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2018.11.09【DEX(分散型交換所)に規制の網】

2018-11-09 18:22[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム リップル ビットコインキャッシュ ライトコイン



Review

アルトコイン主導で三角持ち合い上抜け

今週のBTC相場は上昇。アルトコイン主導で3週間ぶりに73万円台に乗せると、2月以来の三角持ち合いのレジスタンスを上抜け、74万円台を付けている。週初は71万円台で底堅い値動きを見せると、裏付けとなるドル預金の書類を公表していたテザーが再び下落、逃避買いで73万円手前まで上昇。大手交換所が分裂した通貨も付与する方針としたことでBCHが上昇、またSECが近く仮想通貨が証券に該当するかガイドラインを出すとされたことでXRPが証券に該当するかに決着が着くとの見方も浮上しXRPが上昇、マイニング機器販売の欧ビットフューリーの資金調達に電通や元GSのノボグラッツ氏の参加が伝わると再び73万円をトライするも失敗。ETH関連企業であるコンセンシスと新生銀行の提携が伝わりETHが上昇すると遂にBTCは73万円を突破、74万円まで上昇し、長らく続いた三角持ち合いのレジスタンスを上抜けた。

Outlook

DEXに規制の網

来週のBTC相場は上値を探る展開を予想する。アルトコインの反落やSECによる分散型交換所(DEX)EtherDeltaに有価証券にあたるトークンを販売したかどで罰金を課したこともあり72万円台へ反落しているが、三角持ち合いのレジスタンスがサポートとして機能している。なお、今回のSECによる訴追は、ICOで発行されたトークンのうち有価証券と見做されるものをしかるべき手続きを経ずに販売したことだが、このところSECは有価証券としてのICOトークン販売の取締りを強化しており、目新しいことではない。SECが出した声明の中でEtherDeltaは(中略)SECに登録するか免除申請をする必要があるとしている点だ。これは、有価証券を扱うのであれば有価証券を取り扱うライセンスが必要という意味ではあるが、突き詰めると、では有価証券以外であればDEXはアメリカで、もしくは日本で取り扱ってもいいのかという問題に到達する。AML/CFT(アンチマネーロンダリング・テロ資金供与)を取り仕切るFATFは2015年に仮想通貨交換業を登録制にするように勧告した。その趣旨は、国境を越えて資金決済を行う仮想通貨は放っておいたらAML/CFTの温床になりかねず、その法定通貨への出口である交換所にKYC強化を義務付けることにして水際作戦を立てようとした訳だ。10月の全体会合後にウォレットプロバイダーやICOサービスに対しても登録制を拡張すべきとしたのは、このチェックポイントを拡大しようとする試みだと考えられる。すなわち、ダーティーマネーの世界とクリーンマネーの世界との国境に壁を作っているのだが、もしDEXが我々は管理者不在だからどこの国にも属さず、どこの国の規制も受けないとうそぶくのであれば、この国境の壁が無い地域が出来てしまう。そのDEXに問答無用で規制の網をかけた今回の訴追は画期的と考える。DEXといえども作ったりメンテをしている人間がいるのだから、その人間を取り締ればいい訳だ。この理屈でいけば、多くのDEXは現在のままでは成り立たなくなる可能性があり、それを市場が嫌がった可能性がある。しかし、犯罪やテロに手を染めていない殆どの参加者にとっては歓迎すべき一歩と考える。

SECのガイダンス待ち

先週は「今度こそ」と銘打ちレンジ上抜けを予想したが、きっかけはCFTCのBakkt承認ではなくアルトコインの上昇だった。10月25日にThe Blockが関係者の話としてCFTCによる承認が間近と報じて注目されていたが、今週のCoin Postの報道によれば、仮想通貨に詳しいチェヴィンスキー弁護士はBakktの親会社であるICEはCFTCに登録された指定契約市場であるために、CFTCに必要書類を提出することにより承認なしにBakktの先物商品上場が出来るそうだ。書類の提出で済むと言っても、全く当局との折衝無しに受理されるかどうかは、アメリカの制度に不案内で不明だが、その提出のタイミングで市場は何らかの反応をすると考える。アルトコインの上昇についても、XRPとETHに関しては大なり小なりSECの有価証券の定義の明確化が近いとしたことが関係していると考える。すなわち、XRPに関してはガイダンスで証券の定義が明確化されることで、長らく続いたXRPが証券か否かという問題に決着が着くという期待が高まったこと、ETHに関してはICOに関して有価証券に該当するものとしないものとに線引きされることにより、極端に減少していたICOが、特にアメリカ市場で再開されるという期待感が挙げられる。足元の相場のテーマは、機関投資家参入へのインフラ整備と規制の明確化、そして実用面の拡大の3つだと申し上げてきたが、今回のBTCのレジスタンス上抜けの背景には、SECによる有価証券の定義明確化への期待、すなわち規制の明確化が決め手になったと考えている。実際にSECからガイダンス発表された際にはもう一段の上げが期待されよう。XRPの実用化も進んでおり、合わせ技一本だったのかもしれない。

レジスタンスがサポートに

以前にも申し上げた通り、テクニカル的には三角持ち合いの上抜けと言っても1万円程度で、ダマしの可能性は捨てきれないし足元では軟調な展開となっているが、上記のように三角持ち合いを続けていた時期から状況は変わりつつあり、かつてのレジスタンスにサポートされながら、上値追いのタイミングを見計らっていると考える。なお、2月20日の高値1,263,317と7月24日の高値941,317とを結んだレジスタンスがサポートとして効いてくると考えている。

11/6 11/7 11/8 11/9 11/10 11/11 11/12 11/13 11/14 11/15
723,188 721,111 719,033 716,956 714,878 712,801 710,723 708,646 706,569 704,491

予想レンジ BTC 70万円~90万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は上昇、約1か月ぶりに25000円台を回復した。22000円台で底堅さを見せると、テザーの急落でアルトコインが買われる中、24000円台を回復するも上値の重い展開。しかし、ETHの共同創始者ジョセフ・ルービン氏が率いるETH関連ソフト開発企業コンセンシスと新生銀行が提携、同銀行の香港子会社でブロックチェーンを用いた銀行サービスの開発を行うとするとETHが上昇、一時XRPに抜かれた時価総額2位の地位を取り返した。ICO関連の売りが収まったとの見方もあり底堅さを見せつつあったETHだが、新規のICOが激減する中、買い需要も細る展開が続いていた。しかし、かつてETHは証券にあたらないとしたSECのヒンマン コーポレートファイナンス部門長が近くICO関連の仮想通貨が証券に該当するかガイドラインを発表するとしたことが、ICO需要復調のきっかけになるとの思惑もありそうだ。元グーグルCEOエリック・シュミット氏はプラットフォームとしてのイーサリアムのポテンシャルを非常に高く評価したが、ICOを巡る需給ギャップを克服すればETHのポテンシャルは高いと考える。

XRP:XRP相場は大きく上昇、週間で2割以上上昇し60円台に乗せている。テザーの下落でアルトコインが買われる中、堅調に推移したが、上述のヒンマン氏が近く仮想通貨がガイドラインを発表した際に(投資家が)リターンを期待している場合、証券に該当すると回答した。コインテレグラフのインタビューで同社のチーフ・マーケット・ストラテジストのコリー・ジョンソン氏はXRPは証券にあたらないと主張していたが、ヒンマン氏の説明に従えば、ようやくこの問題に終止符を打てる可能性が浮上した。この発言をきっかけにXRPは大きく上昇を始め、OKexがXRPの証拠金取引を開始したことで60円台を回復した。その後はSWIFTが同社との提携を否定したこともあり上値の重い展開を続けている。ETHEREUM world newsがSWIFTもブロックチェーン技術導入を進めていると伝えているようにこの分野は競争が激しく、先行しているリップル社といえども油断はできない。しかし、先日お伝えしたようにトレード・ファイナンスの分野でXRP利用する方向性が見えてくれば、非常にポジティブな材料となる。また、今回のXRPの上昇の要因として、米国からフィリピンへの送金業者SendFriendのxRapid採用が挙げられたが、同社のようなスタートアップの影響がどこまであるかは疑問だが、少なくとも次のxRapid採用のニュースには相応に反応しそうだ。

BCH:先週は11月15日のハードフォークに向けた不透明感から上値の重い展開を予想したが、分裂騒動がむしろ買い材料として3割以上の上昇をもたらした。要因の一つはBinanceやOkex、Coinbaseなど大手交換所がBCHが分裂した場合、発生した新たな通貨も付与する方針を打ち出したこと、また中間派とされるロジャー・バー率いるBitcoin.comが主流派ABC側の支援を表明した事だ。BTCからBCHの分離を主導したABCが劣勢になると分裂がほぼ決定的になるからだ。ABCが優勢となった場合はSV側が矛を収める可能性は残っていると考える。従来のバージョンがABCにのみ対応していることからABCに付くと思われた中間派UnlimitedがABC・SVいずれにも対応できるバージョンを発表したことにより、事態は流動的となっている。中間派は自由投票となった訳だ。Poloniexなど海外の交換所では分裂を想定してBCHABCとBCHSVの先物取引を開始した模様で、両者を合計するとほぼBCHの価格となっており、新通貨の付与狙いの買いは限定的か。先日お伝えした様に弊方では最終的にABCが優勢となりSV側が妥協する展開を予想しており、今回の騒動により一時的にBCHが買われる展開も予想されるが、長い目で見れば投資家離れを呼ぶ要因となろう。足元ではSV派の元自称サトシのクレーグ・ライト氏が中間派でABC支援に傾いたロジャー・バー氏にメールで口汚く罵ったり、バー氏が公表したメールに憤慨したABC派のウー・ジハンがフェイク・サトシを追い出そうと呼びかけたりと子供じみた争いを続けているが、こうした内紛も今後投資家離れを誘発しそうだ。

LTC:引き続きLTC独自の材料に乏しい展開が続く。テザー急落の影響で6000円台を回復、OKexがLTCの証拠金取引を開始したこともあり6300円台まで値を戻すも、目立った材料が無い中、6000円近くまで反落、アルトコインが全面高となっているのに対し週を通しても数%程度の上昇にとどまっている。上記3通貨と比べ派手な材料に欠け、埋没気味の展開が続いている。

Calendar

11月10日 Hi-Con 日本初の大規模イーサリアム技術者会議
11月12日 金融庁第9回仮想通貨交換業研究会
11月14日 CBOE BTC先物最終取引日
11月15日 ビットコインキャッシュ ハードフォーク


FXcoin Weekly Report 2018.11.09.pdf


松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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