DeFiプロトコルAaveが機関投資家”専用”マーケットを構築する背景
2021-07-15 11:15[ Fracton Ventures ]
当コラムでは過去にも”DeFiに触手を伸ばす、機関投資家の狙い”(2021年6月15日付)というタイトルで機関投資家の動きをご紹介してきましたが、2021年7月また新しい動きが見られました。かなり上手な規制へのアプローチを展開しているように見えるチーム、会社が今回ご紹介するAave(アーヴェ)です。

出典:Aave(https://aave.com/)
AaveはMakerDAOやCompoundと同じように名前が知られた歴史を持つDeFiプロトコルです。
また、AaveはDeFiプロトコルを構築しているチームとして知られており、以下のプロトコルやサービスを別々の形態にて提供、開発を行っています。
これまでに下記上段2つのAaveプロトコルとAaveイギリス法人における電子マネーライセンスの取得について報道されていました。今回新たに、Aaveチームが手掛けるAave Proという機関投資家向けのAaveプロトコル活用プロダクトが2021年7月下旬から提供されることが発表されています。

*¹出典:https://www.theblockcrypto.com/post/75845/aave-uk-fca-emi-license-defi
現状機関投資家がDeFiに流れてくるメリットとデメリットを整理すると以下の通りです。
Pros:
・DeFiプロトコルを経由することで得られる金利を高くすることができる可能性(手元の不動暗号資産の運用、収益化)
Cons:
・DeFiプロトコルを介した攻撃などを行う、攻撃者の資産と同じプールなどで機関投資家の資産が決済される恐れがあること(コンプライアンスリスク)・DeFiマーケットに接続する際の、個別の国の法律への準拠への対応コスト
・預けている資産が攻撃などに合う可能性などを加味した事業リスク
今回のAave Proから読みとることができるポイントとしては、Aaveプロトコルを設計、構築したAaveチームが提供するAaveプロトコルを活用した機関投資家向けのAaveプロトコル活用プロダクト提供という決定をしている点が新しいと言えます。つまり、これはAaveの最大の特徴であるプール型でのDeFiレンディングサービスが肝であるポイント、システムアーキテクチャを活用しながらも、一定のリスクへの対応として一般顧客が用いるDeFiサービスとは分けた別の機関投資家用のプールを構築したということではないでしょうか。
また、実際に今後Aave Proがどのようなプロダクトになるのかは、一般投資家用のAaveプロトコルとの差分を見ていくことになろうと思いますが、全く同じ設計でも需給により一般投資家用のAaveプロトコルとAave Proで金利差が発生する可能性などがあり、その点も注目されます。
なお興味深い点としては以下のブロックチェーンメディアで触れている部分です。
https://finance.yahoo.com/news/aave-debut-institutional-defi-lending-154914554.html
Aaveプロトコルにおけるガバナンスへの参加を与えるネイティブトークンであるAaveトークン保有者がAave Proでも権利行使できると読める一文です。Aave Proのガバナンスは”Aaveトークン保持者によって”管理されると紹介がされており、このようにDeFiでは今までの企業がプロダクトを管理するモデルから、プロトコルと呼ばれる公共性の高いインフラストラクチャーとそのガバナンス権利のみをネイティブトークン(ガバナンストークン)として切離してコミュニティがプロトコルを管理していくモデルへと、大きな変貌を遂げています。
このように、DeFiプロトコルはより公共性的なインフラストラクチャーとなり、より多くの機関投資家向けのサービスとして、時にオリジナルがそのまま、また時に同じシステムを別の形で提供されて組み込まれていくことになるでしょう。このようなAaveチームのチャレンジはDeFiの今後、拡張性を占う上でもとても大きな指標になることは間違いありません。
Fracton Ventures (フラクトン ベンチャーズ)
Fracton VenturesはWeb3.0の未来を支援者ではなく貢献者として共創していく専門家集団です。Web3.0社会の実現に向けてグローバルエコシステムの一助を担うべく活動を行うと共に、サステナブルかつオープンなプロトコルを育てる為のトークン設計を行っていきます。