リヤドG20声明文を読む~ついにG20までXRPにお墨付きか?

2020-02-26 14:02[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

2月22日から23日にかけて、サウジアラビアの首都リヤドでG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催された。今回は「新型コロナウイルス(COVID-19)の最近の流行を含む、グローバルなリスク監視を強化する。我々は、これらのリスクに対処するための更なる行動をとる用意がある。」としたことが話題に上った。また、中国のデジタル人民元、DCEP(Digital Currency Electronical Payment)など中銀デジタル通貨(CBDC)も議題に上るとして仮想通貨業界からも注目されていた。ところが、直前に中国が国内対策を理由に財相も中銀総裁も欠席、新型ウィルス問題もCBDCも主役不在のまま具体的議論にまで深まらず、G20の限界を印象付ける形となった。これに対し麻生財相は閉幕後の記者会見で「中国の話に関しては、今いる人(駐サウジ大使)に聞いてもしょうがない。分かっている人が来ていない」とし、また「中銀が発行するデジタル通貨は、よほどきちんとした規制をしたものでなければ危険が大きい」と指摘。「少なくとも今の段階での発行は『ちょっと待ってくださいよ』」と言わざるを得ないとした。

では、今回のG20の仮想通貨市場に対する影響は限定的なのだろうか。実は声明文を見てみると、昨年6月の福岡G20からがらりと変更されている。引用が長くなるが、以下に示す。昨年6月の声明では、仮想通貨は経済に便益をもたらすが、AML/CFTや利用者保護の観点から規制が必要で、前者はFATFに作業を依頼し、後者はIOSCOやFSBの報告書も参考に、FSBが中心となって各規制当局に働きかけていく、この1点について述べているだけに見える。一方で、今回の声明では、①仮想通貨は役に立つが、必要な規制を話し合っていく②リブラのようなグローバル・ステーブルコインは危険だから各当局のOKが出るまで始めさせない③仮想通貨を利用して国際送金を安価かつ迅速化する必要があるので、FSBは10月までにロードマップを出せ、と3つのことを述べている。①は昨年6月と同じ②は昨年10月のワシントンG20で出ていた話で、今回は③が新しいし、「グローバルなクロスボーダー決済を改善する必要性」と述べたことは画期的と言っていいだろう。即ち、SWIFTに代表されるコルレス決済VS仮想通貨決済に決着がついた、少なくとも前者が独占していく世界を終わらせるとG20が認めた訳だ。

ただ、その送金における媒介をどのトークンが担うのかはまだ言及されていない。また、この文脈でCBDCを指していると考えるのにはやや無理がある。上記の通り日本はCBDCに国際決済機能を付与しようとする中国に警戒感を持っている。基軸通貨特権を持っているアメリカの代弁者という側面もあろう。欧州各国は主に国内利用を志向している可能性が高いと思われる(もちろんアメリカへの対抗策も保留するというしたたかさも併せ持っていそうだが)。これに対しグローバルなクロスボーダー決済にデジタル人民元を使う布石を声明に盛り込みたいならば、中国当局が働きかける必要があるが、今回は不在だ。そこで、この声明文は若干意図的にCBDCについて殆ど触れなかったのかもしれない。

このように考えると、今回のG20は中国不在の中、日米の主導で、リブラは禁止、DCEPは無視、そしてグローバルなクロスボーダー決済を改善する必要がありロードマップを作るとしている。これでXRPを連想させない方が難しいのではないだろうか。勿論、どのようなトークンを支払いに媒介させるのかというレースはまだ決着がついていないが、少なくとも実用化され商用化段階にあるのはXRPだけだ。世銀やIMFにお墨付きを得、ついに昨年12月には米国政府機関から「XRP」が「国際送金の効率化につながる」と記載させたリップル社のロビー活動がいよいよ花咲いた可能性があり、もう少し市場は反応しても良い気がしている。

(以下はG20財務相中銀総裁会議共同声明抜粋(仮訳)財務省HP)

2019年6月8-9日
暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定に脅威をもたらしていないが、我々は、消費者及び投資家保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策に関するものを含め、リスクに引き続き警戒を続ける。我々は、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため、最近改訂された、仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を適用するというコミットメントを再確認する。我々は、FATFが今月の会合にて、解釈ノート及びガイダンスを採択することを期待する。我々は、消費者及び投資家保護や市場の健全性に関し、暗号資産取引プラットフォームについてのIOSCOの報告書を歓迎する。我々は、FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する。我々は、FSBと基準設定主体に対して、リスクを監視し、必要に応じ追加的な多国間での対応にかかる作業を検討することを要請する。我々はまた、分散型金融技術、それが金融安定性や規制、ガバナンスにもたらす潜在的な影響、及び当局が広範なステークホルダーとの対話をどのように強化できるかについてのFSBの報告書を歓迎する。我々は、サイバーの強靭性を高める努力を強化し続けるとともに、サイバー攻撃への対応や復旧のための効果的な取組を明らかにするFSBのイニシアティブの進捗を歓迎する。

2020年2月25日
我々は、技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得るという我々の見解を再確認し、デジタル時代における規制・監督上の課題の枠組みを構築する取組を支持する。そのため、我々は、BigTechの金融分野への進出の高まりに関連したインプリケーションを検討するために、関連する各金融規制基準設定主体も関与させながら、FSBの地域諮問グループを活用する包摂的なアプローチを歓迎する。我々はまた、FSBに、技術が可能とする規制・監督上の解決策(RegTechやSupTech)への異なるアプローチについて報告することを要請する。我々は、金融安定、消費者及び投資家保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策、及び通貨主権に係る問題などマクロ経済上のインプリケーションに関するリスクを含め、金融技術革新に伴う潜在的なリスクに引き続き警戒を続ける。2019年の首脳宣言を基礎として、我々は、最近採択された仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を実施するよう各国に促す。我々は、リスクはサービス開始前に吟味され、適切に対処される必要があるとした、所謂‘グローバル・ステーブルコイン’とその他の類似の取組に関する2019年10月の声明を再確認し、これらの取組に関する規制上の提言を作成するFSBの取組を支持する。このため、我々は、FSB、IMF、そしてFATFの報告を期待し、また、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策の基準を適用するとのFATFの声明を歓迎する。我々は、送金を含む、より安価で、迅速な資金移動を促進するよう、グローバルなクロスボーダー決済を改善する必要性を認識する。我々は、FSBに、決済・市場インフラ委員会(CPMI)やその他の関係基準設定主体や国際機関と協調して、2020年10月までに、グローバルなクロスボーダー決済を改善するためのロードマップを作成することを要請する。



松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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