀行側に原因があり、その点はSWIFTやノストロ決済を使おうがXRP決済だろうが同じです。よく聞かれる、SWIFTなら数日かかるのにXRPなら数秒だというのは、あまりに誇張された宣伝文句でだと思います。

xCurrentとxRapid

次に現在のリップル社の主流商品であるxCurrentは言ってしまえば、SWIFTに替わるデータの送信手段、言ってしまえばメールないしチャットです。すなわち、SWIFTが行っているのは送金通知と支払い指図で、今ならメールで事足りるのですが、世界の見ず知らずの何万行もの銀行と取引を行うためには信頼性が必要で、参加行が真正と信じる仕組みが必要で、その機能をSWIFTからXRPが奪おうとしている訳です。実際の銀行間の資金移動は従来の銀行のノストロ口座間で行われていると思われます。xRapidになるとこの資金移動をXRPを用いて行う訳です。送金銀行は顧客から預かった法定通貨をXRPに交換して受取銀行に送金、XRPを受け取った受取銀行は法定通貨に交換して受取人口座に入金します。まさにXRPが送金を媒介する世界が到来する訳です。当初はどの程度の規模で始まるか不明ですが、XRPにはリップラーと呼ばれる、将来性に期待したファンが多く、大きな一歩だとして盛り上がっている様です。

XRPニーズは高まるのか

ただ、XRP相場としてみた場合、少し冷静になる必要があります。上記の送金銀行と受取銀行はそれぞれ法定通貨とXRPを交換するのですが、これを行うのはリクイディティー・プロバイダーと呼ばれる銀行または交換所とされています。外国為替をやっていらっしゃる方ならお気づきの様に、いくら送金時間が早く手数料が安いと言っても、このプライスが不透明ならばあまり意味がありません。例えば百万ドル送金する場合に、5000円の手数料が仮にタダになっても、為替レートがたった1銭悪くなれば1万円の損失です。XRPの売買コストの問題もあるでしょう。更に、よく考えると、この仕組みでは送金銀行も受取銀行その先の顧客もXRPを保有する必要は生じません。それに買いと売りとが同時に発生するので需給に対するインパクトはニュートラルです。あえて言えばリクイディティー・プロバイダーとなる銀行ないし交換所が多少持つ可能性がある程度でしょう。

市場は織り込んでいる?

もっと言えば、送金ないし受取人が日本国内にいる場合、このリクイディティー・プロバイダーを誰がやるのかという問題もあります。日本では仮想通貨交換業には登録が必要で今すぐ銀行が行うことは不可能ですし、そもそも銀行が何かを始める場合はそれが銀行法で認められた業務か整理する必要があります。では現在の交換業者が担えるのかと言えば、決済をスムースに行うためには法定通貨を予め交換所に預けておく必要がありますが、金額の問題もありますが銀行が現在の交換業者に無担保で法定通貨を預けることが出来るとは到底思えません。すなわちxRapidは大きな一歩ですが、まだ道のりは長い訳です。そもそも、その程度の決済ニーズが発生することを期待して、先回りしてリップラー達はXRPを購入している筈です。すなわち市場はある程度織り込んでいると考えています。

企業間直接決済に期待

では、今回のXRPの上昇は一時的なもので、XRPのポテンシャルは限定的なものなのでしょうか。個人的にはそうは思いません。このxRapidによる海外送金の開始はコロンブスの卵だと考えています。本質的にはXRPを媒介した海外送金は何も銀行を経由する必要はないと考えます。例えば、貿易決済の多くを占める大企業の親会社・子会社間決済であれば、何も銀行を経由しなくても直接XRPをやり取りする時代が来るかもしれません。親子間であれば多少の為替レートの違いも容認できますし、場合によっては決済用にある程度XRPを手元に置こうとする動きも出るかもしれません。そういうニーズが出れば、xRapidないしはそれに代わるシステムをリップル社が提供を始めるかもしれません。それではリップル社の主要顧客である銀行に不利だと考えても、例えばIBMが仮想通貨ステラを利用してローンチしたシステムで取って代わろうとするかもしれず、そうなれば対抗するリップル社も黙ってはいられないでしょう。MoneyTapも国内送金の姿をすっかりと変えてしまう可能性も持っています。要は実際にXRPを用いた送金が始まれば色々と応用範囲が広がるのではないかと予想しています。それはXRPなのか、ステラなのか、BTCなのか、LTCなのか、インターネットの黎明期のようにどの通貨のどのサービスが一般的になるかは不明ですが、その大きな一歩になるのではないかと期待しています。そのうちXRP建てのインボイスの可否が議論になったりするかもしれません。そうした未来の決済の姿を想像すると少し楽しみになってきます。

10月1-2日にSwellというXRPの大きなカンファレンスが開催され、クリントン元大統領が登壇することで話題を集めています。昨年はイベントに向けてXRPが買われ、その後、売り戻された様ですが、個人的には銀行による利用形態もさることながら一般企業への利用拡大に注目したいと考えています。

*リップル社は発行時には関与したが、リップル社以外のバリデーターも増え、今やリップル社がいなくてもXRPは存続するので、非中央集権的性質を持つと同社は主張している。
**XRPの発行はプログラムによりなされているのでリップル社は発行者ではないという見方もある。
***設立当初はOpenCoin, Inc.

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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