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USDC(USDコイン)建て取引の急増とBlokFi台頭の意味を考える

2020-02-20 13:02[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

相場分析において資金の流出入ソースを分析することが重要であることは論を待たないが、BTC取引で面白い動きが現れている。CryptoCompareでBTC取引の相手方の通貨の金額とシェアが分かるのだが、これを見るとサークル社が発行するステーブルコインUSDCが急増、1年前には1%にも満たなかったのが、直近では10%を超えている。特に今年に入っての増え方が際立っている。ご存じの方が多いと思われるが、このシェアはざっくりテザーが7割前後を占めており、その次に法定通貨のUSDとJPYが1割前後で続くのだが、足元ではUSDよりUSDCが多い日もあるという状況になっている。



この原因の一つとして考えられるのはBlockFiのUSDCへの付利サービス開始だ。同社は従来からBTCとETHの付利サービスを行っていたが、1月8日からLTCとUSDCを加え、特に後者は年利8.6%の高金利を付与するとされている。BTCなどを仮想通貨建てで預けるならば法定通貨に対し価格変動リスクを持つ形となるが、ステーブルコインであれば10年の米国債が年利1.6%前後なのに年利8.6%であれば、どこかからお金を借りて預けても儲かるのではないかと思ってしまうところだ。お金を借りてくるというのは極端だとしても、2月3日に実際に当初始めた人に利払いがなされたという情報が広まって、人気が高まっているのかもしれない。即ち、USD口座を保有し容易にUSDCを購入できる人でなければ、USDCを購入するには、一旦各国の法定通貨でBTCを購入し、それをUSDCに交換してBlockFi預ける、そういったオペレーションが上記のUSDCのシェア拡大に寄与している可能性があろう。

では、この8.6%の付利というのは非常に有利と言えるのだろうか?この利回りはジャンク債の最低格付けレベルに近いが、ジャンク債といえども社債であれば格付けは取得している。これに対し、小職が見る限りBlockFiの財務内容は開示されていない様に見える。即ち、もし法定通貨を広く一般から公募して借り受けるならば、社債であれば厳しいルールがあるし、預金という形ならば例えば日本国内では禁止されていて、免許を受けた一部金融機関に限定して認められている。それは一重に投資家を保護するためだ。しかし貸借の対象が仮想通貨となるとルールがないのが実情だ。同社は仮想通貨を担保にした法定通貨の貸出も行っているので、貸出の免許はいくつかの州で取得しているようだ。国内に目を向けると、交換所に仮想通貨を預け入れてそのままという投資家も多く、そうした仮想通貨を交換所に貸出すサービスも散見される。釈迦に説法かもしれないが、売買目的で預け入れられている仮想通貨には厳格な規制に基づき分別管理されているが、交換所に貸出してしまうとそうした保護がされないばかりか、顧客の預入資産が優先されるため、劣後債を購入しているのに似た立場となる。勿論、その点を理解した上で貸出すなら問題ないが、意識すべき点だろう。

BlockFiに話を戻すと、直近で大規模な資金調達を行っており、また同社のHPによれば株主もコインベース、フィデリティー、コンセンシス、ギャラクシーキャピタル。モルガンクリークとこの業界では有名どころが集まっており、更に日本のリクルートの名もある。こうしたことから信用できると判断するならば、それは一つの投資だが、利回りだけに注目することはお勧めしない。即ち、この分野に限らず、仮想通貨業界は技術やビジネスの進歩に規制がついていけていない傾向があり、それ故、各投資家のリスクに対する審美眼が試されていると言えよう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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