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暗号資産(仮想通貨)とヘッジファンド

2020-05-18 16:30[ れんぶらんと

金融リテラシーのお話 仮想通貨 暗号資産

1.ヘッジファンドの暗号資産預かり運用総額は2170億円で前年比2倍に増えている。
2.投資戦略はAIを駆使したクオンツ戦略が主流。
3.投資拡大にはカストディアンの台頭など投資環境改善が一役買っている。


先月、英Financial Times紙に運用額が世界第2位のヘッジファンドであるルネッサンス・テクノロジーズ(Renaissance Technologies)が、ビットコイン先物市場へ参入するという記事がでました。同ファンドは数学者のJames Simons氏が設立され、最先端のAI(いわゆるディープラーニング)を駆使して1988年から2018年の3年間の年間平均収益が66%(手数料前)という、信じられないようなパフォーマンスを上げています。
このような、ヘッジファンドの中のヘッジファンドの暗号資産(仮想通貨)市場参入、という象徴的なニュースに加えて、先週大手コンサルタント会社のPwCと資産運用会社であるElwoodが興味深いレポート(2020 Crypto Hedge Fund Report)を公表したので、今回はそれを紹介します。

1.ヘッジファンドの暗号資産市場における運用額

レポートによると2019年のヘッジファンドによる暗号資産市場における運用額の合計は20億ドル以上ということでした。これは円換算すると2170億円以上となります。これは1年前と比べるとちょうど2倍となります。
同じ時期の世界のヘッジファンドの総運用額は3.3兆ドル(約360兆円)なので、全体の0.07%ということになります。こうしてみてみると、さすがにヘッジファンドの運用額は巨大です。彼らがこのペースで今後も暗号資産投資を増やしてくると、相場に大きな影響を与えることは明らかです。

2.投資戦略

投資戦略は、大きく分けて以下の4種類です。
① クオンツ : 全体の48%
膨大な市場データを扱い高度な数学的分析を駆使して売買を行う運用手法です。クオンツとはもともとQuantitative(数量的)という英語から生まれています。ディープラーニングなど最先端のAIが使用されることが多くあります。上に紹介したルネッサンス・テクノロジーズの運用手法がこれに相当します。
② ロングポジション : 19%
ビットコインなどの暗号資産をロング、つまり買い持ちにし続ける運用手法です。いわゆる日本の個人投資家でいう「ガチホ」がこれに相当します。
③ ロング/ショート : 17%
割安な通貨をロング(買い持ち)、割高な通貨をショート(売り持ち)にする運用手法です。これらの判断は、テクニカル分析やマイニングのコストを加味して売買の方針が立てられます。
④ 複合型 : 17%
上の①,②,③を組み合わせて、ポートフォリオを組む運用手法です。分散投資なので損益が比較的ブレないというメリットがある一方で、一本調子の相場動向の時に大きく利益が取れないという、デメリットがあります。

なお、2019年におけるパフォーマンスはビットコインがほぼ2倍という上昇を見せた年であったため、最もパフォーマンスが良かったのは、中央値ベースでみるとロングポジションで+40%でした。あとはロングショート(+33%)、クオンツ(30%)、複合型(15%)でした。

3.その他

運用額や投資戦略以外で、まず目を引いたのはカストディアンの利用です。2018年においては利用率が52%であったものが、2019年には81%と大きく伸びています。
ほとんどのヘッジファンドは投資家から資金を預かり、運用しています(*1)。この場合、資金や購入した有価証券などの資産をカストディアン(資産の保管・管理を専門に行う会社)に保管しています。暗号資産の場合、その歴史が浅いこともあり以前は有力なカストディアンが少なかったのですが、ここにきて大手の参入が相次いでいます。
また、レポートは86%のヘッジファンドが独立したファンド管理会社を使用し時価評価の計算や収益管理をしていると述べています。

4.まとめ

暗号資産市場の参加者は、これまで世界的にみて個人の投資家およびマイニング業務に携わる一部の大口投資家が中心となっていました。しかし、カストディアンやファンド管理会社の登場により、ヘッジファンドが暗号資産に投資しやすい環境が整いつつあります。今年に入って大手のヘッジファンドも暗号資産市場に参入するという報道(*2)も出ており、このような動きは今後も継続すると考えられます。

(*1) ルネッサンス・テクノロジーズは例外的に外部の資金を受け入れず、自社と従業員の資金のみの運用となっています。これは高パフォーマンスを生み出すテクノロジーの流出を防ぐためだといわれています。
(*2) ルネッサンス・テクノロジーズ以外にも大手ヘッジファンド運営者のPaul Tudor Jonesが自社のファンドでビットコインに投資するとCNBCが5月7日に報道しています。

れんぶらんと

17世紀に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインの作品をこよなく愛する自称アーチスト。 1980年代後半のバブル期に株式および外貨資産投資を始め、いい思いをしてから投資の世界にどっぷりつかっている。

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