アメリカでブームのDeFiの「イールドファーミング」
2021-04-15 14:00[ 岩壷健太郎 ]
DeFiの市場成長を牽引するのが「イールドファーミング」です。イールドファーミングとは暗号資産を使って可能な限りのリターンを得ることをいいます。とりわけ、2018年に開始されたレンディングサービスであるCompoundが非常に注目されています。そのサービスは、貸し手と借り手をスマートコントラクトの技術を使って結びつけるのが特徴です。暗号資産の貸し借りにおいては、金利が発生し、借りた人は利息を払い、貸した人は金利を受け取ります。ただし、中央集権型の取引所とは異なり仲介者が存在せず、貸し借りはスマートコントラクトによって行われます。そのため、迅速な手続きと低い手数料でレンディング取引ができます。また、借りた側が返済をしないというリスクが起きないように、借りる額の150%を担保にしなければならないというシステムになっています。
というと、借りる人が出てこなくなるのではないかと思われるかもしれません。しかし、Compoundでは貸し借りをたくさんすることで、「COMP」というガバナンストークンを獲得することができます。このガバナンストークンには、新しい機能の開発やプロジェクトの運用に関しての決定に影響を与えることができる投票機能が付与されています。それによって利用する企業やユーザーの増加に伴いトークンの価値が高まることが目論まれていました。その後、海外の大手仮想通貨取引所であるBinanceなどに上場し、取引が可能となったことで高い価格がつけられ、人気に拍車がかかりました。つまり、現在では投票機能よりもキャピタルゲインを狙ってCOMPを増やしていくことで俄然注目されるようになったのです。
2020年6月15日に配布が開始されて以来、COMPの価格は大きく上昇しました(図2参照)。Compoundに暗号資産を貸し、コンパウンドから暗号資産を借りて、さらにそれを預け入れる。現状、この作業を繰り返すことで大きなリターンが得られているのです。
図1 DeFiの預かり資産

図2 COMP/USDの価格上昇

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)
岩壷健太郎
神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。