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FSB報告書はFOMC議事録?

2018-10-17 20:54[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

金融安定理事会(FSB)は、10月10日「暗号資産市場 将来の金融安定に対する潜在的チャネル」を公表、現時点では暗号資産は金融システムの安定にとって脅威ではないが、市場の発展速度を考慮し慎重な監視が必要と、前回7月報告書の判断を踏襲しました。FSBといえば主要25か国の中銀・金融監督機関・財務省・IMF・世銀・BISで構成される世界の金融規制方向性を決める重要な機関で、その報告書の意味は軽視すべきでない。以下では、この報告書の出て来た経緯とその意義を考察したい。

3月のブエノスアイレスG20の共同声明では「国際基準設定主体がそれぞれのマンデートに従って、暗号資産及びそのリスクの監視を続け、多国間での必要な対応について評価することを要請する」とされ、これを受けて7月16日にFSBは報告書を公表した。この報告書は、これまでのFSB、BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)、証券監督者国際機構(IOSCO)、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)のそれぞれの活動報告の形態を採っていて、まずFSBは仮想通貨は金融システムに重要なリスクをもたらしていないとし、将来的なリスクをモニターするためにCPMIと協力して別添図の通りのモニター体制を構築するとした。これをベースに7月のブエノスアイレスG20の共同声明は以下の通りとなった。下線部分をご参照いただけると、ほぼ報告書を踏襲していることが分かる。また、報告書ではFATFによるAML/CFT(アンチマネーロンダリング・テロ資金供与)に関する基準は別途FATFからG20に報告するとされており、その部分も声明に反映されている。

(7月G20共同声明:財務省仮訳 下線は小職)

暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。しかしながら、暗号資産は消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起する。暗号資産は、ソブリン通貨の主要な特性を欠いている。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないが、我々は、引き続き警戒を続ける。我々は、FSB及び基準設定主体からのアップデートを歓迎するとともに、暗号資産の潜在的なリスクを監視し、必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を期待する。我々は、FATF基準の実施に関する我々の3月のコミットメントを再確認し、2018年10月に、この基準がどのように暗号資産に適用されるか明確にすることをFATFに求める。

今回の報告書は別添の役割分担に従い、暗号資産市場のリスク(流動性、ボラティリティー、レバレッジ、サイバーセキュリティーを含む技術的・オペレーション)の評価を行い、次に金融市場へ与える影響(心理[信頼感]効果、エクスポージャー、資産効果、決済)を評価、最後に各国で様々な法規制が打ちたてられつつあるが、金融システムの安定に関する政策の議論は時期尚早として、現時点では金融システムの安定性の脅威ではないが、今後も監視を続けるという結論に至っている。この示すところは、10月11日のバリG20では声明は出されなかったが、11月29日のブエノスアイレスでのG20においても金融システムの安定性に関する規制については時期尚早とされつつ、今週開催されているFATFの全体会合を受けAML/CFTに関する記述がなされる可能性が高いと言えよう。

今回のFSB報告は7月報告で定められた監視体制下での初回の報告書となったが、今後定期的に同様の報告書が出されるのであれば、G20における声明と合わせて、為替市場などにおけるFOMCの声明文や議事録に匹敵するような重要な材料となる可能性がある。なお、報告書ではICOに対して多くの国が禁止や警告などの措置を採っていることに関する記述が多く、G20でも何らかの記述があるかもしれず注意が必要だ。また、現状の銀行サービスが時間がかかり手数料も高い中、暗号資産の国際送金・決済への利用が選択肢になりつつあると記載されている。FSB報告がFOMC議事録と同等の注目を集めるようになれば、XRP決済にお墨付きが与えられたとして大きな買い材料となっても不思議では無い。


FSBによる仮想通貨市場の監視体制

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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