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2018.10.26【自主規制が導入、不適正行為が禁止される】

2018-10-26 21:43[ 松田康生

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Review

日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)認定団体へ

今週のBTC相場は概ね72万円を挟んでほぼ1万円のレンジでの横ばい推移、底堅いが上値の重い展開となった。仮想通貨ヘッジファンドCEOでCNBC解説者ブライアン・ケリーが2019年第Q1に機関投資家の参入が本格化するとし、著名アナリスト、トム・リー氏が年内2万ドルもあり得ると強気のコメント。更にBakktの開始がCFTC承認を条件に12月12日と正式発表され、大手交換所Binanceにテマセクが出資するといった大きめのニュースもあり底堅く推移するも72万円台で上値を重くする展開が続く。SECがCBOE分のETF関係者との面談メモを公表、米交換所コインベースのカストディーがNY州から認可を受け、金融庁がJVCEAを自主規制団体として認定したとのニュースにようやく72万円台半ばに乗せた。NY株や日本株が急落を見せると71万円台前半まで値を下げたが、中国株の切り返しや来週にもBakktが承認されるとの報道もあり値を戻している。

Outlook

投資家が求める規制とは

来週の底堅い推移を予想する。先週はレンジ上抜けを予想したが引き続きレンジ内での底堅く上値の重い展開が続いている。予想外だったのは、FATF総会後のマーシャル・ビリングズリー会長の記者会見で「来年6月までにはFATFとして、諸基準と、各国の施行に向けてFATFが期待するプロセスに関し、追加の指示を出す予定だ」とし、11月までに何らかのアクションがあると思っていた市場は肩透かしに会った形だ。しかし、その後の発表を見てみると、既に今回の会合で、仮想通貨の交換業者だけでなく、ウォレット提供業者やICOに係る金融サービス提供業者も登録・免許制にする方向性が示され、一歩前進したと言える。おそらく11月末のG20に諮られるものと思われるが、最終的な決着は日本が議長を務める大阪G20でなされる可能性もある。このFATFはAML/CFT(アンチマネーロンダリング・テロ資金供与)対策を担っているが、因みに仮想通貨に対する規制と一言で言っても、全部でどういったものがある、もしくは必要なのであろうか。これを考えることは、小職が度々申し上げている市場の信頼を取り戻すには何が必要なのかを考える事とほぼ同義で、言い換えると仮想通貨市場を懐疑的と見ている投資家を呼び込む、ないしは、アセットの一つとして社会的に認知されるにはどこを直せばいいのかという事に繋がってくる。

何を守るべきか

どのような規制すなわちルール作りが必要なのかを考えるとき、守るべき利益は何かと言い換えると分かり易い。差しあたり小職なりに思いつくのが、①金融システムの安定②AML/CFT③利用者保護④サイバーセキュリティー(犯罪防止)などだ。仮想通貨はインターネット上で国境を越えて取引されるため、いずれも国際的な取組が必要だろう。①はFSBで今のところ金融システムの脅威でないとして対応不要とされた。②はまさに来年6月に向けて議論が進んでいる。③の利用者保護に関して、今週いくつか動きがあった。利用者保護の面で国際的な取組が必要なものとして市場の価格形成における不正防止とICOなどが挙げられる。もちろん説明責任などそれ以外にも重要なものがあるが、これはFATFより交換所を登録制とするように求められており、その下で各国が規制を導入していく枠組みが作られている。また色々と問題が指摘されるICOに関しては、何らかの規制が入るまでは認められない国が多い。こうした中、市場での価格形成に関して日米で大きな動きがあった。

不適正行為の禁止

トピック:自主規制で何が変わる?で申し上げたように、今回の自主規制で風説の流布や仮装売買、なれ合い売買、見せ玉、スプーフィングなどを不適正取引とし、交換所に利用者を監視させた上で、違反する場合は注意ないし取引停止にすると定められた。また通貨の取扱開始やその他の重要情報を株におけるインサイダー取引に準ずる厳格な取扱を求めている。協会員が市場参加者となる日証協や金融取引業協会などと異なり、協会が直接利用者を罰することは出来ないが、日本の仮想通貨市場に不正行為の禁止が持ち込まれた画期的な一歩だ。一方アメリカではCFTCが仮想通貨をコモディティーとして取締りに前向きになっていますが、Bakktの登場は実質的に現物市場にCFTCの厳しい監視の目が入ることを意味している(トピック:ETFよりBakktとされる理由ご参照)。

レンジ上抜け

この様に市場ではあまり意識されてはいないが各規制面で徐々にではあるが進捗が見られており、来年は多くの面でのルール作りが加速していくものと思われる。また、その進捗に伴い、投資家の猜疑心が払しょくされ、社会に受け容れられていくものと考える。その一歩を踏み出したという認識が市場参加者に浸透されるにつけ、上値のレジスタンスを抜けていくものと考える。ただ、実は上記の中で最も遅れているのは犯罪防止面での対策・規制であり、もちろん盗まれる側のサイバーセキュリティー対策が重要であることは言うまでもないが、きちんと犯人を捕まえる国際的な努力が求められている。

予想レンジ BTC 65万円~80万円

Altcoin

ETH:テストネットでローンチされ、すぐさま大きなバグが発見されていたコンスタンティノープルのアップデートが来年1月に延期が発表されると、バグの発見時と同様に若干買われる展開に。23000円台で上値を重くするとETH由来の目立った材料がない中、BTCに連れて上下する展開。大手投資顧問deVere CEOが次の10年でETHとXRPがBTCのドミナンツを上回るとしたこともあり、若干値を戻している。信用問題で揺れるテザーに替わるステーブルコインの競争が注目を集めているが、今名乗りを上げているTrueUSD(TUSD)、Circle Coin(USDC)、Gemini Dollar(GUSD)、Paxos(PAX)いずれもイーサリアムベースでそのブロックチェーンを使用している。イーサリアムは本来そうした派生したコインを運営するガス代としての利用が期待されたものだが、その便利さからICOの調達ツールとなり、結局現在の上値を重くしている。その売り圧力は一服したとされているが、新規のICOが振るわない中、新規の買い圧力不足は否めない。当面上値の重い展開が続こうが、次世代のステーブルコインの流通が爆発的に増加すればETHの買い材料と意識される可能性があり、その将来性には日が差し始めていると考える。

XRP:投資メディアInvesting Havenの来年の仮想通貨5大予想のひとつでXRPの大躍進があったこともあり堅調に推移したが、リップル社が出展することで注目されたSWIFT主宰のカンファレンスSibosでSWIFTとMicrosoftが提携しクラウドを用いた新たな送金システムの実証実験開始を発表、思わぬライバル登場に上値の重い展開となった。その後、XRP基軸の交換所の公開に加え、米コインベースのカストディーサービスがNY州の認可を受けたという発表の中で、同交換所での取り扱いは無いものの、カストディーではXRPが追加されていたことを好感し52円台で上昇した。上記の次の10年でETHとXRPがBTCのドミナンツを上回るとの発言もあり堅調に推移していたが、リップル社の第3四半期決算で180億円のXRP売却益を計上していたことが伝わると、ICO類似行為で証券論争への懸念も浮上し軟調に推移した。SWIFTの動きは、分散台帳に対抗しクラウドでコストダウンを図るものと思われるが、xRapidで一歩リードしているリップル社への対抗としては1周遅れの感もあるが、こうした証券論争を蒸し返す動きに拘泥していると足をすくわれかねない。いくらXRPはリップル社と独立したものと言っても、その売却益を毎期100億円単位で出していれば、仮に証券化論争から逃れても何らかの規制がかかることは避けられない気がしている。

BCH:堅調なBTCに連れ50000円台を回復していたが、元自称サトシ・ナカモトのクレイグ・ライト氏率いるSVPool(Satoshi Version Pool)がマイナーを募集し、またCoingeek主宰のマイナー・チョイス・カンファレンスが11月2日に開かれると伝わると劣勢のBitcoin SV側が徹底抗戦の構えであるとの見方から上値を重くする展開。48000円近辺まで値を下げている。引き続き分裂騒動の行方が不透明で、当面上値が重い展開が続こう。

LTC:LTC独自の材料に乏しい中、BTCに連動しつつも上値の重い展開。Money20/20に登壇したLTC創始者チャーリー・リーがLTC設立の経緯を語るも、話の内容は匿名通貨がメインでLTC買いに繋がる材料とはならず、軟調に推移した。Wirex Debit CardがBTC、ETH、XRP、LTCに対応すると発表されると値を上げる局面もあったが、上値の重い展開が続いている。需給の問題はあるものの、アプリの開発や実用面で話題に欠かないETHやXRPに対し、埋没しつつある印象は拭えず、エポックメイキングな材料が欲しいところ。

Calendar

10月30日 SBIホールディング決算発表 北尾氏の会見に注目
10月31-2日 World Crypto Conference(ラスベガス) BTC基金のブロック・ピアース、ボビー・リー、同基金創設者チャーリー・シュレム、大富豪ティム・ドレーパー、LTC創始者チャーリー・リー等錚々たるメンバーが出席予定
11月2日 Coingeek BCH Miner Summit BCH分裂騒動の行方を占う上で重要か


FXcoin Weekly Report 2018.10.26.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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