自称サトシ派優勢でビットコインキャッシュ急落

2018-11-15 14:12[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ

昨日はBCHの下落がBTCの急落の引き金を引きました。ただ、仮想通貨全体が好材料の続くBTCやXRPがここまで下落した要因は別稿にて検討するつもりですが、ここでは今晩の午前1時40分頃とされるハードフォーク後の見通しを含めてご紹介したいと思います。

ABC派とSV派の対立

まず、ブロックチェーンの基となるプログラムは、バグを修正したり、時代の流れに合わせるために、適宜アップグレードを繰り返しているのですが、昨年8月にスケーラビリティー問題を巡る開発者とマイナーら対立から、BTCのハードフォークにより誕生したBCHは、BTCのように一部の開発者が決定権を独占するのではなく、複数の開発グループがアップグレードの提案を提出し合い、最終的にはそれを支持するマイナーの多寡によりどの提案を採用するのかを競う方式を採用しました。一旦ブロックチェーンは分岐しても支持するマイナーが多いバージョンの方がチェーンが長くなるからです。チェーンが分岐した場合、最も長いチェーンを正とするのはBTCから続くルールです。今回11月のアップデートでは、主流派Bitcoin ABCと反主流派Bitcoin SVとが対立したままハードフォーク当日を迎えてしまい、このハッシュウォー不可避の状況となりました。ここまでの経緯は入門アルトコイン(ビットコインキャッシュ)をご参照ください。

SV派が優勢に

昨日のBCHの大幅下落は当初優勢と思われていたABCがハッシュレート争いで劣勢に回り、このままではSVがメインチェーンを支配しかねない状況になったことを嫌気した投資家が逃げ出している動きと見ています。ここで、前回のビットコインキャッシュ分裂騒動の着地点に関してお詫びさせて頂きたいのですが、まず分岐したチェーンを判別するためにリプレイ(アタック)プロテクションをSVは実装しない方針と表明していたので、本心ではSVは分裂する気が無いのではないか、従って直前に妥協してハッシュウォーは起こらないのではないかという趣旨のお話をしました。その時点ではBTCとの分岐を主導したABCは当然リプレイプロテクションを実装することを前提に分析していましたが、現在のところABCもプロテクションを準備しておらず、普通にハッシュウォーが発生してしまう可能性が高くなり、またその残ったBCHチェーンをSVが主導権を握る形になってしまいました。予想と真逆の結果になってしまった訳です。その時点で3-4割程度だったSVのハッシュパワーが一気に7割を超える水準まで引きあがるとは思っていなかった事が見誤った一因だと考えています。むしろ、ABCを支持するBitmain社の創業者ウー・ジハン氏らがBTCのハッシュパワーをBCHにシフトすると予想していたところ、同氏は同社のCEOどころか取締役も解任されたというニュースが中国系メディアを通してCointelegraphから紹介されました。これは誤報だったようで、同社はIPOの規制にあわせるために取締役会の再編は行っているがウー氏の解任は否定したとCCNらは伝えましたが、IPO絡みで忙しいせいか、5日前を最後に同氏のTwitterの更新は止まっています。この土壇場に来ての大将のプレゼンスの低下は厳しいところで、なんだかABCが、大坂城から慶喜が逃げ出した後の幕府軍に見えて来ます。

市場参加者はABC支持か

市場参加者がABC有利と見ていた節はPoloniexなどが提供していた分裂後の両コインの先物市場での価格が、当初BCHABC:BCHSVが10:1程度だったことからも分かります。この価格が昨日には一時SVがABCを追い抜いて話題になりました。ただ、既にSVが7割のハッシュパワーを握り、SV派のカルビン・エアー氏が勝利宣言をする中、片やABCは肝心の大将の顔が見えない状況では巻き返しは難しそうです。

SV派が信用されない理由

では、なぜ市場参加者はSVの優勢に警戒心を強めているのでしょうか。一つは元自称サトシ・ナカモトのクレイグ・ライト氏の存在です。今回の分裂騒動が佳境に入ると、中間派でABCについたロジャー・バー氏を口汚く罵ったり、公然と相手チェーンへの攻撃を口にしたり、その常軌を逸した行動に多くの参加者が眉をひそめています。具体的には相手チェーンでデータの無い空ブロックを次々にマイニングすることで正常な取引が承認されない事態をひき起したり、ABCのブロックサイズは32MBのままで、SVのサイズは128MBであることを利用して、128MBのブロックを作成して対応できないABCのマイナーを攻撃することなどが指摘されている様です。それ以上に、このままですと、クレイグ氏率いるSVPoolと彼を支援するカリブの富豪カルビン・エアー氏が率いるCoingeekの2Poolでハッシュパワーの過半数を握ってしまうことだ。ハッシュパワーの過半数を握ったからと言って直ちに51%攻撃を仕掛けて2重支払いなど不正取引を行うとは限らないが、これまでの言動や行動からして、彼らならやりかねない、その時にBCHは仮想通貨として成り立つのか、参加者は不安に感じているのだと思います。エアー氏はオンラインカジノで財を成した人物です。

市場の信用回復には

結局、マイナーに選ばせるという手法は、一部の富豪が資力に任せて採算を度外視して一時的にハッシュパワーを引き上げ通貨の運営を乗っ取ることが可能であることが判明しました。ポイントは、これらの行為がノードや市場参加者の意向に反して行われることです。決済での利用を目指してBTCのスケーラビリティーの問題を解決しようとして誕生したBCHですが、今回の状況を経て決済利用が拡大する可能性はほぼなくなったと考えます。アップデートの度に内紛を続け、決済停止になるようであればとても実社会界では使用できませんし、そもそも交換所での取引が可能かどうかから見直す必要がありそうです。ただ、それ以上に今回の騒動で失った仮想通貨全体への信用を取り戻す必要があると思います。今の登場人物のままでSVバージョンのBCHが市場参加者の支持を得られるとは到底思えず、市場の信用を回復できるとすれば、イーサリアムの創始者ヴィタリック・ブテリン氏が言うように、ABCがリプレイプロテクションを実装し、きちんとクレイグ・ライト氏らと袂を分かつことだと考えています。この件の行方がはっきりするまでは、BTC相場も戻りきれないと考えています。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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