大型アップグレード後もイーサリアムが注目される理由

2021-08-16 09:15[ 岩壷健太郎

岩壷教授の経済教室 仮想通貨 暗号資産

岩壷教授の経済教室 第27回

 暗号資産(仮想通貨)価格の急反発が止まらない。過去2週間ほど、多くの暗号資産が上昇し続けていたため、そろそろピークアウトするのではないかという向きもあったが、8月14日現在、まだ下降基調に入るそぶりは見られない。とりわけ、注目すべきはイーサリアムである。大型アップグレード「ロンドン」が実施される前から価格が上昇し始め、7月の最安値から36万円台にまで85%以上の上昇を見せている。

 ここ数ヶ月の間に、DeFi(分散型金融)プロジェクトを手がけるポリ・ネットワークでは約6億ドル(約660億円)の不正流出事件が発生し、各国の暗号資産に対する規制強化の動きが強まった。中国では暗号資産の採掘が全面禁止になり、米国では暗号資産取引に対する課税強化や一定以上の送金に対する報告義務付けの見直し、ECBラガルド総裁の「世界規模での規制が必要」という暗号資産に対する見解が報道された。このようなネガティブなニュースがあっても暗号資産の価格が崩れていないというのは上昇の勢いを示す1つの根拠となっている。

 そして、イーサリアムにとっては「ロンドン」ハードフォークによってETHの価格を上昇させていくための仕組みが導入されたことが大きな注目を集めている。ビットコインと違いETHには発行上限がないため、これまで価格を上昇させるための仕組みが存在していなかったが、今回バーン(Burn)の仕組みが導入されたことで、ETHの価格上昇が期待される。

 今回の提案(EIP-1559)では、これまでネットワーク手数料が需要に応じた変動制(オークション形式)が取られていたのに替わって、基本手数料(ベースフィー)とチップ(プライオリティフィー)という仕組みが導入され、ベースフィーとして支払われる手数料がバーンされる新システムに移行した。バーンとは永久に使えなくする処理を指し、株式の「自社株買い」に近い供給量を減らす仕組みである。「ロンドン」ハードフォークから1週間で約35,000ETHがバーンされており、同期間のETH発行量が約10万ETHであることから、新規発行量の約35%がバーンされていることになる。ユーザーは基本料金を払ったうえで、プライオリティフィーを払うとことで取引の優先度を上げることができる。基本料金を固定化し、バーンすることによって、マイナーが意図的にガス代(手数料)を釣り上げることが困難になる。よって、価格の大幅な変動が抑えられ、マイナーとユーザーのインセンティブが一致するようになった。ガス代の高騰が解消できれば、イーサリアムがより多くのdApps(分散型アプリ)で使用されることになり、DeFiやNFTなどさらなる場面での活躍が期待できる。

岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)

岩壷健太郎

神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。

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