マーケット情報

自主規制ルールで何が変わる?

2018-10-25 20:54[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

昨日、金融庁より自主規制団体として認定された日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)から、早速、自主規制ルールが発表、本日より適用される事となった。団体の認定自体は、8月の申請時点でほぼ確実視されていたが、自主規制ルールも発表された格好。因みに金融庁の認可・認定自主規制団体とは他に証券取引を規制する日本証券業協会や為替証拠金取引を規制する金融先物取引業協会などがありそれぞれ自主規制を作成している。法令や政省令では追い付かない細かい運用ルールを定めているが、協会には会員に対する調査権限や業務停止や過怠金など処罰する権限を持ち、また会員にならなければ金融庁の登録を得ることも難しくなることから、自主規制ルール≒法令に近い効力を持っていると考えた方が良さそうだ。

今回の自主規制の多くは交換業者の内部管理に係るもので、内容の一部は9月の第6回仮想通貨交換業研究会で公表された内容であるが、利用者にとって影響がありそうな内容を紹介したい。

・取扱通貨選定手続きが厳格化。協会への事前届出が必要となり、匿名性の高い通貨は禁止
・宣伝・広告ルールが厳格化。勧誘は登録した協会員の営業員のみ認められ、外部のもの、例えばアフィリエイターなどが勧誘を行うことは禁止。協会員はアフィリエイターによる勧誘を助長するような過度なインセンティブを与えてはならない。
・SNSや口コミサイトへの情報掲載に関し、会員の許可なく広告に該当する恐れのある発言や情報掲載を行わない様に役職員を教育する。広告などを目的に第三者にSNSへの発言、口コミサイトへの情報掲載を依頼してはならない。
・顧客から預かった仮想通貨のうちホットウォレット上に保管できる割合は20%以下。万が一、盗難にあっても補償できるように、その金額と同等以上の銀行預金ないし国債などの保有義務付け。
・以下のような不適正取引を行った利用者を審査し発見した場合、当該利用者に注意喚起し、改善が見られない場合は取引停止その他の措置を行う。
「自ら取得したことのない仮想通貨に対して、実際に利益を得たかのように喧伝すること」
「利用者が同一の価格で同時刻に売却と買付けを行うこと」
「他者と通謀して、同一の価格で売り買いを行うこと」
「大量の取引を発注することによって相対する注文を誘った上 で、約定する前に速やかに注文を取り消すこと」
「売却価格を吊り上げるために故意に買付けを行った上で売り抜けること」
「大量に特定の仮想通貨を保有する利用者が一斉に売却するため先に売却するほうがよいなどと根拠のない噂を故意に発信し、情報の拡散を図ること」
・証拠金取引のレバレッジ倍率は、当面の間、4倍以下。
・交換所の新規取り扱い通貨等に関する公開されていない情報を「仮想通貨関連情報」とし、厳格な情報管理と情報を利用した勧誘や自己売買などを禁止。
・各決算期末の決算および四半期毎の財務健全指数の公表。


トピック:ETFよりBakktと言われる理由でも述べたが、他の市場では気の遠くなるような罰金や多くの逮捕者を出した結果、不適正行為を耳にすることもあまり無くなったが、仮想通貨市場では、先ほど挙げた不適正取引の例がルール違反だという認識がない参加者も多いのではないだろうか。日本証券業協会や金融先物取引業協会は会員である証券会社や為替証拠金会社などが市場で不適正行為を行った場合、会員に直接罰則を与えることが可能だが、仮想通貨交換業協会の場合、市場参加者が会員である交換所の利用者であるため直接処罰することは難しい。それでも利用者を取引停止するように会員に働きかけることで、仮想通貨市場に一定のルールが適用され、ひいては市場の信頼性回復に向けた第一歩になることを期待したい。

なお、今回発表された19項目に渡る自主規制の規則・ガイドラインにはナンバリングがされており、3から始まり20までは連番になっているのだが、21-23が抜けて24で終わっている。この抜けた21-23が何の規制だったか知る由はないが、前述の第6回研究会で検討課題とされていた協会のICOの事前審査は今回盛り込まれていない。次回第8回研究会でICOに係る規制が議題とされる公算が高いことが影響しているのかもしれない。研究会開催後、何らかのアクションが採られる可能性もあるので注目したい。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ