マーケット情報

2018.10.19【リップルはターニングポイントを迎えたか?】

2018-10-19 19:23[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム リップル ビットコインキャッシュ ライトコイン



Review

テザー騒動・フィデリティ―参入

先週のBTC相場はテザー騒動で乱高下するも堅調な推移となった。トロン社との提携を噂されたバイドゥがブロックチェーン商品化に否定的な見解を示し、Financial Newsでバークレーズのトレーディングデスク立上げ中止が報じられると69万円台前半に値を下げるもSONYのブロックチェーン利用が伝えられると70万円台に値を戻し、Bitfinexの法定通貨の入金を停止により不安が広がっていたテザーが急落するとBTCへ逃避買いも入り75万円台まで急騰。同社から24時間以内に法定入金の再開が発表されるとBTCは値を下げるも、OKexがテザー以外のステーブルコインの取扱を発表し、大手運用会社フィデリティ―が仮想通貨への参入を発表すると71万円台で底堅さを見せた。その後、日本の自主規制団体が流出対策に乗り出すとの報道もあり73万円台に乗せるが上値の重い展開が続いている。

Outlook

クジラとイルカ

来週の底堅い推移を予想する。今週はテザー騒動で振らされる展開となったが、騒動前後で見るとBTC相場は4%程度水準を切り上げており、堅調な推移となっている。一方で、世界的な運用会社フィデリティ―が子会社を設立して取引プラットフォームやカストディー等の仮想通貨サービスに参入するとしたのに際しあまり反応を見せず、上値の重さを感じさせた。7月にブラックロックが検討を始めたという観測だけで71万円から84万円まで約18%上昇したのに対し、今回は1%程度。運用資産規模は世界最大のブラックロックの6.4兆ドル(2018年9月)に対し第5位のフィデリティ―は2.6兆ドル(同6月)と半分以下だが、今回は実際に始めるという話であり、上昇幅が少なすぎる印象だ。7月との違いを比べてみると米ETFが否認されたことがあるが、この3か月の間にETFに代わる様々な機関投資家向けのサービスは充実してきている。しかし、それでも上値が重いのは、この3か月の間に2回の大きな下げがあったせいで投資家心理が冷え込んでしまっている事が挙げられる。特に9月初のフラッシュクラッシュが与えた影響は大きい。これは必ずしもクジラと言われる大口投資家の動きに価格が左右することに嫌気をしている訳では無い。1社だけで運用額が仮想通貨市場全体の12倍のフィデリティ―が抱える投資家のほんの一部が入ってきただけで今あるクジラはイルカにすら見えなくなるかもしれない。

最良執行義務

では何故そうならないのか。それは今のままの市場では機関投資家の参入は難しいことを参加者が徐々に気付き始めたからだ。すなわち、フィデリティ―の顧客、例えば投信や生保、年金と言った「本物」の投資家の行動を例に取ろう。9月の相場の裏で何が起こっていたのかは不明だが、「本物」の投資家は市場の流動性を上回る売りでほんの1時間で1割近く相場を押し下げるような売り方は通常採らない。他人の大切な運用資金を預かっている彼らの多くは最良執行の義務があるからだ。売るならば、市場の流動性を加味して売り崩さない様に、出来るだけ高く売る義務がある。SECがなかなかETFの承認を下ろさない背景にはそうした思いがあるのではないか。どこまで規制を入れるべきかは慎重に議論すべきだが、今のままではいくらインフラを整備しても「本物」の投資家は入って来にくい。それを認識してか、仮想通貨市場では徐々に規制強化のニュースにポジティブに反応することが多くなっており、良い兆候と考える。

中国への集中

Forbesがホワイトハウスがリップル社と接触するのはマイニングの8割を中国に握られているBTCに対抗すべく、マイニングが無いXRPを支持していると報じ話題となった。先日、中国はそのマイナーを結集して他国の経済を傷つける能力と動機があるという論文が話題となったが、それは荒唐無稽としても、仮想通貨市場のリスクとして認識され始めている。また、イーサリアムの開発チームが中国が得意とするASIC(マイニング専用機器)によるマイニングを防ごうとする動きも同じ懸念に基づいていると推測される(記事ではそれでもETHのマイニングの多くを中国に握られているとしている)。CointelegraphのインタビューでSBIの北尾社長は「例えばビットコインの保有構造は7割が中国勢。しかもごく限られた人間の手にある。(中略)通貨の保有構造を変えようと考えて」いるとしたが、単なる勢力争いに見えるBTC ABCとBTC SVとの対立も、見方を変えると中国に集中しているマイニング構造を是正しようとする動きとも見えなくもない。米中貿易戦争でBitmain社のマイニング機器の対米輸出に27.6%の関税がかかる様になったと香港紙が報道したが、これによって更に中国のマイニングシェアが上がってしまうのか、それともトランプ大統領が意図するようにアメリカか他の国から新たなマイニング機器が出てシェアを奪い返すのかが注目される。そうした動きは少なからず仮想通貨の価格形成にも影響しよう。中国以外からの新たなマイニングプールの登場などはリスク低下で買い材料となるのではないか。

レンジ上抜け

BTC相場は底堅いが上値の重い展開が続いているが、既に三角持ち合いの上限に張り付いており、今週はテザー騒動による乱高下の後、73万円を3回トライして失速している。足元の市場の主なテーマであるインフラ整備・実用開始・規制強化の3つのうち、この3か月で見てもインフラ整備は驚くべきスピードで進んでおり、またXRPを皮切りに実用化も始まっている。現在開発中の様々なサービスも来年には多数花開き、ほんの数年の間に世の中ががらりと変わる可能性も秘めている。そうした中、相場の底抜けはやや考え難く、本格的な上昇はFATFの報告が出て規制の方向性が見えてくる来月以降と考えるが、来週辺りにはレジスタンスを上抜けするものと考える。

予想レンジ BTC 65万円~80万円

Altcoin


ETH
:延期されていたコンスタンティノープルのテストネットでローンチされ、開発者から11月内の本番環境での実装に自信が示されると、すぐさま大きなバグが発見され見通しは不透明となるも相場は底堅く推移。バグ自体はネガティブだがアップデートによるマイニング報酬減額が先送りされるという側面も影響したか。しかし、ここのところ続く創始者ヴィタリック・ブテリン氏とアンチ仮想通貨のルビーニ教授とのSNS上のツバ競り合いが公開討論にまで発展すると若干軟調に推移するも、テザー騒動でBTCが急騰するとETHも24000円近くまで急騰。Bitfinexによる入金再開発表により22000円台へ値を下げるも、元CFTC委員長ゲイリー・ゲンスナー氏が殆どのICOは有価証券とすると23000台に値を戻した。しかし、イーサリアムの共同創業者ジョセフ・ルービン氏率いるコンセンシスが資金提供しているシビルがICOに失敗、またBTC開発者やカルダノの創始者ホスキンソン氏が今年前半にICOで巨額のETHを調達したEOSを痛烈に批判すると上値の重い展開が続いている。9月のICO金額も今年最低を記録する中、過去のICOの売り圧力に上値の重い展開が続いている。ICOは有価証券との発言にポジティブに反応するように、市場は早期の規制強化とSTO(証券関連法の手続きを踏んだICO)へのシフトを模索しており若干明るさも見えてきているが、当面は上値の重い展開が続くものと思われる。

XRP:リップル社のチーフ・マーケット・ストラテジストのコリー・ジョンソン氏がホワイトハウスと定期的に議論していることを明かすも軟調な地合いを引き継ぎ上値の重い展開、米調査会社の1ドル以下の仮想通貨の1番人気はXRPとの報にようやく上昇に転じる展開。バークレーズのトレーディングデスク中止報道もあり44円付近に値を下げるもテザー騒動で急騰。BTCを始め他通貨が反落する中、XRPは堅調さを見せ、50円台に回復している。背景にはxViaでの国際送金が実行されたこともあるが、ホワイトハウスとの定期会合は中国のマイニング独占に危機感を抱いた政権側がXRPを支持しているのではという見方や10月のFSB報告書でXRPによる海外送金にお墨付きが与えられたとの見方もあった模様。特に後者に関しては10月17日トピック:FSB報告書はFOMC議事録?の文末で触れているが、世界の規制機関の総本山にSWIFT送金に替わる選択肢と認められた事実は市場の反応よりも遥かに重い。XRP相場のターニングポイントとなる可能性も秘めていよう。

BCH:分裂騒動の影響でGEMINIはBCHの上場を延期したが、BTC SVと関係が深いとされるSBIが15日に分裂の有無が明らかになると発表していた事もあり5万円近辺で比較的安定した推移。テザー騒動でBTCに連れて行って来いの展開となる。15日に中間派のBTC UnlimitedがBTC ABC提案のアップデートに対応するとしたことで5万円台を回復するも、対立するBTC SVも互換性のない新しいバージョンを発表し、騒動の先行きが不透明な状況となった。16日に米中貿易戦争の影響でABCを支持するBitmain社が販売しているマイニング機器に8月から27.6%の関税が課されていると香港の新聞が報じたが、こうしたことも相場の重しになっているか。足元ではトルコやアルゼンチンでSMSによるBCH送金が可能となったとの報に5万円近辺まで値を戻すが失速。やはり騒動の行方が判明するまでは上値の重い展開が続こう。

LTC:13日に誕生7周年を迎えたが軟調な展開。BCHは延期されたがLTCは予定通り16日からGEMINIでの取引が開始されると発表されるも6000円手前で上値の重い展開。テザー騒動の乱高下で6200円近辺まで値を上げた後、6000円を割り込むが16日の上場への期待もあり6000円台を回復した。しかし取引が開始されるとSell on the factで売りが優勢となり、再び6000円手前での取引となっている。

Calendar

10月21-24日 Money20/20(ラスベガス)FinTech・決済系のイベント CITI・BOA・Wells Fago・AMEX・VISA・Master・IBM・Googleなど錚々たるスポンサー。仮想通貨業界からリップル創業者クリス・ラーセン、ステラ創始者ジェド・マッカレブなどが登壇。
10月22-24日 CRYPTO INVEST SUMMIT(ラスベガス)Apple共同創業者ウォズニアック氏、著名投資家ティム・ドレイパー氏などが登壇
10月22-25日 SWIFT主宰カンファレンスSibos (シドニー)にリップル社が参加
10月26日 CME BTC先物最終取引日
BTC:ビットコイン ETH:イーサリアム XRP:リップル BCH:ビットコインキャッシュ LTC:ライトコイン

FXcoin Weekly Report 2018.10.19.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ