何故、年末XRP80円と予想するのか

2020-01-10 15:48[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン リップル

2019年のXRPは燦燦たるパフォーマンスだった。主要5通貨で見ると、1年間でBTCが約9割上昇、BCHやLTCは約3割上昇、ETHもほぼ横ばいだったのに対し、XRPはほぼ半分となっている。一昨年の10月のxRapid(現ODL)商用化でこれからという1年間の低パフォーマンスの原因をリップル社からの売り圧力に求める声も聞かれる。しかし、同社がロックアップしたXRPを売り続けていることは昨年に限った話ではなく、そのインパクトもPoWにおけるマイナーの売り圧力と大差は無いと以前ご紹介した。更に一部で売却を非難する声が上がったせいか市場での売却を控えていた第3四半期に約4割下落、年間の下落幅が47%だから、このリップル社による売却後殆どなかったこの時期に年間の下落幅に相当する下落を見せていたこととなる。即ち、低パフォーマンスの原因は供給側というより需要側、日本を含めた投資家サイドの買い意欲が盛り上がらなかったからだと考えている。


では、何故、投資家は盛り上がらなかったのだろうか。一つには市場参加者が期待したほどODLによるXRPの送金への利用が普及しなかったのかもしれない。これはXRP送金とバッティングする銀行にはxCurrentによるリップルネットへの加盟を進め、送金業者を中心にODL導入を進めるという同社の戦略によるものかもしれないし、主にXRP売却益によりXRPの有用性と価値向上に寄与するという同社のビジネスモデルからして投資家の期待に応えきれていないと言えるのかもしれない。ただ、もう一つの要因として昨年はライバルが多く登場したという側面もあるのではないかと考えている。弊社サイトのトピックで振り返ってみても、2月にJPMコイン、3月にWorld Wire(ステラ)、4月に(MUFG)コイン、6月にはエフナリティー(USC)リブラ、そして10月のデジタル人民元(DCEP)とレポートで採り上げただけでも6種類登場している。特にリブラやDCEPはなかなかの強敵と映るかもしれない。

それぞれに関するコメントは各レポートをご参照いただきたいが、これだけ出てきたことによって国際送金はデジタルトークンが媒介していくという方向性が明らかになった、特にリブラとDCEPによって一般に認知されるようになったと言えると考えている。即ち、2018年中はXRPか、SWIFT(コルレス決済)かだったのが、2019年にはXRPか、リブラか、DCEPかに変わってきているのではないか。詳しくはトピック:ビットコインとブロックチェーンは別物なのか?をご参照いただきたいがブロックチェーンのブレークスルーは改ざんできないデジタルデータを産み出した側面とそれ故、空間を超えて「お金」の受け渡しを可能にしたという側面があり、この帰結として、送金における仲介者が不要になり、今まで手数料対比で難しかった少額送金が可能となる訳で、銀行経由の大口送金は残るかもしれないが、この方向性が止まることはないだろう。

ただ、そうした方向性が明確になるにつけ、後発者が後を絶たなくなった訳だが、それでも当社はXRPが一歩抜き出ていると考えている。1つ目の理由は、上記いずれのプロジェクトも良くてテスト段階、リブラなどまだ構想段階に過ぎない。今年早々にテストに入るとされるDCEPに関しても、まず局地的に、銀行間で使用して、民間が使用するようになるまではあと数年は要すだろう。一方でXRPは既に商用利用が始まっており普及の段階だ。今後、様々な便利な使い方やシステムが出てくるであろう。従って、少なくともあと数年はXRPを中心に送金のトークン化は進んでいくことが予想される。

もう一つ弊社がXRPに優位性があると考える理由は比較的、ホワイトハウスの後押しを得られる可能性があることだ。昨年12月にアメリカの消費者金融保護局(CFPB)が公式文書でXRPに言及したことで話題になった。実はそれ以前にも世銀などがXRPなど仮想通貨による送金コストの低減が金融包摂や本国送金における搾取防止に資するとしていたがXRPの名指しは避けていた。今回の名指しは偶然かもしれないが、リップル社が行ってきたロビー活動の賜物だったのかもしれない。根回しなく突然、金融包摂を持ち出し、四面楚歌にあったリブラとは対照的だ。更に、DCEPはドル決済への挑戦という側面を持っている。それ故、CBDCに関してはドル決済を守りたい米国と追随者である日本は消極的で、対等だと考えている欧州諸国は比較的前向きで、ライバルである中国は前がかりになっている訳だ。そうした中、リップル社は根気強く、米国産であることをアピールし続け、今回の記載となった可能性がある。更に言えば、XRP売却益によるリップル社の運営に関しても、こうしたロビー活動に使用されるならば活き金と言えるのではないだろうか。決済などビジネス界で実際に利用されるためにはプラットフォームだけでなく、実際のプロモーションなどが必要で、そうした担い手がきちんと存在しているというのもビジネスの観点からは安心感に繋がるのではないだろうか。要は非中央集権では決済利用などの担い手に対するインセンティブ付けがうまくできていないから、なかなか普及しない訳だ。弊社の年末80円予想はBTCの最高値トライに連れ高するというものだが、XRP/BTCで見てもXRPは比較的に堅調に推移すると考えている。

とは言え集団訴訟を抱えているなどXRPやリップル社に懸念点がないわけでは無い。更にODLで使用されても原則として売りと買いとが同時に発生するので、これだけで需要が増えるわけではないことは以前ご紹介した通りだ。ただ、各企業が銀行を通さず送金が可能になった意義は大きく、リップル社が検討すべきは需要対策もさることながら、企業が手元流動性として保有し始めた時の供給対策なのかもしれない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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