市場のパニックは予想できたか?~今後のために暴落の前兆を振り返る~

2020-03-24 16:18[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

新型コロナウィルス感染の拡大を契機に3月の金融市場は大混乱、BTCも一時40万円台を付けるなど歴史的暴落を見せた。震源地であるNYダウはまだ下げ止まったとまでは行っていないが、FRBを中心とした各国当局の政策対応によりパニック売りの状態からは脱しつつある。この点について弊社では「市場のパニックが続く理由と収まる条件」「市場のパニックはなぜ起きた?~後手に回ったコロナウィルス対応~」にて市場の不安心理がどのように増幅されて、どうやったら収まるのか説明してきた。即ち、市場の不安を取り除くには、各国当局が一丸となって市場を守るという姿勢が重要で、そういう意味では米国議会内の対立など不安要素はまだ燻っているが、緊急G7、G20など矢継ぎ早に国際協調姿勢をアピールしていることはプラスに働いていると考える。

そうした中、少し気が早いかもしれないが、本稿では時間をさかのぼって今回のパニックの前兆を探り、振り返ることで、いつ起こるか分からないが、次回の暴落時に備えることを試みたい。巻末に2月に入ってからの弊社Daily Reportのタイトルを添付した。はっきり2分できる訳ではないが、概ね、緑色がブルな期間、黄色が警戒をしていた期間だ。1月はFRBのBS拡大もあり株も債券もコモデティ―も買われる流動性相場だったが、セオリー通り先に半減期を迎えるBCH・BSVの価格が上昇したことで2月のBTC相場に期待がかかった。しかし2月10日頃にFOMOが発生すると思われた1万ドルに乗せても相場が走らず、一方でFRBがBS縮小を示唆したことで弊社では警戒感を見せていた。しかし、下がるとしても半減期を織込む相場で上昇した後に反落という形になると考え、短期的にブル見通しを続けていた。そうしている間に日本の2月の3連休明けにNYダウが2日で2000ドル急落、最終的なサポートラインを8000ドル台前半として警戒感を強めた。その時の見方は、新型ウィルス問題は株価の下落によりBTCの売り材料となるが、同時に金融緩和を呼び起こすことで買い材料にもなり得る。このサポートさえホールドできれば、その後の上昇を見込めるというものだった。3月に入り、遅きに失した感はあったがFRBが緊急利下げに踏み切り、G7で協調姿勢を見せたことも有り、一旦は戻したかに見えた。BTC相場も9000ドルをネックラインに逆三尊の形を作り、相場の底打ちを印象付けた。しかし、これは一時的なもので、日欧の足並みがそろわないと見ると、NYダウ、BTCともに歴史的暴落を見せることとなった。各国当局はようやく重い腰を上げ、FRBを中心に対応を本格化、BTCも若干反発を見せ、現在に至っている。

これをWeekly Reportで振り返ると1月10日時点でこの上昇は流動性相場と指摘しており、これを強く意識していれば今思えば2月12日のFRBの政策転換を見てベア転できたかもしれないが、それは流石に結果論だろう。1月24日には新型コロナウィルス拡大懸念を材料に挙げていたが、過去のSARSやH1N1(新型インフルエンザ)の際に株式市場がそれほど下がっていなかったことを根拠に市場に与える影響は限定的と判断してしまった。この判断はその後の変調に気づきながら対応が遅れた一因となった。次に異変を感じられたのが2月7日、この時、市場は1万ドルに乗せればFOMO(Fear of Missing Out)が発生して急騰すると考えていたのに中々上昇しない。それどころか激しく上下動を始めていた。出来ればこの時点で異変に気付けば良かったのだが、この時点では半減期の上昇待ちという認識だった。しかし、2月12日のFRB議長証言を受け、米株の暴落が始まる直前の2月21日には「高値圏での乱高下は天井が近いサイン」「今までは買い遅れが目立ったせいか、押し目はすぐ解消されたが、このところ相場が押してから高値を更新するのに時間がかかり始めた」「30000ドル目前の米株に関しても、上昇を支えていたFRBのベースマネー膨張にブレーキ」と相場の変調が目立ち始めた。振り返れば、ここが市場のターニングポイントだったのかもしれない。「波高きは天底近し」「Dipからの回復の遅れ」「ベースマネーの縮小」こうしたものが変調のサインだった。後学のために覚えておきたい。その後は8200-8500ドルを最終防衛線として警戒していたものの、3月6日のFRB緊急利下げもあり、一旦9000ドルを上抜け逆三尊の形となり底打ちをしたものと思われた。しかし、これはいわゆるダマしで、協調と言いながら日欧の対応遅れを嫌気してか市場は再び暴落を始めた。ここが2つ目のポイントで、ボラティリティーが高いBTC相場の、それも大相場に際しては、テクニカルのダマしが出ることがあるという点だ。そして歴史的暴落を経て、3月16日弊社では「予想外の感染拡大」と「期待外れの政策対応」がこうした事態を招いたと総括したが、こうしたこと、特に感染拡大に関しては事前に予想することが困難で、確かに暴落の材料ではあるが、深く考えても次回以降の参考にならないと言えるかもしれない。

付け加えると、暴落前に降って湧いた様に強気予想が出回り、また市場マスコミも騒ぎ出す。以下、Coinpostの見出しをご紹介しよう。2月13日「米CNBC経済番組がビットコインに再注目 仮想通貨高騰受け放送内容で採用」2月20日「米CNBC、仮想通貨の番組内容を連日放送 ビットコイン高騰受け」日本でも日経新聞やNHKで放送されるとその市場はもう終わりという見方がある。これは両メディアが外しているという意味ではなく、それだけ国民的メディアが扱う≒参加者がほぼ同じ方向を向いている、これが暴落のサインなのかもしれない。Coinpostを弁護すると、前者の記事の中で「CNBCの番組放送が「逆指標」になるとの指摘」があるとし、「市場高騰によって一般の関心が最も高まったタイミングで報道される番組の放送時が市場の天井に当たることが多く」「過熱感を判断する一つの指標」になるかもしれないと締めくくっている。

纏めると、高値圏での乱高下もDipの戻りの遅さもポジションが一方向に傾いている動きで、上記CNBCも同じ現象を示している。そうした中、FRBベースマネーの縮小など変調が見られたのにSARSや半減期の経験からそうした兆しを見逃している内に大暴落は起こる、テクニカルは妄信しない方がいい、常識的な結論だが覚えておいた方がいいかもしれない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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