テクニカル分析の実績:2020年はどれが儲かったか?
2021-01-18 09:14[ 岩壷健太郎 ]
岩壷教授の経済教室 第17回
2020年は年末にかけて仮想通貨市場が盛り上がりました。相場の急騰時には急落することも考えられるので建玉を早めに決済してしまい、ポジションを持ち続けておけば良かったと後悔した人が多いかもしれません。では、一体何を信じて売買すればいいのでしょうか?今回は、テクニカル分析でよく使われる(1)ゴールデンクロス/デッドクロス、(2) 単純移動平均、(3)RSI、(4)MACDによるパフォーマンスを比較してみました。
Think Traderという無料の検証ツールを使って過去検証します。Think TraderではUSD建てのBTC価格データが内蔵されているので、すべてUSD建てになっています。
(1)ゴールデンクロス/デッドクロス(GC/DC)は、日次BTCレートのローソク足チャートの上に、21日単純移動平均線(SMA)と9日のSMAを描き、9日SMAが21日SMAを上抜ける日の終値でロング(買い持ち)の新規注文を入れ、9日SMAが21日SMAを下抜ける日の終値で決済すると同時に、ショート(売り持ち)新規注文をいれるという戦略を考えます。つまり、ロング・ショートを問わず、たえず1 BTCのポジションを持っている戦略です。
(2)移動平均は日次の終値が21日移動平均線を上回ったら終値でロング(買い持ち)新規注文を入れ、下回ったら終値で決済すると同時に、ショート(売り持ち)新規注文をいれるという戦略です。ここでも、たえず1 BTCのポジションを持っている戦略を想定しています。
(3)RSI(Relative Strength Indicator)は買われ過ぎ、売られ過ぎを表すオシレーター系のインディケーターですが、30%線を下回ってから初めて30%線を上回った日の終値でロング(買い持ち)新規注文を入れ、70%線を上回ったら決済。70%線を下回った日の終値でショート(売り持ち)新規注文をいれるという戦略を考えます。パラメータは14にしています。
(4)MACDはMACD線がシグナル線を上回るゴールデンクロスで買い、下回るデッドクロスで売るという戦略です。ここでも、絶えず1BTCのポジションを保有することにします。パラメータは(12、26、9)にしています。
検証の結果、2020年は年後半に上昇トレンドが見られたことから、オシレーター系のインディケーターよりもトレンド系のインディケーターのパフォーマンスがよく、一番パフォーマンスが良かったのは、ゴールデンクロスとデッドクロスを使った戦略でした。MACDよりも21日SMAのパフォーマンスが良かったのですが、21SMAはトレンドが出るまで損失を繰り返しがちなので、勝率はMACDの方がいいという結果になりました。

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)
岩壷健太郎
神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。