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ヴィタリック・ブテリンは一生独裁者?

2018-10-10 17:39[ 松田康生

トピック 仮想通貨 ビットコイン イーサリアム

10月11日現地時間午前10時より米上院で「仮想通貨とブロックチェーンのエコシステムに関する調査」と題する公聴会が開催、仮想通貨に否定的なヌリエル・ルビーニNY大教授が証言することで話題になっています。同氏は8日にも「仮想通貨の非中央集権は神話だ。北朝鮮より中央集権ではないか。マイナーは中央集権化しているし、取引所も中央集権化しているし、開発者は中央集権の独裁者ではないか(ブテリンは「一生独裁者」だ)。」とツィートし注目されました。この発言について少し掘り下げてみたいと思います。

イーサリアムは当初から、フロンティア・ホームステッド・メトロポリタン・セレニティーの4段階のアップグレードが予定されており、うちメトロポリタンはビザンチウムとコンスタンティノールプルに分かれており、後者が10月9日にテストネットでの利用開始が予定されていましたが、脆弱性が見つかったとして14日頃に延期されました。ブロックチェーンにプログラムを書き込めるイーサリアムはBTCなどより複雑であるためにバグが生じ易く、入念にテストを行うことが慣例となっていて、今回も本番環境への導入は12月頃と予想されている様です。その延期が発表された5日の一連のツィートの中で創始者ヴィタリック・ブテリン氏は「仮にこの時点で私が明日突然いなくなっても(燃え尽きても)、イーサリアムは確実に生き残るでしょう」と述べ、ブテリン氏がプロジェクトから去るつもりではないかとの懸念が持ち上がっています。発言の趣旨は開発・運営はすでに同氏なしに進んでいるのでヒューマンリスクは小さいことを示すものと解釈されていますが、そうは言ってもBTCやBCHの混乱を見るに、カリスマ創始者がプロジェクトに残っているかいないかは大きいと思われます。

この様にルビーニ教授の認識はやや的を外しているのですが、そうした言葉尻をここで論じたい訳ではありません。ただ、開発チームが一部に集中していることを以って、中央集権的だと切って捨てられるべきなのでしょうか。他の仮想通貨でもマイナーなどのネットワーク参加者は非中央集権化されているのに対し、BTCのビットコイン・コア、LTCのライトコイン財団など開発チームは集中しているケースが殆どです。公表されているとはいえプログラムへのアクセス権は一部の人間が管理せざるを得ません。しかし、ビザンチン将軍問題の現実的解決策として登場した仮想通貨の世界で、その開発チームに性善説を適用するのは矛盾しています。これに関しては開発チームとは異なりますがウィンクルボス兄弟の行動が説明になると考えます。同兄弟は交換所の設立やETF申請に始まり、業界団体の立ち上げやステーブルコイン開発、預かり仮想通貨への保険付与とBTC投資環境の整備に尽力しています。それはハーバード出身のエスタブリッシュメントとしてのノブレス・オブリージとも言えるかもしれませんが、それ以上に早期に大量のBTCを保有している同兄弟にとってBTCの発展と価格の上昇がインセンティブになっている訳です。すなわち、開発チームの多くが初期に当該通貨を保有している、ないしはチームに加わった時点から利害関係が生まれた開発者も、当該通貨の発展≒自己の利益となっているから開発が一部に集中してもシステムが健全に運営されている、エコシステムが成立しているのだと考えます。

リーマンショックを予想したと言われている同教授は、クリントン政権下で大統領経済諮問委員会の上席経済アドバイザーを勤めましたが、その時の委員長がジャネット・イエレンで、その後、財務省の上席アドバイザーとして後にNY連銀総裁と財務長官を勤めたティモシー・ガイトナーに仕えている重鎮です。それ故、公聴会に呼ばれるのでしょうが、仮想通貨の専門家という訳では無いのでその発言内容にあまり神経質になる必要は無いようです。むしろ今朝のDaily Report(https://news.fxcoin.jp/detail.php?id=126) でお話した通り、アカデミックな世界からの示唆としてはプリンストン大らの中国がBTCの脅威となっているという論文の方が影響が大きい様です。この点に関しては別稿でご紹介したいと思います。https://news.fxcoin.jp/detail.php?id=128

(ご参考)ルビーニ教授の仮想通貨に関する主な発言

2017年11月7日 中国のように、これからより多くの国々が仮想通貨取引所を違法とし、新たな規制が施行されるあろう。だから(ビットコインは)終わる。
2018年5月2日 分散化に関する議論はすべて〇〇だ
2018年7月9日 (ビットコインは通貨の要件を満たしていない)ビットコインのカンフェレンスでも使われていないではないか。1日に20%も上下するものが何で次の価値貯蔵手段になりえるのか?
2018年8月21日 (フィンテックと)ブロックチェーンは何の関係もない
2018年9月7日 ビットコインはそのピークから70%下落、イーサリアム85%、上位10位の仮想通貨は約90%;残りのゾンビ仮想通貨 は95%〜99%の価値を失っている。ほとんどが、価値がゼロになるまで続く、まさに血みどろの大虐殺だ! 

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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