所得向上委員会にゲスト出演「仮想通貨を巡り先進国が覇権争い」の補足説明

2020-08-07 15:03[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

Youtubeの所得向上委員会にゲスト出演した。同番組はフリーアナウンサーの野中美里氏がMC、田中泰輔リサーチ代表の田中泰輔氏などをメイン解説者に「給与所得」「事業所得」「資産運用の所得」の3つの所得向上について専門家を招いて情報発信を行っている。今回は「仮想通貨を巡り先進国が覇権争い!?デジタル人民元・ビットコイン・リブラはどうなる?」をテーマに仮想通貨の専門家として出演した。番組内では、時間の制約もあり言葉足らずの部分もあったので、少し詳しく説明したい。番組では大きく分けて、①最近のBTC相場の上昇の背景、②中銀デジタル通貨(CBDC)とデジタル人民元による通貨覇権争いの2つのテーマをお伝えしたが、相場上昇の背景については普段のマーケットレポートで説明しているので、今回は特に後者に関して補足したい。

CBDCへの注目

昨年のリブラの登場以来、その対抗策の一つとしてフォーカスされたCBDCだが、その後のデジタル人民元の登場によって、それまで消極的な国においても研究・開発が加速している。FRBのデジタルドルへの言及や日銀のCBDC実証実験への積極姿勢はそうした背景がある。後で述べるがドル覇権への挑戦という側面があるCBDCに対し、覇権国アメリカへの近さによって温度差があった。即ち、ドル覇権に対して最も挑戦的な中国は積極的で、表面的には対立していないが潜在的な挑戦者であるEUは中間的立場、対抗する意図のない日本や米国は消極的だった。しかしリブラの登場でEUは態度を積極化させ、さらにデジタル人民元の登場は米国と日本の世論を動かし、その結果、両国の通貨当局は重い腰を上げ始めた。両国民は、中国に後れを取ると恐れた訳だ。こうして世界はCBDCに注目するに至っている。

CBDCの発行が直ちにドル覇権への挑戦になるわけではない

CBDCには大きくホールセール型とリテール型があるが、銀行などの金融機関の間でのみ流通させるのがホールセール型で、これは現在の中銀システムのバージョンアップに近い。一方、リテール型は個人や法人の間で現金に代わって流通する。すると何が起こるのかと言えば、いま市場に群雄割拠で乱立する電子マネーが1本化しかねない。電子マネーより日銀の方が信用力が高いからだ。もちろん電子マネー側もインセンティブを付けて利用者の引き留めを図るだろうが、その源泉は店舗が払う加盟店手数料であるから、店舗はその負担のないCBDCの方を喜ぶだろう。場合によっては割引をするかもしれない。民業圧迫を恐れて当初日銀は消極的だったが、ここにきて世論の声に押されて態度を変えた。従来から日銀には、民主的プロセスを経ていないのに国民生活に直結する重要な政策を決めることに対する「遠慮」があったが、一方で世論の声には敏感だからだ。

こう考えると、CBDCはそもそも国内決済の問題であることが分かる。例えばスウェーデンのe-クローナも、国内で進んだキャッシュレス化を中央銀行がより便利なものにするために開発されるものだ。特に米国覇権に挑戦する意図はない。デジタル円が出来ても、デジタルドルと交換するには、今のところ既存の銀行システムを利用するしかない。中国の意図は少し異なるが、世間で言われているようなドル覇権への挑戦とも少しニュアンスが異なってくると考えている。これに関してはドル覇権とは何かを説明する必要がある。

ドル覇権

世界の多くの国は自国通貨を持っており、国際的な取引においては通貨を交換する必要がある。貨幣の3大要件として、価値の尺度・価値の保存・流通手段の3つが挙げられるが、国際社会でこの3つを満たすのは現在ならば米ドルだ。まず貿易決済においては、2国間のどちらかの通貨か米ドルで行われている。日本のように円という立派な国際通貨を持つ国でさえ貿易決済の約半分がドル建てだ。また、国際取引される多くの資源や商品はドル建てで値決めされるのが慣例だ。原油や金が代表的で、特に前者はドルがほぼ独占しており、イランなど米国から経済制裁された国を苦しめている。最後に世界中の中銀の外貨準備は米ドルで、米国は殆ど外貨準備を保有していない。

こうして米ドルが基軸通貨となると、米国は基軸通貨特権というものを手に入れる。一般に通貨を発行すると通貨発行益(シニョレッジ)を得られる。日銀は20円以下の印刷代で1万円札を発行している。但し、厳密にいえば、日銀券は日銀の債務であり、損益計算書に計上できるものではない。しかし、日銀は日銀券を発行することにより、その資金で運用をすることができ、この運用益が利益となる。これを基軸通貨国である米国は世界を相手に行うことができる訳だ。具体的に言えば、世界の貿易決済や外貨準備に必要とされる米ドルは米国の対外債務にあたり、米国はこうした債務をほぼ無制限(?)に拡大できる。言い換えれば借金で世界中からあらゆるものを購入でき、困ったら米ドルを印刷して返せばいい。米国人の生活が豊かな所以の一つだ。貿易の対価をドルで支払う限り、そのドルは米国の債務として計上されるだけで、経常収支赤字のファイナンスが自動的に行われるわけだ。

デジタル人民元構想

中国は日本と並ぶ経常収支黒字国で、赤字のファイナンスに困っていない。また、基軸通貨国として対内投資を受け入れる国内市場もなければ、まだ資本規制を引いている、あえて言えば金融に関して言えば発展途上国だ。とても米ドルに代わる基軸通貨国になる準備も覚悟もできていない。それでも何故中国がデジタル人民元に傾倒するかと言えば、米国の伝家の宝刀であるドル決済の呪縛から逃れえることが理由の一つとして挙げられる。

ドルでの決済は遡れば最終的にNY連銀のドル預金を経由することになる。そこで、米国は、このドル決済を禁止するという強力な経済制裁手段を持っている。具体的にはNY連銀に口座を持つ金融機関に特定の制裁相手との取引を禁じるのだ。これをされると国際貿易網からはじき出されて産油国といえども一溜りもないことはイランやベネズエラの窮状を見るとよくわかる。キューバ国内にクラッシックカーしか走っていないのも同様の理由だ。米国に覇権争いを挑んでいる中国としてはのど元にナイスを突き付けられながら戦っているようなもので、それ故、人民元の国際化は悲願だったところに、デジタル人民元構想が出てきた。

具体的には、アフリカや一帯一路の中央アジア、またはラオスやミャンマーなどの周辺国と人民元で直接決済をする経済圏を作ろうとしている訳だ。それならば、デジタルにこだわらなくても今からでも人民元決済を始めればいい気もする。ところが、例えば人民元と円とを交換する場合、為替市場では人民元円という市場が立っている訳ではなく、ドル人民元とドル円という市場に分かれて存在する。従って人民元円という一見、米国と関係の無い取引においても米国を経由する必要が生じる訳だ。小職が為替ディーラーだった頃から、この点を打破しようと中国当局は、人民元円創設に異様にこだわっていたが、米国の同盟国に住んでいる我々にはその意図がなかなか理解できなかった。ところがトークン化されたデジタル人民元であれば、海外側がデジタル人民元のウォレットさえ持っていれば、米ドルを介さずに出来る訳だ。

まだ、デジタル人民元はテスト段階で、その後も、初めに国内決済、それから海外との決済という2段階で利用を拡大していく模様で、上記のように中国国外でウォレットが保有されるといった段階は相当先の話のような気もする。一方で、報道によればハイテクシティー雄安地区での人民元テストではスターバックスやマクドナルドも参加しているという。Bakktより一歩先にトークンでコーヒーを買える時代は中国ですでに始まっている。こう考えると日銀が遅れないように研究を加速させるのも理解できるかもしれない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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