Grayscaleのビットコイン・トラストのプレミアムの縮小は何を示唆するのか?
2020-07-07 21:44[ 松田康生 ]
5月末のレポートによれば世界最大の暗号資産運用会社となったGrayscaleのBitcoin Trust(GBTC)の運用額は35万BTC(33.7億ドル)に達しており、総供給量の2%を占めるに至っている。またCointelegraphは2019年以降、GBTCは10万BTCを購入し、それは同期間にマイニングされたBTCの17%に相当すると伝えており、相応のプレゼンスを有している。
先日、同社のETH Trust(ETHE)の価格が急騰・急落を繰り返し話題となったが、GBTCの価格もこのところ低下している。これには若干の説明が必要で、GBTCはBTCを保有するファンドの株式という形で商品化されている。従って、ここでいう価格とはOTC市場で売買されるGBTCの株式の価格で、それが低下している訳だ。一方で、現在、GBTCは1株当たり0.00095943BTCを保有しており、1株当たりの理論価格はこの保有BTCに時価を掛けたものとなるが、この両者が乖離することがある。というか一致すことはほぼない。通常、GBTCの方が高く、プレミアムと言われている。
上は過去2年間のファンド価格と理論価格、そしてプレミアムを示したもの。理論価格は、手数料分だけ年2%減価していくが、BTC相場とほぼ同一と考えると、プレミアムの動きと見事に相関している。また、よく見てみると2018年11月の急落の前からプレミアムが縮小している様子が伺える。ETHEの乱高下の際に話題になったように、このファンドに投資する場合、一定の期間(1年)売却が禁止されるロックアップ期間があり、BTCこのプレミアムの動きには様々な要因が考えられる。そのうちの一つが、保管の問題から現物を買いにくい機関投資家の需要の強さを表しているというものだ。需要が強ければプレミアムも相場も上昇する。それにしても、それだけで説明するには出来すぎだと感じるほどの相関ぶりだ。
今回、このプレミアムが低下しているのは、かなり気になるところだ。ただ機関投資家の需要減少は、このところの出来高減少に現れており、それでも底堅い相場展開をすでにしているという見方もある。また、ほぼ1年前に追加私募を行った結果、ETHEの様に裁定取引が行われている可能性もある。ただ、Nasdaqや金、さらにここ数日の中国株など流動性供給による金融相場が続く中、なかなかBTCに順番が回ってこない一因として頭の片隅に置いておきたい。
無料口座開設はこちら
Follow @fxcoin_jp
松田康生 (まつだやすお)
シニアストラテジスト
東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。
短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通
twitterアカウント:@FXcoin_matsuda