なぜビットコインが再び注目されているのか? ~ビットコイン価格の評価方法~

2020-09-16 10:56[ 岩壷健太郎

岩壷教授の経済教室 暗号資産 仮想通貨

岩壷教授の経済教室 第10回

ビットコインに再び注目が集まっています。今回は暗号資産(仮想通貨)業界で話題になったGrayscale社のレポートを紹介します。このレポートではなぜビットコインが最近、重要になってきているのかという問いかけに始まり、ビットコインの価格をどのように評価したらいいのかを解説しています。
ビットコインが再び注目を集めている理由として、グローバル金融危機以来、進められた米国中央銀行の金融緩和によって購入された国債の売却が十分に進まぬうちに、今回のコロナ危機を迎えることになり、再び中銀バランスシートが膨張していることがあります。市場で吸収しきれないマネーは株式や金などに見られる資産インフレを招いています。このような果てしない貨幣供給に対して投資家たちは中央集権的に管理されていない資産(つまりビットコインや他の暗号資産)に価値の保存手段としての役割を期待していると指摘しています。
キャッシュフローのない資産であるビットコインの価格評価は容易ではないですが、需要と供給の両面からビットコイン価格を評価することはできなくはありません。以下ではレポートで紹介された評価方法のなかで有用なものを選択して紹介します。

(1)ビットコイン取引所の供給量

評価方法の一つは、取引所に保有されているビットコインの量を測定して、供給可能量を推計することです(図1)。取引所の供給量が多ければBTC価格は下落ぎみにあり、供給量が少なければ上昇ぎみになる傾向があります。今年7月には、取引所残高が2019年5月以来の低さとなり、それに伴って価格も急騰しました。

図1 ビットコイン取引所の供給量

(2)デイリーアクティブアドレス(DAA)

デイリーアクティブアドレス(DAA)は、ビットコイン取引に参加したアドレスの総数を示す指標です(図2)。DAA指標は、すべてのユーザーを網羅しているわけではありませんが、そこから市場の成長をつかむことができます。アクティビティが増加すれば価格が上昇する傾向があります。DAA指標は現在、2017年以降で最も高いレベルにあります。

図2 デイリーアクティブアドレス


(3)クジラ指数

クジラ指数とは、1,000ビットコイン(2020年7月30日時点で約1,100万ドル)以上のビットコインの残高を持つビットコインアドレスの数をカウントしています。現在、史上最高値付近で推移しています。ユーザーは複数のアドレスを持つことができるので、1人の個人が複数のアドレスを所有することができます。図3はビットコインを大量に保有するアドレスの数が増加していることを示しています。

図3 クジラ指数

(4)ビットコインの生産価値

ビットコインネットワークの電力消費量から、ビットコイン1個あたりの生産コストを計算することができます。マイニングとは電気をビットコインに変換するプロセスです。ビットコイン価格は生産コストを中心に変動する傾向があるため、この指標を拡張してビットコインの価格の下限を示すことができます(図4)。価格と生産コストの関係は、ビットコインの価値分析の重要なインプットであるマイナーの収益性についての手がかりも与えてくれます。ビットコインの価格が上昇すると、収益性は上昇する傾向にあり、それによってマイナーはより多くのエネルギーを消費するようになります。逆に、収益性が低下すると、非効率的なマイナーはビットコインを売却したり、マイニング装置を停止したりすることを余儀なくされます。これにより、効率的で資本力の高いマイナーは、売り手としての役割を担うよりも、価格上昇を期待してビットコインを蓄積するかもしれません。


図4 ビットコインの生産価値

(5)マイナーの収益比率

ビットコインの価格と生産コストの比率を取ることで、価格サイクルにおける価格の下限を知る手がかりが得られます(図5)。収益性が低い期間やマイナスの期間が長く続くと、最も効率的なマイナーに利益がもたらされ、不採算業者を市場から退出させることで市場構造が改善されます。緑色の部分は、採算が取れない可能性のあるマイニングの期間を示しており、この時期は良い買い場となっています。

図5 マイナーの収益性比率(ビットコイン価格/生産コスト)

参考文献
Grayscale Research, 2020. “Valuing Bitcoin” Grayscale.

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)

岩壷健太郎

神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。

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