ビットコイン相場に適したテクニカル手法とは?

2021-01-28 13:44[ 岩壷健太郎

岩壷教授の経済教室 暗号資産 仮想通貨

岩壷教授の経済教室 第18回


前回(第17回)は2020年の1年間で最も儲けることができたテクニカル手法を紹介しました。その後、私の過去検証よりも数多くのテクニカル手法を検証した最新の研究を発見しましたので、今回はそれを紹介します。
 Gerritsen et al. (2020)は、(1)移動平均、(2)レンジブレイク、(3)MACD、(4) モーメンタム、(5)オンバランス取引量、(6)RSI(relative strength index)、(7)ボリンジャーバンドといった7つのシャープレシオを比較して、これらの手法のなかでは(2)トレードレンジブレイクが最もパフォーマンスが良かったことを報告しています。シャープレシオとは、リターンの期間平均をその標準偏差で除したもので、リスクを調整した上でいかに高いリターンを上げることができるかを測る指標です。サンプル期間は2010年7月17日~2018年12月31日となっています。
 同期間における持ち切り戦略(Buy and Hold)のシャープレシオは日次で0.056(年換算で1.07)で、7つの取引手法のうち、持ち切り戦略を上回るパフォーマンスを出したのは、(2)レンジブレイク、(3)MACD、(4)モーメンタムに絞られました。そのうち、シャープレシオが最も高かったレンジブレイクとは、過去50日、150日、200日を振り返り、最高値(resistance)を更新すれば買い、最安値(support)を更新すれば売るという手法です。
 表に示されているように、全期間では50日、150日、200日のレンジブレイク手法のすべてで持ち切り戦略のシャープレシオを上回っていますが、統計的に有意な手法はそのうち、150日、200日に限られます。
さらに、2年ごとのサブサンプルに区切って、パフォーマンスをみたところ、2013-3014年には持ち切り戦略に比べて統計的有意にシャープレシオが高いですが、その他の時期では統計的有意な違いが見られません。
ビットコイン市場は、数年に1回、トレンド相場となり、これまで2011年6月、2013年12月、2017年12月、2020年12月にピークをつけてきました。このようなトレンド相場に乗ることが重要ですが、本研究の実証結果はレンジブレイク手法がどのようなトレンド相場でも持ち切り戦略のパフォーマンスを上回るわけではないことを表しており、決済タイミングの難しさが伺えます。


表 レンジブレイクと持ち切り戦略のシャープレシオ
(注)**は持ち切り戦略のシャープレシオよりも5%水準で統計的有意を示している。SUP/RES50, SUP/RES150, SUP/RES200はそれぞれ、50日、150日、200日のレンジブレイク手法を表す。
参考文献
Gerritsen, D. F., Bouri, E., Ramezanifar, R., Roubaud, D., 2020. “The Profitability of Technical Trading Rules in the Bitcoin Market” Financial Research Letters, 34, 101263.

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)

岩壷健太郎

神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。

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