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FATF総会は単なる先延ばしでは無かった

2018-10-23 18:31[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

10月17-19日FATF総会がパリで開催された。2018.10.12Weekly Reportでお伝えした通り、7月のG20の声明で「我々は、FATF基準の実施に関する我々の3月のコミットメントを再確認し、2018年10月に、この基準がどのように暗号資産に適用されるか明確にすることをFATFに求める。」とされた。これを受け11月29日のブエノスアイレスG20に向けて何らかのアクションが採られること市場では期待されたが、ロイター社の報道によればマーシャル・ビリングスリー会長が「(2019年)6月までにはFATFとして、諸基準と、各国の施行に向けてFATFが期待するプロセスに関し、追加の指示を出す予定だ」とし、市場の失望を買った。フィデリティ―の参入やBakkt開始日の発表などのポジティブな材料が続いたのにも関わらず、BTC相場の上値が重い一因はこうした規制面での進捗が遅れていることにあると考える。それでは、総会では何も出てこなかったのだろうか。

実は、総会のOutcomesおよびRegulation of Virtual assetsという二つの文章が発表されており、従来の2015年の基準では交換業にだけ求められていた登録・免許制を、ウォレット提供者とICOに係るサービス提供者にも適用する旨、定められている。また今後は12か月毎に進捗状況をレビューすることも定められた。すなわち、仮想通貨取引におけるAML/CFT(アンチマネーロンダリング・テロ資金供与)に関するチェックポイントを交換所における法定通貨への交換時点だけではなく、ウォレット間の資金移動などにまで拡大しようとする狙いと考えられる。個人間で直接取引をするケースも想定されるからなのかもしれない。そしてこのRegulation of Virtual assetsを以って、G20で課された基準適用の明確化、すなわちどこまでFATF基準を適用するのかという回答とした形のようだ。そしてこの方針に則って来年6月までに更に詳細なルールが発表されるという道筋と考えられる。果たしてどのようにウォレット提供者にKYCルールを適用するのか、ICOに係るサービス提供者とはどこまでを対象にするのか等、この短い文章では分からないが、一定の進捗は見られたと評価することは出来よう。

結局、詳細は来年の大阪G20に持ち越され、米国財務省出身のビリングスリー会長とG20議長国である本邦金融庁にバトンが渡された格好だが、今回の文章を受けたブエノスアイレスG20が無風と考えるのは時期尚早の様だ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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