2019年仮想通貨10大ニュース

2019-11-27 20:02[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

2019年残すところあと1か月となった。弊社では昨年末に今年の仮想通貨市場は「ルール整備の1年」で「ETF承認や機関投資家の本格参入による上昇は2020年」とし、過去のパターンから「底入れ1年、反転2年」と相場の底入れを予想しつつ2017年12月につけた過去最高値トライは2020年12月と予測していた。

半年後の7月には「貿易戦争の一時停戦で中国からのフローは細るが金融緩和が本格化することが追い風」になるが、「この4-6月ほどのスピードは見られない」とし「BTCが7か月連続で上昇した事はなく」7月か8月に「調整が入る」と予想、「あの150万円を見てすぐにでも200万円に到達すると見るのは危険」で6月末のピークを抜けるには半年を要するのがBTC相場のクセとして年末にピークを抜けるとして、最高値トライを1年前倒しとした。足元では、7月8月に到来すると予測した調整局面が思ったより長引いているという認識で、従って最高値トライも少し後倒しとなると考えているが、詳細の見通しは来月発行予定のYearly Reportにてご報告したい。

ただ、今年も当初念頭に置いていたこと以外に様々な出来事があった。そこで本稿では少し早いが2019年の10大ニュース(および次点)を選び、その市場への影響を振り返ってみた。年末が近いということもあるが、為替や株のように教科書的な相場に影響を与える材料という定義がなく、またその材料も時間の経過によって変化していく発展途上の仮想通貨市場では、過去の相場を動かした材料を振り返ることが今後を予想するうえで重要だと考えるからだ。この市場でよくテクニカル分析は現在の立ち位置やトレンドを客観的に認識することは得意とするが、将来の予想は苦手だ。

 

(10大ニュース)
1)半年後に半減期を控えたLTCが急上昇
2)暗号資産関連法案可決、日本の仮想通貨業界の春到来か
3)国内の証拠金取引のレバレッジ倍率が25倍から4倍へ(最終的に2倍)
4)テザー、裏付け資産の不足が判明。IEOにより埋め合わせ
5)米中貿易摩擦激化、人民元安でBTCに逃避フロー
6)FRB、3回会合連続の予防的利下げ、ECBも量的緩和再開
7)リブラ登場も四面楚歌で実質延期へ
8)Bakkt開始も出来高は冴えず
9)量子コンピューター登場で市場に激震
10)習主席、ブロックチェーンを中核技術と言及。人民元CBDCも近く発行か
(次点6件)
・Binance中心にIEOブーム
・BTC ETF、VanEckは取下げ、Bitwiseは否認されるも再検討始まる
・G20、FSBにグローバルな共通規制の検討開始命じる
・英BREXIT、合意なき離脱回避される方向
・香港デモ拡大
・国内でまたハッキング被害、Binanceでも

 

(10大ニュース)

1)半年後に半減期を控えたLTCが急上昇

8月に半減期を迎えたLTCだが、その半年前となる2月に急騰を始め、6月のピーク時には4倍以上に上昇、その後、8月の半減期に向け反落を見せた。半減期はマイナーによる売り圧力が半減するので価格の上昇要因だが、当初からプログラムされている材料ゆえに、どのタイミングで市場が織り込みに行くかがポイントとなる。従来は半減期の1か月前頃だったが、今年のLTCの場合、半年前から相場が動き出した点が注目される。

 

2)暗号資産関連法案可決、日本の仮想通貨業界の春到来か

3月15日資金決済法と金融商品取引法の改正案が可決・成立した。これは昨年の仮想通貨交換業等に関する研究会報告を受けたもので、仮想通貨取引における禁止行為を法律で定めた画期的なもの。更に25日にはコインチェック事件以来停止していた新規登録の再開など交換所を巡るいくつかの動きが同時に発表され、国内仮想通貨業界の喪明けを予感させる動きだった。実際、若干のタイムラグを経て新規口座の拡大が相場の上昇につながったが、7月の流出事件再発で、国内の投資家心理は冷え込んでしまった。

 

3)国内の証拠金取引のレバレッジ倍率が25倍から4倍へ

昨年10月の自主規制(日本仮想通貨交換業協会)によりレバレッジ比率が最大25倍から4倍に引き下げられた。特に国内最大手bitFlyerが15倍から4倍に引き下げたことにより国内の証拠金取引の出来高は減少した。ただ移行に関し混乱はなく、各業者が粛々と切り上げを実行。レバレッジは信用創造であり、その倍率低下は流通量の低下を意味し、希少化から価格の上昇要因か。わかりやすく言えば、ショートから入りにくくなる訳だ。

 

4)テザー、裏付け資産の不足が判明。IEOにより埋め合わせ

以前から何度か疑惑を持たれていたが、遂にテザー社が裏付けとなる米ドルを十分に保有していなかったことを同社が認めた。Bitfinexに対し債権を対価にテザーを発行していたが、同社はIEOで資金を調達し、随時テザー社への返済を始めている。この間テザーの価格は1ドル付近を維持されていた。すなわち、テザーが1ドルで取引される根拠は、裏付け資産ではなく、市場で1ドルで取引されるという信用であったことが判明した。

 

5)米中貿易摩擦激化、人民元安でBTCに逃避フロー

5月、中国が9割完成していた合意文書案を大幅に修正して一方的に送付したことに反発していたアメリカは2,000億ドル規模の追加関税を10%から25%に引き上げた。これに対し中国も対抗措置を発動し、報復合戦が始まった。6.7近辺だった人民元も6.9近辺まで下落、これを嫌気した本土からフローが噂された。また、貿易交渉において政権が弱気だという批判が政権内部で出ているという観測が体制派の逃避需要を掻き立てているという見方もあった。しかし北戴河会議を乗り切った習政権と大統領選挙に向け成果が欲しい米国の思惑が一致したせいか、「第一段階合意」に向け協議が進んでいる。習体制が盤石になるにつれ仮想通貨市場に対する影響も変化、当初は摩擦激化が買いだったものが、足元ではむしろ合意はリスクオンで買い方向に変わりつつある。

 

6)FRB、3回会合連続の予防的利下げ、ECBも量的緩和再開

トランプ大統領の再三の利下げ要求か経済指標の悪化か、6月パウエル議長は利下げを示唆、7月のFOMCから3回号連続で計75bpの利下げを行った。9月にはECBも量的緩和を再開、中国も利下げを開始、世界は金融緩和による通貨安競争の様相を見せ始めた。この動きは仮想通貨にプラスだったが、足元ではFRBが3回の予防的利下げで打ち止め感を出してきたこと、利下げの理由の一つである米中対立に緩和の兆しが見えることから、相場の重しとなっている。

 

7)リブラ登場も四面楚歌で実質延期へ

6月FBが独自の仮想通貨リブラのホワイトペーパーを発表した。内容は複数の法定通貨のバスケットを裏付けにしたステーブルコインで、スマートコントラクトが実装され、リブラ協会が運営するコンセンサスアルゴリズムだった。しかし、運営元であるFB社のコンプライアンス意識の欠如が各国当局の集中砲火を浴び、米議会公聴会でFB社のザッカーバーグ氏が米国内の規制に適合しない限り世界中どこでも発行しないと実質延期を表明した。成否はともかくリブラの登場は、トークン経済への移行を予感させるもので、そのオリジナルであるBTCが買われる(逆に延期で売られる)展開となった。

 

8)Bakkt開始も出来高は冴えず

注目のNY証券取引所を運営するICEによる翌日現物渡しBTC先物Bakktが7月UAT開始、9月取引を開始した。しかし、初日の出来高は71BTCに過ぎず、スロースタートで、足元では2000BTCを超える日も出た様だが、機関投資家参入の呼び水になるといった当初の期待には程遠い状況。但し、この価格はCFTCにより監視されており、この市場の規模が大きくなり現物市場の価格をリードするようになれば、現物価格の適正化に資するもので、今後が期待される。機関投資家の参入はそうした適正化の後になるだろう。

 

9)量子コンピューター登場で市場に激震

10月グーグルが開発した量子コンピューターが一般のコンピューターより優れているとする量子優越の実証に成功したとNatureに掲載され、暗号技術が解読されるのではとBTCが急落した。しかし、その後のライバルIBMの反論などから、同社の発表はやや誇張があり、量子コンピューター自体、実用には程遠いもので、暗号技術の脅威とまでは言えず、また実現しても対策はあることから安心感が広がっている。

 

10)習主席、ブロックチェーンを中核技術と言及。人民元CBDCも近く発行か

中国の習近平主席がブロックチェーン技術を技術革新の核として推進していくとしたことからBTCが1日で4割近く急騰した。同時に中国初のヘッドラインが続き、中国人民銀行が近く世界初の中銀コインDECP(Digital Currency Electronical Payment)を発行するとされたことも注目を浴びた。しかし、その後、中国当局から投機的な動きをけん制する発言などが続き、仮想通貨への取締りを強化するとされたことで、今度はBTCは反落した。但し、この取締りは主に詐欺的ICOを対象にしたものと思われ、従来のOTCでのBTC取引にどの程度影響があるのかは不透明だ。

 

(次点6件)

・Binance中心にIEOブーム

プロジェクトの審査と上場を交換所が担うIEOという手法をBinanceが導入、当初爆発的人気を呼び他の交換所も追随した。IEOトークンがその後上場廃止されるなど人気は下火になりつつあるが、ICO復活に向けた動きにつながるか注目されている。

 

・BTC ETF、VanEckは取下げ、Bitwiseは否認されるも再検討始まる

最有力とみられていたVanEck社らは9月、最終期限まで1か月を残して申請を取り下げた。10月の期限まで粘ったBitwise分は否認されたが、再検討プロセスに入っている。弊社が指摘するように一番問題とされている点はBTC市場で市場操作を禁じる方策がとられていないこと。何も「クジラ」が値を吊り上げることではなく、仕手やなれ合い、見せ玉といった他市場では当然禁止されている手法だ。日本が世界に先駆けて法制化したが、これが多くの国で共有化されれば承認される可能性も出てくるし、それまではそもそも機関投資家は参入しない。

 

・G20 FSBにグローバルな共通規制の検討開始命じる

G20はFSBに各国の規制のギャップを埋めるべく「必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を」「検討することを要請する」とされた。仮想通貨市場に対する規制は各国協調しなければ意味はないが、いよいよその一歩が始まったことを意味している。この世界共通の規制で市場が適正化されない限り、本格的な機関投資家参入は難しいことは既述の通りだ。

 

・英BREXIT、合意なき離脱回避される方向

3月の離脱期限までにEUとの合意案を国内承認できなかったメイ首相は期限を10月末まで延期し、責任を取って辞任した。強硬派のジョンソン新首相は合意なき離脱を背景にした強引な交渉を行おうとしたが、議会は離脱延期をEUに求める様に立法化し首相の暴走を防ぎ、この結果、EU離脱は最長で来年1月まで延期された。英議会は12月に総選挙を実施、再び民意を問うこととなったが、合意なき離脱は2度に渡って回避された格好。ただ、欧州での仮想通貨取引が米国やアジアほど活発でないせいか、市場に与える影響は限定的だった。

 

・香港デモ拡大

犯罪者を中国本土(およびマカオ・台湾)への引渡しを可能とする条例に反対する小規模なデモだったが、6月には主催者発表で参加者が100万人を超え注目を集めた。扱いを間違えれば習体制に大きなダメージとなりかねないことからデモの拡大は逃避買いといった動きも見られた。8月ころから空港の占拠や5大要求など過激化するとともに要求も変節していったが、北戴河会議を経て習体制が盤石になるにつれ市場の関心は落ちつつある。ただ、次は香港が国際金融センターとして生き残れるかに移りつつあり、場合によっては若干のBTC買いに繋がる可能性もあるか。

 

・国内でまたハッキング被害、Binanceでも

7月、国内の交換所から30億円強の仮想通貨の不正流出事件が発生した。3月の法案成立や新規登録再開で上向いた国内の投資家心理が冷やされ、その後の国内からのフロー低迷の要因の一つとなった。しかし、5月に世界最大手の一つであるBinanceでも流出事件が発生、その素早い動きと損失補償により相場はむしろ上昇した例もあり、こうした流出事件に市場は免疫をつけたせいか、相場に与える影響は限定的にとどまった。

 

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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