暗号通貨の価格はCAPMで説明できるか?

2020-08-17 09:56[ 岩壷健太郎

岩壷教授の経済教室 暗号資産 仮想通貨

岩壷教授の経済教室 第8回

 株価を説明する最も有名な理論としてCAPM(Capital Asset Pricing Model、資本資産評価モデル)があります。CAPMはすべての投資家がリターンの平均と標準偏差をもとにポートフォリオ選択をするとか、すべての資産の期待リターンとリスク、相関係数について投資家が同じ予想をしているなどのいくつかの仮定のもとで、ある資産iの期待リターンE(Ri)が安全収益率Rfに、ベータβと市場全体のリスクプレミアム[E(Rm)-Rf]をかけたものを加えた値で表現されます。
E(Ri)=Rf+β [E(Rm)-Rf]
 ここで、ベータβ=Cov(Ri, Rm)/Var(Rm)であり、株価指数などで代表されるマーケットの変動に対する資産iの感応度を表しています。
 この理論によるとβが資産iのリターンを決める唯一のリスク(βリスクといいます)であり、マーケット動向を表す変数と相関が高い資産は平均的にリターンが高くなり、相関が低い資産はリターンが低くなるということが示されます。
 そこで、CAPMが暗号資産市場で成り立っているのかを調べてみることにしました。2019年6月末時点で時価総額トップ100に入る暗号資産100資産を分析対象として、2017年1月~2019年12月末までの日次リターンを計算しました。そして、暗号資産市場のマーケット動向を表す変数として、時価総額上位3位までの通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル)を日々の時価総額で加重平均した価格を使います。これを暗号資産市場指数ということにします。
 まず、各暗号資産の日次リターンを暗号資産市場指数の日次リターンに時系列回帰します。そこで得た暗号資産市場指数の係数が各暗号資産に対応するβになります。
 次に、各暗号資産の日次リターンの平均値を対応するβにクロスセクション回帰し、βの係数を推計します。βがプラスで、かつ定数項が0であればCAPMが満たされていることになりますが、ここでは暗号資産の価格の決定要因に興味があるので、βがプラスで有意であるか、つまり、暗号資産市場指数と各暗号資産の相関がその暗号資産のリターンを決める上で重要な役割を果たしているのかを検証することにします。
 時価総額トップ100のうち、2017年初に上場していた暗号資産は27、2017年7月始めは37、2018年初は60、2018年7月始めは76、2019年初は91、2019年7月始めは100と順次新しい暗号資産が時価総額トップ100に入ってきましたので、半年ごとにサンプル期間を分割し、古い暗号資産から順にダミー変数をふることで暗号資産を分類しました。
 推計の結果、2017年~2018年まではβの係数が有意ではなく、βとダミー変数の交差項も有意ではありませんでした。つまり、暗号資産市場の動向と相関が高い暗号資産ほどリターンが高いという傾向が見られず、CAPMは成立していませんでした。
 しかし、2019年になると、上場からの歴史が浅く、時価総額トップ100に後から入ってきた暗号資産には、暗号資産市場指数との連動性が高いほどリターンが高いという関係が見られ、CAPMと整合的な結果が得られました。
 バブルの生成や崩壊が見られた2017年~2018年とは異なり、2019年は市場が安定してきたため、市場動向と連動せずに急上昇・急落するような暗号通貨が少なくなったのかもしれません。つまり、暗号資産市場の成熟化がCAPMの成立を可能にした可能性があります。比較的新規の暗号資産で、かつビットコイン、イーサリアム、リップルとの連動性が高い資産のリターンが高いという実証結果はポートフォリオ選択のヒントになるのではないでしょうか。

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)

岩壷健太郎

神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。

アーカイブ

金融庁のホームページには以下の留意事項が掲載されています。
暗号資産交換業者登録一覧 
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf

  • 本一覧に記載した暗号資産は、取り扱う暗号資産交換業者に説明を求め、資金決済法上の定義を満たしていることが確認されたものにすぎません。
  • 本一覧に記載した暗号資産は、金融庁・財務局がその価値を保証したり、推奨するものではありません。暗号資産は、必ずしも裏付けとなる資産があるわけではなく、財産的価値を有すると認められた電子データに過ぎないことにご留意ください。
  • 暗号資産の取引を行う際には、以下の注意点にご留意ください。

暗号資産を利用する際の注意点
https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/04.pdf

  • 暗号資産は、日本円やドルなどのように国がその価値を保証している「法定通貨」ではありません。インターネット上でやりとりされる電子データです。
  • 暗号資産は、価格が変動することがあります。暗号資産の価格が急落し、損をする可能性があります。
  • 暗号資産交換業者(※)は金融庁・財務局への登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か金融庁・財務局のホームページで確認してください。
    (※)暗号資産と法定通貨の交換や、暗号資産同士の交換を行うサービスを提供する事業者、暗号資産の管理を行う事業者など
  • 暗号資産の取引を行う場合、事業者が金融庁・財務局から行政処分を受けているか(※)を含め、取引内容やリスク(価格変動リスク、サイバーセキュリティリスク等)について、利用しようとする事業者から説明を受け、十分に理解するようにしてください。
    (※)金融庁・財務局が行った行政処分については、こちらをご覧ください。 https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html
  • 暗号資産交換業者の提供するウォレットで暗号資産を管理する際に、パスワードを設定する場合には、IDと同じものや利用者の名前、電話番号、生年月日等の推測が容易なものを避けるほか、他のウェブサイトと同じID・パスワードの組合せを使用しないなどの対策を講じる必要があります。管理する暗号資産が盗まれるおそれがあります。
  • 暗号資産や詐欺的なコインに関する相談が増えています。暗号資産の持つ話題性を利用したり、暗号資産交換業に関する制度改正に便乗したりする詐欺や悪質商法にご注意ください。

取引にあたっての注意事項

  • 取引にあたり手数料が発生することがあります。手数料の詳細については、こちらをご確認ください。
  • 取引ではスプレッドが発生します。スプレッドとは売値(BID)と買値(ASK)の差のことで、レートの変動によって値幅が広がる場合、狭まる場合があります。
  • 暗号資産取引では価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。取引にあたっては、各種約款、契約締結前交付書面やお客さま向けの資料等をよくお読みになり、取引の内容を十分にご理解いただいた上で、ご自身の責任と判断において取引を行ってください。

暗号資産に関するリスクについて

  • 暗号資産は、日本円等の法定通貨とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
  • 暗号資産取引に使用する秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失うことがあります。
  • 暗号資産は、ブロックチェーンその他の記録の仕組みが破たんした場合には、その価値が失われることがあります。
  • 暗号資産の価格が変動することによって損失が発生することがあります。
  • 暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り、代価の弁済のために使用することができます。
  • 当社はお客様の資産を当社の資産とは分別して管理おりますが、当社が倒産した場合には、預託された資産を返還することができない可能性があります。
  • 当コンテンツは投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的としたものであり、投資に関する最終的な決定は、利用者ご自身の判断でなさるようお願いいたします。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社及び本情報提供者は一切の責任を負いません。

FXcoin 株式会社

  • 暗号資産交換業者:登録番号 関東財務局長 第 00019 号
  • 所属する認定資金決済事業者協会:一般社団法人 日本暗号資産取引業協会