Bitfinex法定通貨出金手数料を設定

2018-11-13 19:48[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

海外仮想通貨交換所のBitfinexが法定通貨の引出しに対して高い手数料を課すことを発表して話題となっている。同社の発表によれば30日間で2回超もしくは累計で100万ドル超の法定通貨の引出しに対し3%の手数料を徴収する。元本の3%という法外な手数料を避けるためには、30日間に2回以内、100万ドル未満の引出しとするか、他の仮想通貨に交換して他の交換所か自分のウォレットに送金するしかない訳だ。同社の説明によれば10月単月で700件10億ドル以上の引出しがあったが99%は上記の基準に抵触しないとのことだった。

その発表では、従来の顧客に仮想通貨VS仮想通貨および仮想通貨VSステーブルコインのサービスを提供し続けることを最優先であるとし、仮想通貨市場を攻撃しようとする勢力から法定通貨への出口を守ると述べている。後者が何を指しているのかは不明だが、もしAML/CFT(アンチマネーロンダリング/反テロ資金供与)を指しているのだと好意的に解釈すれば理解できなくもない。そうは言っても、預けたお金を引き出すのに3%の手数料を課すやり方が正当化されるとは思えず、議論を呼んでいる。また、同社はステーブルコイン テザー(USDT)を発行しているテザー社と経営陣が同じで、そのテザーは度々、信用不安から同社が主張する1USD=1USDTから乖離している。この経緯については、トピック:ステーブルコインは前払式支払手段で決まり?および10月16日Daily Report: 急騰の背景にテザー騒動をご参照頂きたい。直近でも、テザー社が発行数に見合うドル預金を保有していないのではないかという疑念に対し、11月1日にバハマの銀行が残高を証明する文章を公表した。しかし、サイナーの名前等も記載されていない簡単な書類でむしろ市場の不安感を煽ってしまった。その後、Coindeskの報道でこのバハマの銀行の会長が文章の信ぴょう性を保証したのだが、この件に関するテザー社の対応は約2000億円を預かっている会社としては不十分と言わざるを得ない。それ故、市場の不安を払しょくしきれず、他のステーブルコインの台頭を許しており、またこの件が嫌気されてか、テザーの価格もじりじりと下がり始めている。

取り敢えず10月末時点でのドル預金は発行額に見合ったものだったことが確認された訳だが、現在の様な不十分な情報公開では市場の信用を取り戻すことは難しいと考える。こうした中、USDTから徐々に他のステーブルコインにシフトする動きが続き、USDTの時価総額も減少していくことが予想される。既に時価総額は9月末の28億ドルから17億ドルへ1か月半で4割急減している。また今回の手数料設定を嫌気した投資家がUSDTのままもしくは他の通貨に交換して他の交換所やウォレットに残高を移す動きも見られるだろう。この信用問題が仮想通貨全体の上値を重くしている印象もあるが、BTCやETHなどメジャーな通貨には買いが入りやすいのではないだろうか。但し、テザーがこのまま残高を減らしフェードアウトするまでの間にクラッシュした場合はその限りではないので、リスク要因として頭に置いて置く必要があろう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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