ビットコインとブロックチェーンは別物なのか?

2019-12-24 15:05[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

JPモルガンのダイモンCEOは2017年9月「ビットコインは詐欺だ」としつつ「ブロックチェーンは本物だ」としている。この発言を引用せずとも、ビットコインなどの仮想通貨の将来性は認めないが、ブロックチェーン技術は別物だとする、いうなればブロックチェーン至上主義といった考え方が多く見られる。アフタービットコインで有名な中島麗沢大教授も仮想通貨は「過大に評価」されているとするのに対し、ブロックチェーンは「インターネット以来の発明」で「この技術は本物だ」という声を同著で紹介している。同教授も指摘する様にこうした声は金融界から多い気がする。一方で仮想通貨業界では、ブロックチェーンとそのオリジナルであるビットコインとは不可分だという考えが多く、人によってはPoWなど非中央集権的でなければブロックチェーンでないという見方もある様だ。

上記、ブロックチェーン至上主義の考え方は、ブロックチェーンの登場によって書き換えられないデジタルデータというものが登場した。この結果、コピーされたり改ざんされたりするとまずいために紙とハンコに頼っていた多くの書類を電子化することが可能となりました。貿易金融やシンジケートローン、債券発行や債権譲渡、更に土地の登記や医療システム、電子投票やダイヤモンドなどの鑑定書、食品のトレーサビリティーなどにも応用が進んでいる。またゲーム内のアイテムやゴールドなどとも親和性が高い。これはこれで革命的な動きなのかもしれない。しかし、この考え方はブロックチェーン技術の一側面しか見ていない気がする。それを読み解くにはブロックチェーンのオリジナルであるBTCのホワイトペーパーにまで遡りたい。

ブロックチェーンはBTCの根幹技術として生まれたものだが、では何のために生まれてきたのだろうか。先日の日銀主催のシンポジウムでジョージタウン大の松尾教授はホワイトペーパーから “An electronic payment system based on cryptographic proof instead of trust, allowing any two willing parties to transact with each other without the need for trusted third party”と引用した。ブロックチェーン技術が達成した2重払いの防止は何のためかというと”Payment”すなわち信用できない2人が第3者の仲介なしにお金を支払うことを可能にするためだ。これは、お金の支払いにおける空間的制約を突破したことだと考えている。すなわち今まで離れた人に直接お金の支払うことは出来ず、手形だとか振込だとか、何らかの仲介者を必要とした。原理は、離れた人同士が同じ銀行に口座を保有し、もしバラバラならコルレス口座や中銀口座まで遡っていき、その同じ銀行内で振替処理を行ってきた。手形の決済でも仲介者を通じて遡っていき、どこかで相殺か振替を行って決済する。スイカやPaypayなどの(前払い式支払い手段の)電子マネーも要は運営元にお互い口座を開いて、その間で決済をしている。しかしBTCの登場によって離れた人同士で直接支払いを行うことが出来るようになった訳だ。

この帰結として、送金における仲介者が不要になった訳だ。とは言いながら、現時点ではBTCといえども最終的に法定通貨に交換するケースが多いので、通貨の両替が発生しない国内送金の場合はわざわざ円を一度BTCに替えて送金して受取人がBTCに戻すといった処理はあまりしないだろうが、通貨の両替を伴う海外送金の場合の優位性は明らかだ。また仲介者が不要になったということは仲介手数料がなくなった(仮想通貨毎のマイナーへの手数料支払いは存在する)訳で、今まで手数料対比で難しかった少額送金が可能となる。海外の友人に借りた1ドルを踏み倒さなくてもよくなる訳だ。

こう考えると、金融関係者にブロックチェーン至上主義が多いことも腹落ちする。おそらく、仮想通貨による仲介者の排除、すなわち銀行が不要となる世界を発想すること自体が難しいのだろう。世界中の当局からリブラが猛反発を受けたのも、米国当局にさえ根回ししなかったリブラ関係者のコンプラ意識の問題もあるが、それ以上に放っておけば世界中に普及してしまうという恐怖感もあったのだろうし、デジタル人民元の登場によって送金のトークン化は待ったなしとなっている。こう考えるとブロックチェーンの応用範囲は広いが、その根本には遠隔地間の(まだそう呼べるか微妙だが)資金決済を可能とした送金のトークン化も避けられず、このことから派生する可能性も高いことがわかるだろう。食品のトレーサビリティーで電子データを証明書代わりに使用するのも結構だが、それならその商品自体をトークン化した方がよりいいのではないか?そういうことだろう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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