ビットコイン価格とマイニングコストの因果関係

2020-01-17 16:03[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

先日、JPモルガンよりBTCのマイニングコストを本源的価値とし、現在は5000ドル近辺で、市場価格は割高だとしていたと報道されている。また、直近ではハッシュレートが過去最高を記録、Difficultyも過去最高となり強気相場到来のしるしといった報道も目にする。これに対し、弊社では一貫してマイニングコストは重要な指標だが、これがBTCの根源的価値でもないし、価格への影響はゼロではないが、因果関係はむしろ逆で価格がマイニングコストに影響を与えると考えている。以下、弊社の考えをご説明したい。

そもそも「本源的価値(Intrinsic Value)」とは、権利を行使した時に得られる利益を指すオプションの用語で時間的価値との対比で用いられるケースが多い。ただ、ここでマイニングコストをBTCの本源的価値といった場合は、そういったオプション性の議論ではなく、モノの価値そのものないしモノの価値の源泉は投入された労力に等しいという労働価値説に基づいていると推察される。即ち、BTCをモノであり商品でありコモデティとする考え方だ。この考え方に縛られている限りは貨幣としてのBTCの価値は説明できない。岩井克人東京大学名誉教授によれば労働価値説では貨幣の価値を説明するのは難しいとしている。貨幣とは何かという問いに、教授は穀物や貴金属などお金自体に価値があるとする貨幣商品説はとんでもない誤りで、“モノとしての価値<お金としての価値”が貨幣の必要条件だとする。教授は更に政府や王様の裏付けがあるから価値があるとする貨幣法制説も間違いだと指摘する。20世紀まで流通したマリアテレジア銀貨の例を出さずとも、我々日本人は宋がとっくに滅亡した室町時代になっても宋銭を使用し続けていた。要は製造コストを価値の源泉とする考え方はBTCを商品に過ぎないとする考え方で、BTCに貨幣としての価値があるならば、その部分を説明することは出来ない訳だ。

では、マイニングコストと価格に全く関係はないのかと言えばそうではない。上はBTC価格とハッシュレートとの関係だが多少は関係がありそうだ。ただ、マイニングコストが価格を決めるのではなく、価格が上昇すれば法定通貨建ての報酬も高くなり投入できるマシンや電力量も増えるし、価格が下がれば逆に電力コストが見合わないマイナーが出てきて電源価格がマイニングコストを決定づける、すなわち因果関係が逆だと考える。をオフし始める。ただ、既に設備投資を行い、その償却負担もあることから、価格変動に臨機応変に対応するのは容易ではないだろうし、コスト割れでは売りたくないという意識がある程度のサポートとなる(但し、そこを抜けると相場が走る)ポイントとなる可能性はあり、そういう意味では相場と無関係ではないと考えている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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