市場間裁定取引

2020-05-29 09:00[ 岩壷健太郎

岩壷教授の経済教室 仮想通貨 暗号資産

岩壷教授の経済教室 第3回


 暗号資産(仮想通貨)市場ではこれまで大規模な市場間裁定機会が繰り返し発生しました。Makarov and Schoar (2020)は19カ国34の仮想通貨交換業者のデータを使用し、裁定取引に関する興味深い発見をしています。

  1. 異なる市場でのビットコイン価格の乖離は多くの場合、数時間、場合によっては数日、数週間持続する。
  2. 価格の乖離は同じ国内よりも、国(または地域)をまたいで大きくなる。2017年12月から2018年2月初旬までの米国と韓国の価格差は1日平均で15%を超え(最大40%)「キムチプレミアム」として報道された。同様に、日米間の価格差は10%前後、欧米間では3%前後であった(図1)。
  3. ビットコインは通常、欧州以外の国では米国を上回る価格で取引され、大きく下回ることはほとんどない。価格は共変動するため、米国価格との乖離は国をまたいで同時に大きくなったり小さくなったりする。
  4. 価格の乖離が大幅に拡大するのは、ビットコイン価格が急速に高騰している時期である。
  5. ビットコイン/ドルの価格は国家間で大きく異なるのに対し、ビットコインとイーサリアムの価格差は国をまたいでも乖離は非常に小さい。
  6. 国をまたいで価格が大きく乖離する原因は資本移動規制に加えて、仮想通貨交換業者に対する規制監督の欠如である。世界的にみて資本移動に制限のある国の方が乖離率が高い。
 



では、どのようにすれば裁定取引ができるのかを考えてみよう。価格が安い国(たとえば米国)でビットコインを買い、それを高い国(たとえば日本)に送金して日本で売り、代金の円をドルに交換し、ドルを米国に戻すことができれば裁定利益が得らえます。しかし実際には、取引がビットコインブロックチェーンに登録されるまでに約1時間かかるため、このような教科書的な裁定取引は簡単ではありません。また、交換所間の送金は数時間から数日かかることもあります。その間に裁定取引の機会は消えてしまうかもしれません。

そこで、価格が高い日本でビットコインを空売りし、安い米国でビットコインを購入するとしましょう。その後、米国から日本にビットコインを送金して、ビットコインを買い戻すことで裁定取引は完了します。しかし、空売りを許可している販売所が限られているため、どこでも実行可能なものではありません。日本を始め販売所の多くは空売りを許可していません。

空売りが認められていない場合、2つの代替的な裁定取引戦略が考えられます。1つ目は取引所の証拠金取引によって価格が高い国でビットコインを売り、ショートポジションを持ち、価格が低い国で買って、ロングポジションを持つことです。2つの取引所の価格が将来的に収束した場合にのみ、取引から利益を得ることができます。価格収束リスクにさらされますが、不可能ではありません。とはいえ、実際には、任意の取引所における裁定機会は、平均して2日未満であり、極端な場合でも1ヶ月以上存在したことはないことが報告されています。

 2つ目の裁定取引戦略は、一方の販売所の価格が他方のそれから大きく乖離する時を見計らって安い方で買い、高い方で売ることを同時に行うことです。売るためのビットコインが手元になければ、ガチホ(海外ではホドラーと呼ばれる)からビットコインを借りてくることになります。買ったビットコインを送金して、貸し手に返すことで裁定取引は終了です。価格の乖離幅がビットコインの貸借料(金利)を上回っているならば、その分が利益になります。

参考文献
Makarov, I., Schoar, A., 2020. “Trading and arbitrage in cryptocurrency markets” Journal of Financial Economics, 135, 293-319.

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)

岩壷健太郎

神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。

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