2019.12.02【11月は弱かったビットコイン、12月に今年最高値トライか】

2019-12-02 13:06[ 松田康生

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Review

中国ヘッドラインで下落も地合いは回復基調か

今月のBTC相場は軟調な推移。月初は96万円台から底値を切り上げると101万円台を上抜け103万円台までのショートカバーが入り、今月に入ってからの高値を付けた。その後、再び103万円をトライしたが、CMEのBTC先物でフラッシュクラッシュが発生し、一時100万円を割り込んだ。下落基調は続き、200日移動平均線や80万円と112万円との半値押しだった96万円といった重要なサポートを割り込み、87万円台まで下落。月後半はBinance上海事務所の閉鎖との報でBTCは一時80万円台まで急落、深圳で39の交換所が違法と特定されたことや、中国人民銀行による取り締まり強化の発表を受け一時71万円台まで値を下げた。韓国の取引所が53億円相当のハッキング被害を発表後は再び下落したが、顧客資産に被害は出ないと発表したこともあり、BTCも切り返し、80万円超での推移が続いている。

Outlook

11月は予想に反し陰線

アノマリー的には年間最高のパフォーマンスを記録していた11月だったが、今年は陰線で終わった。これで陽線が3か月続いた後、1か月だけ陽線に転じ、再び陰線に転じた格好で、これまで陽線や陰線の継続や月毎のクセから翌月の相場を占ってきたが、なかなか難しい局面に入ってきた。過去、陽線から陰線に転じたケースは20回(今回で21回目)だが、陰線が1か月で終わったケースは11回とほぼ半々だ。12月も若干陽線の方が多いが、予想の根拠にするには若干弱い。一方で過去のパターンとして「ビットコインの2つのクセ」で「底値から約3倍の水準まで上昇した後、翌日にピークから25%、1週間後には40%の下落を見せている」相場は、ピークを再び抜けるのに半年前後を要する傾向があると紹介している。過去のパターンでいけば多少の後ずれはあったとしても12月中に今年6月につけたピークを再トライしていても不思議ではない。

中国からのフロー

材料面では何といっても中国本土からの買いだ。足元では当局が投機を戒め、交換所を摘発していると伝わってくるが、そもそも中国国内で仮想通貨交換所の営業は禁じられていた筈だ。人民銀行の記述を見る限り、詐欺的なICOについて取締りを強化するとしている。上はCryptoCompareのBTCの通貨別取引相手からQCの割合をを示したもの。以前にもご紹介したが、このQC(Qcash)とは人民元建てのステーブルコインで1QC=1CNYで取引され、QCを使ってテザーや他の仮想通貨を直接売買する。因みにCryptoCompareで見ると通貨別でBTC取引で過半数を占めるテザーの更に相手方の過半数がQCとなっている。そこで、BTCに対するQCの出来高を見ると、BTC相場への中国フローの全てを見ることにはならないが、逆に人民元建てのステーブルコインを保有している人の殆どは中国本土の投資家の可能性が高く、中国メインランドからの動向をある程度推察できると考える。この推移をみると米中貿易摩擦が激化した5月から6月にかけてQCの割合が増え中国発の相場上昇という見方を裏付けるものだったが、北戴河会議が行われた8月頭の少し前から大きく下がっている。興味深いのは習発言があった10月26日より前に若干増えて、その後はあまり増えていない。この発言を受けた一般の買いはまだ発生していないこと、もしかすると発言を先回りして買いが入った可能性があることを示している。あれだけの政策変更が事前に周囲に伝わらないはずがない。今後、ブロックチェーンを学習した層の一部からBTC買いが出るか注目したい。

外部環境・材料的にはポジティブ

また先日「ビットコイン相場の年内最後の材料か?急ピッチで膨張するFRBのバランスシート」で紹介したように12月末超えの資金調達に向けてFRBは更にバランスシートを拡大すると思われる。香港人権法案で米中第一段階合意にも暗雲が立ち込めてきた。12月には英総選挙も控え、BTCの半減期も刻々と近づいている。参加者のマインド自体は悲観が楽観を若干上回っているように思われるが、外部環境や材料的にはBTCは今年の最高値をトライしても不思議はない。

予想レンジ:75万円~150万円



Topic

中国DCEPが口火を切ったデジタル通貨国際競争の行き着く場所
中国はDCEPを一帯一路や影響力の強いアフリカ諸国、更にミャンマーやラオスなど東南アジアの周辺国に拡大していく可能性が高いと考える。EUのCBDCの研究は多分にリブラを念頭に置いているのだろうが、そういう事態になれば東欧やアフリカ北部を抑えるだろう。実際、北部・中央アフリカ地区ではセーファーフランと言ってユーロペッグした通貨を使用している。米ドルは勿論世界を席巻しているが、中でも中南米では既に経済がドル化している国もある。人民元やユーロで為替リスクのない経済圏が成立していくと、どうしてもそれ以外の通貨を使用している国にとって参入障壁となる、もしくはアジアでは人民元を介さないと貿易がしにくく、その結果、人民銀行や中国政府の意向を伺わなくてはならない、もしくは行動を監視される、といった事態も考えておく必要がないだろうか。これを夢物語として一笑に付すのはやや危機感が足りないのではないか。これに対し日銀はCBDC発行に消極的だ。しかし、世界は動いていて、中国に対抗してEUも動き出すなど状況は変化している。国家戦略的な視点が重要だろう。
XRP Meetup Japanに行ってきた - リテラシーの向上に有効
XRP Meetup Japan は11月10日午後に開催された。コミュニティ主導のもとSBI VC Tradeがメインスポンサーとなり、参加者の募集は9月15日から行われたが、4日後には定員数の300名をオーバーするなど、開催前から注目度が高まっていた。内容は期待に違わぬ充実したもので、メディアやネットでは得られないユニークな情報を得ることができ、XRPの利用拡大とデジタル通貨の流れなどについて話された中島教授の講演はアカデミックの観点から現在の仮想通貨を取り巻く環境を的確に説明されていた。共通の興味やテーマを持つ人たちが集まるMeetupは最新の情報を入手したり、相談相手を見つけるためには有効な手段の一つとなり、特に仮想通貨においてはネット等に流れている情報は玉石混交で取捨選択は容易ではなく、XRP Meetup JapanのようなMeetupに参加すれば、関係者と直接話をすることもできるし、大学教授からの意見を聞くこともでき、金融リテラシーの向上に大いに役立つと感じた。
ビットコイン相場の年内最後の材料か?急ピッチで膨張するFRBのバランスシート
2012年9月から始まったQE3(量的緩和第3弾)により拡張を始めたFRBのBSは2013年12月に拡張のペースを減速、2014年10月に4.5兆ドルに達し終了し、その後は保有債券の償還分のみ買い戻すオペレーションを続けていたが2017年10月からBSの縮小を開始した。しかし、その後、景気の鈍化や米中摩擦による不透明感もあり2019年8月に縮小を中止。逆に、短期金融市場におけるレポ金利の上昇を受け、10月パウエル議長は資産購入再開を表明、それから1か月強で2017年10月から2019年8月までの縮小分の約4割を復元している。このオペレーションをFRBは利付国債やモーゲージなどの長期債ではなく1年以内の短期国債を購入しているので量的緩和には当たらないとしているが、ベースマネー(≒中銀のBS)を増やし、その波及効果を狙うのが量的緩和なのであれば、このオペレーションで類似した効果が出ても不思議ではない。こうした人工的にインフレを惹き起こそうとするリフレ政策を採った場合、消費者物価というよりも資産インフレを引き起こしやすい傾向がある。法定通貨の価値毀損に対する逃避資産としての性格も持つ仮想通貨の場合、比較的堅調にその反応は観察される。今回のBS拡大がどれほどBTC相場に効いてくるかは不透明だが、12月前半はクリスマス休暇前に年末越えの短期金利が上昇しやすい季節でもあり、FRBの更なる資金供給とそれを嫌気した米ドル投資家からの逃避フローが期待される。
2019年仮想通貨10大ニュース
今年も当初念頭に置いていたこと以外に様々な出来事があった。そこで本稿では少し早いが2019年の10大ニュース(および次点)を選び、その市場への影響を振り返ってみた。
1)半年後に半減期を控えたLTCが急上昇
2)暗号資産関連法案可決、日本の仮想通貨業界の春到来か
3)国内の証拠金取引のレバレッジ倍率が25倍から4倍へ
4)テザー、裏付け資産の不足が判明。IEOにより埋め合わせ
5)米中貿易摩擦激化、人民元安でBTCに逃避フロー
6)FRB、3回会合連続の予防的利下げ、ECBも量的緩和再開
7)リブラ登場も四面楚歌で実質延期へ
8)Bakkt開始も出来高は冴えず
9)量子コンピューター登場で市場に激震
10)習主席、ブロックチェーンを中核技術と言及。人民元CBDCも近く発行か


Altcoin

上記は主要5通貨の年初来のパフォーマンスだ。まず目につくのは年前半のLTCの上昇と、その後、BTCが追い抜いたことだ。また年初来のXRPのパフォーマンスの悪さも目に付く。夏ごろには運営側の売りに反対する動きもあり、そうした売りが減少した結果、足元では比較的落ち着いてきている。もう一つは足元、特に11月に入り各通貨が平行、すなわち同調して動いている。これは各通貨がタイミングをずらして相場をけん引してきた春から夏にかけての相場と異なっている。これは秋口からBCHやXRPが値を上げ始め、アルト主導で循環物色的な上昇が期待されたが、そうした動きは続かず、BTC中心の相場に戻りつつあることを示しているのかもしれない。

ETH:今月のETHは軟調な推移。月初はイスタンブールの日程が固まったことやETH2.0への期待感、またジョゼフ・ルービン氏が中国政府との協力関係を望むコメントを出したこともあってETHは上昇し、20000円超えの水準で推移した。その後、ドイツの航空会社がブロックチェーン基盤で航空チケットを発行し、決済をETHで行うというポジティブ材料はあったが、BTCの弱さに巻き込まれ20000円割れ、更にはBinanceの報によって一時14000円台まで下落した。その後は韓国取引所でのETH流出の報もあったが、BTCへついていく形で値を戻し、17000円付近まで上昇している。


XRP:今月のXRPは軟調な推移。月初はリップル社の一大イベントであるSWELL開始前にイベントへの期待感が高まり、一時34円付近まで上昇。SWELLはリップルCEOガーリングハウスの講演から始まったが、講演では目立った材料が出ず、XRPは売られ32円台まで下落、イベント内でも市場が期待しているほどのインパクトはなく、イベント後は30円割れまで下落した。日本ではXRP Meetup Japanが開催され、SBIグループXRPの活用に関する発表や、麗沢大学の中島教授による銀行が共同で仮想通貨取引所設立の提案といったこともあり、30円台へ回復が、地合いは続かず、BTCに連れ安の展開となった。リップル関連のイベント終了後は材料なく、一時22円台まで下落し、軟調な推移が続いた。


BCH:今月のBCHは軟調な推移。月初にロジャーバーがFacebookの友達にBCHをエアドロップするとし、受け取ったBCHの価値はいずれ5,000ドル相当になるとの発言では1%程度の上昇にとどまったが、マイニング機器のカナーン社が米上場予定が決まったこともBitmain社の上場期待としてBCHをサポートし、32000円台まで上昇。しかし、11/15の21時頃に予定されているハードフォークを前にポジション調整が出たせいか一時4%安となる場面もあり、軟調な推移となった。その後は中国系ヘッドラインで24000円割れとなったが、Bitcoin.comのロジャー・バー氏が「BCHは今から1000倍になる」との発言を受け再度24000円台まで戻し、その後も底堅い推移が続いている。


LTC:今月のLTCは軟調な推移。月初は堅調に推移し、7000円台で推移していたが、目立った材料の無い中、再び7000円割れ。チャーリー・リー氏がXLM(ステラの)のバーンに疑問を呈したことや、同氏の弟であるボビー・リー氏がBTCは10倍から20倍までの高値更新はできると強気の発言があったが、市場の反応は限定的であった。その後もLTC固有の材料は特段なく、BTCに連れ安となり、BTCが71万円まで値を下げた際にLTCは4500円台まで下げたが、最終的には5000円台まで回復している。



FXcoin Monthly Report 2019.12.2.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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