マーケット情報

2018.11.01【三角持ち合いの出口を探る】

2018-11-01 17:08[ 松田康生

Monthly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム リップル ビットコインキャッシュ ライトコイン



Review

自主規制ルールが発表される

10月のBTC相場は上値が重いも底堅い展開が続いた。デビット・スウェンセン率いるイェール大に続きハーバード、MIT等も仮想通貨に投資するなど好材料が続くも75万円台で上値の重い展開が続くと、IMFが暗号資産の成長をリスク要因としたことや世界同時株安もあり68万円台へ急落。しかし、この水準で底堅さを見せると、Bitfinexの法定通貨の入金停止からテザーへの不安が高まると逃避先としてBTCが75万円台まで急騰。失速後も資産運用大手フィデリティ―の参入やBakktの12月開始、テマセック傘下のVCによるBinanceへの出資と好材料が続き底堅く推移するも上値の重い展開。FATFが来年6月までに方向性を示すなど、規制巡る議論が遅延していることも一因か。そうした中、日本仮想通貨交換業協会が認可団体となり、自主規制ルール不正行為の取締りを打ち出したことは仮想通貨市場の信頼回復への大きな一歩として注目される。

Outlook

レンジを上抜けなかった理由

先月は上値が重く底値が堅い理由として、機関投資家参入に向けてのインフラ整備が進み70万円台のサポートが効いているのに対し、法規制が進まず市場の信頼性が回復しない事から下降トレンドのレジスタンスが効いて上値が重いと申し上げた。そして3つ目のテーマとして浮上した実用性面での進展が進めばレンジの上抜けがあり得るとした。結果は、未だに相場は三角持ち合いから抜け出していない。実用面ではxRapidやMoneyTapのリリースは既に市場は織り込んでおりSell on the Factの引き金になってしまった模様だ。しかし、送金面での銀行のxRapid使用が期待されるし、SBIの決算発表で示されたリップルとR3の提携はさらに大きな意味を持つ。単純な送金では競争の激化が予想されるが、R3が得意とする信用状や船荷証券という取消が効かない書類の電子化はブロックチェーン技術でしか担い得ないもので、もちろん信用状規則や通関など課題は残るがLC決済にXRPが使用されることとなれば、商社の貿易担当者は泣いて喜ぶだろう。すなわち一気に普及が進む可能性がある。時間はかかるがそのうちXRP建てのインボイスなどというものも出現するかもしれない。機関投資家の参入という面で見ると、イェール大を始め米有名大学が仮想通貨への投資を開始し、大手運用会社フィデリティ―が参入を発表、CFTCの承認を条件とするもBakktの開始日が決まるなど相変わらず着々と進んでいる。最後の規制面でFATF総会後の会見で詳細な基準作成は来年6月とされ失望を呼んだことが相場が上げ渋った一因ではないかと考えている。しかし、今回の会合で交換所だけでなくウォレット提供者やICOに関するサービス提供者にも登録を義務付け違法な取引を水際で防ぐ取り込みが見られている。注目すべきは日本の自主規制ルールの施行で、仮想通貨市場に初めて不適正取引の防止が導入された。Bakktの導入も実質的に現物取引市場にCFTCの厳しい監視の目が入るという側面が大きいと考える。

三角持ち合いのピークまであと2週間

現在の三角持ち合いのピークはレジスタンスの引き方やサポートの水準によって異なるが、仮にサポートを70万円とすると11月半ばには上か下かにブレークすることとなる。先月末にモルガンスタンレーが発表したレポートで、仮想通貨を新たな機関投資家向け資産クラスと位置付ける一方で、その参入障壁として①規制の不整備②カストディーが不十分③大手投資家の不在を挙げている。②のカストディーサービスは急ピッチで整備が進んでいるし、③ではイエール大学やフィデリティ―も参入を表明している。残る①の規制面での進捗についても一歩ずつ進んでおり、上値ブレークは近いと考える。

予想レンジ:65万円~85万円


Topic

(トピック1)11月のアノマリー

下図は10月2日にご紹介したBTC相場の季節性を表したもの。青の月が上昇、赤の月が下落、各月の上の勝敗欄が上昇と下落の月数を示している。先月の段階で10月は底堅く、レジスタンスを上抜けすると思うが、本格的な回復は11月以降とした根拠のひとつで、直近8年間のうち7回上昇、下落はしたのは2011年の-8.6%の1回で、翌12月には43.1%上昇している。11月12月の2か月で見ても、下落したのは2014年のみ。アノマリーと因果関係とは別なので全幅の信頼は置けないが、11月の相場に挑むにあたって覚えておいた方がいい数字だろう。

(トピック2)BTCと相関係数

10月11日付Special ReportでBTC相場と中国株との相関が上昇しているとご紹介したが、10月31日時点での相関係数(標本数:20)をご紹介すると以下の通り。アジア株との正の相関はまだ保っているが、大分下がってきている。前回ご紹介した通りBTCと中国株でさえ正の相関と逆相関を繰り返すなど非常に不安定だ。何がそうさせているかの分析は別の機会に譲るとして、この標本数を100、すなわち直近100営業日の株との相関を下段に示した。これを見ると0.2を上回るものすら無くなってしまう。相関係数が低いということは分散効果が高く、ポートフォリオのリスク低減効果が高いことを示している。機関投資家が仮想通貨に興味を持つ所以であるし、またBTCと相関の強いアルトコインにはあまり興味を示さない理由の一つとも言えよう。


Altcoin

ETH:BitmexのICOに絡む売り圧力は終了間近とレポートし一旦は下落圧力が一服した様に見えたが、新規のICO低迷を極める中、新規の買いが入り難く上値の重い展開。そうした中、米公聴会で証言が予定されるルビーニNY大教授が仮想通貨業界で開発者が一部に偏っている状況を指し、イーサリアムの創始者ヴィタリック・ブテリン氏は一生独裁者だとツィートすると両者間での議論がヒートアップ、挑発に乗ってブテリン氏が保有資産の一部を公開してしまうなど、やや子供じみたやり取りに若干嫌気された。世界同時株安に連れ大きく値を下げた後もテザー騒動後のBTCの回復にはついて行けず22000円近辺での取引が続いている。11月に予定されていた次回アップデート・コンスタンティノープルはテストネットでのローンチが1週間遅れ、更にテストで複数のバグが発見された末に本番環境への適用は来年1月に延期されたが、相場は反応薄で、むしろ延期を歓迎している様な値動きも見られたが、今回のアップデートでマイニング報酬が減額されることが影響している可能性がある。一方でテザーへの不安もあり新たなステーブルコインへの需要が高まっているが、中でも注目を集めているNY州の認可を得たジェミニドル(GUSD)パクソス(PAX)、GSなどが出資するサークル社が発行するUSDコイン、複数の信託銀行にUSDを預託しているTrueUSD(TUSD)はいずれもイーサリアムのプラットフォームを利用しており、本格的にこれらのステーブルコインが世界を席巻する様になれば、ガス代としてのETH需要も見込める筈。ICOによる巨額の先食い需要と比べれば微々たるものかもしれないが、本来のETHの需要はこうあるべきで、市場の目がそうした将来的なETH需要に向けられれば底堅さを増す可能性がある。

XRP:月初の注目イベントSwellの冒頭のクリントン元大統領に続きガーリングハウスCEOがxRapidの商品化と先行使用例を発表、すでに織り込まれたこともあり、Sell on the Fact気味に軟調な推移を続けた。元SEC顧問弁護士がXRPは証券でないとし、同CEOのXRPは非中央集権的というコメント、更に国内での決済ツールMoneyTapのリリースなどもあり一旦は下げ止まりを見せるも、その後失速。世界同時株安による仮想通貨全面安の中、50円を大きく割り込んだ。しかし、各国の金融規制機関の上部組織であるFSBの報告書の中で国際送金において暗号資産が伝統的なコルレス決済の代替として選択肢となり得るとされ、これは正にxRapidが実現しようとする動きであり、またリップル社がホワイトハウスと接触を持っているとの報道を受け、Forbes社はBTCのマイナーが中国に集中していることを嫌ったホワイトハウスがXRPに肩入れしていると伝えた。これらの動きはXRPが国際社会および米国政府からお墨付きを得た動きとも言え、相場はじりじり戻り始めた。更にNY州から認可を得たコインベース社のカストディー事業が新たにXRPを加えると値を上げたが、リップル社の第3四半期決算でXRP売却益が180億円計上されたことを受け、リップル社にそれだけの利益を生み出すXRPを証券でないと言い切るのは困難だという見方も浮上、上値の重い展開となっている。なお、リップル社の参加で注目されたSWIFT主宰のSibosでは同社とマイクロソフトの提携が発表され、同社にとってはライバル出現となったが、これは分散台帳に対抗してクラウド化する程度の話の模様で、先行するXRPの脅威とはならないと考える。

BCH:Bitmain社がIPO準備に入ったことを受け、BCHを大量に保有する同社株が実質的なBCHのETFとの見方も浮上、同社が支持するBitcoin ABCに対立するBitcoin SVが妥協するとの見方もあったが、SV側のメディアCoingeekに同社のIPOを批判する記事が出たことにより、対立の奥深さを嫌気し軟調に推移。世界同時株安で急落、SV側と関係が深いSBIの北尾社長がインタビューで騒動の根が深いとしたことも嫌気された。その後、クリプト・ゴッドと称されるロジャー・バー氏の分裂騒動は周りが騒ぎすぎというコメントもあり下げ止まり、中間派のBitcoin UnlimitedがABCバージョンを受け容れる姿勢を見せたことから上昇に転じるが、SV側が新たなバージョンを発表、SVPoolがマイナーを募集し始めると下落に転じた。月末のSBI決算発表ではリップル社とR3の和解を仲介したとされる北尾氏から騒動の収束に向かうヒントは得られず失望売りが先行している。11月15日のハードフォークに向けて動向が注目されるが、前述のインタビューで北尾氏はマイニングやマシン製造事業に参入し中国に偏っているマイニング構造を是正したいとの思いを語っており、そうであればBitmain社と競合する訳で対立の構造は市場が思っているより根深いのかもしれない。

LTC:BTCで見られたバグで規模の小さい通貨で被害が出たとの報道もあり軟調に始まるも、創始者チャーリー・リーとロジャー・バーとの対談もあり一旦は下げ止まる。その後、世界同時株安で急落するも、Geminiでの取扱い開始への期待もあり値を戻していた。しかし、実際に取引が開始されるとSell on the Factで売りが先行する展開となっている。LTC独自の材料が乏しい中、決済面が売りのLTCだが、XRPやステーブルコインが話題となる中、埋没しかねない状況が続いている。


Calendar

11月1日 金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第8回)
11月2日 Bitcoin BCH Miners Choice Summit (香港) BitcoinSV側の決起集会
11月5-8日  FINTECH WEEK(ワシントン)IMF共催、規制関係のトピック多くCFTCジャンカルロ会長出席
11月14日 CBOE BTC先物最終取引日
11月15日 ビットコインキャッシュ ハードフォーク
11月18日 Future of Money~マネーの未来を探る~ 藤巻参議院議員 ウー・ジハン ロジャー・バー他
11月19-20日 NodeTokyo 2018 イーサリアム関連のトピック多い
11月27日 Concensus:Invest(NY)コインデスク主宰 クレイトンSEC委員長 ダン・モアヘッド氏ら
11月27-1日 BLOCK SHOW ASIA(シンガポール) トム・リー氏 ボビー・リー氏ら
11月29日 G20財務大臣ワーキング・ディナー(ブエノスアイレス)
11月30日 CME BTC先物最終取引日
11月30-1日 G20首脳会議

FXcoin Monthly Report 2018.11.01.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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