リップルウィークリー リップル本社吉川シニアディレクターにインタビュー
2020-08-19 16:00[ 大西知生 ]
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リップル本社 吉川シニアディレクターにインタビュー (後編)
今週のリップルウィークリーレポートでは、サンフランシスコにあるRippleの本社の吉川氏(以下、敬称略)へのインタビューの後編を特集します。今回はRipple社が注力していること、吉川氏による日本のリップルのファンに向けたメッセージもあります。
リップル本社 吉川シニアディレクターにインタビュー (前編)
大西:ステーブルコインや中央銀行デジタル通貨がでてくると、暗号資産が使われなくなるという意見がありますが、それについてどう思われますか?

吉川:暗号資産にはいろんなタイプのものがありますが、XRPの国際決済におけるブリッジアセットとしての役割はステーブルコインやCBDCとは競合するものではなく、逆に相互補完するものだと考えています。様々なステーブルコインやCBDCを、独立した暗号資産であるXRPがブリッジすることによって流動性問題に対応し、シナジーを生むものだと考えています。
大西:ODLについて説明してください。
吉川:ODLはオンデマンド流動性(On-Demand Liquidity)の略で、RippleNet上で流動性をオンデマンドで調達するための機能です。これまで、金融機関が外国に送金をする際には、現地の金融機関にノストロ口座を用意して、現地通貨で準備資金(プリファンディング)を入れておく必要がありました。このプロセスは資本効率的にも為替リスク的にもコストが高いですし、またコンプライアンスやオペレーションの負担も大きいです。
これは特に中小金融機関にとっての最も大きなペインポイントの一つであると言われています。暗号資産を活用することでノストロ口座へのプリファンディングが必要なくなり、完全にオンデマンドで通貨を変換することができるようになります。具体的には、送金側の通貨がその国の取引所でXRPに変換され、XRPが送付先の国の取引所のウォレットに瞬時に移動、そこから現地通貨に変換され、最終受取手に届けられます。今までのプリファンディングモデルがバッチ型だとすると、ODLによって完全にオンデマンド型に移行できることになります。
大西:Ripple社が今もっとも注力していることは何ですか?
吉川:やはり何と言ってもODLの普及ですね。ODLが新規市場でローンチするためには、現地規制当局との話し合いや、パートナーとの連携、市場における流動性など、様々な必要要件をクリアする必要があります。全く新しい仕組みなので障壁も多いですが、一つ一つクリアして前進しています。特に暗号資産に対する規制当局の理解のあるマーケットを優先して進めています。
また、Xpringを通して、XRPやInterledgerの技術を活用した新たなユースケースの創出を支援することにも大きく注力しています。是非今後、より多くの日本の開発者に、XRPやInterledgerのことを知ってもらって活用してもらいたいと思っています。実際、最近日本のXRPコミュニティの中で、XRP Ledgerを活用してサービス開発をするグループができるなどの動きもあり注目しています。
大西:日本にはリップラーと呼ばれる、熱狂的なリップルのファンが多くいます。どうしてリップルは日本人に人気があるのでしょうか?
吉川:大変ありがたいですね。Rippleは創業当初から、解決すべき課題を明確にして、それに対する「ビジョン」を広く発信し、ブレずに、愚直に課題解決に邁進してきたことが一つの理由かなと思います。また、XRPを送金したことがある人の多くが、その瞬時でエレガントな送金体験に大きな感動を覚えますが(私もその一人です)、やはり根源的にXRPが使い勝手が良く、優れた暗号資産であるということが人を惹きつける大きな理由かなと思います。まだXRPの送金をしたことがない人はぜひ試してみてください!
大西:日本のリップルのファンの皆様にメッセージをお願いします。
吉川:日本のリップラーコミュニティは団結心があり、クリエイティブで才能がある人が多いなといつも感心しています。昨年コミュニティによって開催されたXRP Community Meetupは、コミュニティの皆さんが一から手作りで作り上げたイベントで、何から何まで素晴らしく、ワクワクさせる内容で、Rippleから参加したメンバーは皆一様に感激していました。私も日本人として誇らしく思いました。
また、一般的に、リップラーの皆さんは知的好奇心が旺盛で、勉強家で、コミュニティの中でもお互いの知識や知見を共有しながら高め合っている様子が伺えます。仕事として国際送金に携わっていないのにこんなに国際送金について詳しい人達って、他の国ではいないですよね(笑)。皆さんTwitterなどでフツーに、ノストロだのコリドーだのリクイディティなど業界用語で語っていますからね。それだけ関心が高いということで、私個人としてもとても嬉しいです。アートやデザインの才能のあるメンバーが多いことも日本のリップラーコミュニティの特徴ですね。
また近い将来ミートアップのような形で皆さんにお会いできるのが楽しみです。
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20200819-リップルウィークリーレポート.pdf
インタビュー前編はこちら
大西知生 (おおにしともお)
FXcoin株式会社 代表取締役社長
慶應義塾⼤学経済学部 東京銀⾏(本部、フランクフルト支店)、ドレスナー銀⾏、JP モルガン銀⾏、モルガンスタンレー証券、ドイツ銀⾏グループを経て、2018 年1 ⽉より現職。2017 年まで東京外国為替市場委員会副議⻑、同Code of Conduct ⼩委員会委員⻑。 「J-MONEY」誌において2017 年テクニカル分析ディーラー・ランキング第1 位。 著書に「FX 取引の王道 − 外貨資産運⽤のセオリー」(⽇本経済出版社) 経済学博士