レンジ下抜けの背景に信用問題

2018-11-15 19:31[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ テザー


昨晩、BCHの急落に連れてBTCが下落。日本時間夕刻の1度目の下落では以前申し上げたレジスタンスがサポートとなり70万円台で底堅さを見せたが、深夜の2度目の下落で70万円を割れると、一気に年初来安値水準まで急落。その水準で一度は値を戻すもCBOEのBTC先物11月限最終取引時間にかけて60万円近辺まで急落した。11月7日段階で三角持ち合いを上抜けしたとレポートし上値追いを予想したが、結局、上抜けはダマしに終わり、下抜けてしまった。

BCHの下落については別稿をご参照いただきたいが、2度目の下落に関して、きっかけはBCHだがBTCの下落が仮想通貨全体を牽引しており、それは三角持ち合いを下に抜けたからであろう。では、レンジを上抜けるとしたが見通しが外れた原因は何だろうか。従来より、上値が重く、下値が堅い理由として、機関投資家参入のインフラ整備が進み底堅いが、規制の整備が進まず市場に対する信用が回復しないため上値が重いと説明してきた。そうした中、一歩ずつルール作りも進み、またXRPを中心に実用面の拡大が進むことでレンジを上抜けていくと予想していた。この3つの中でどの材料が想定外だったのであろうか。

1つ目はBitfinexの高額な出金手数料設定に端を発したテザーに対する不安が挙げられる。詳しくは別稿をご参照いただきたいが、この通常でない手数料設定は単にテザーからBTCなどへの逃避買いだけでなく、テザーに対する懸念を再燃させ、97セント付近まで値を下げている。今回はテザーからの逃避買いでBTCが支えられることも無く、仮想通貨相場全体に不安感が伝播している可能性がある。

テザーに関しては、これに替わる信用度の高いステーブルコインへのシフトが始まっているせいか1か月で4割残高を減らしており、もう1か月程度かけてシフトが滞りなく進めば、テザーの仮想通貨全体への影響も少なくなり、また市場に対する信用は回復することが期待される。もちろん、その間にテザー相場がクラッシュするようならその限りではない。

2つ目はBCH騒動の影響だ。別稿で申し上げた通り、従来より中間派を味方につけた主流派ABCが過半数を握り、SVが妥協するシナリオを描いていた。BCHのコミュニティーが自浄作用を見せる形だ。しかし、ここ1週間で反主流派だったSVがハッシュパワーを2倍近くに急増させ、更にその中心人物である元自称サトシのクレイグ・ライト氏はロジャー・バー氏に暴言を投げかけただけでなく、他のチェーンに攻撃をしかけるやBTCを1000ドルまで下落させるなど異様な発言を続けている。まず、民主的だとされたBCHの開発提案をマイナーのハッシュパワーで決めるという方法が、実は市場参加者の多くが望まない結果を招き、仮想通貨全体への信用さえ貶めてしまうことに気付かされたからだ。

既に決済通貨としてのBCHに対する信認は地に落ちているが、クレイグ氏やSV派が行っている、ハッシュパワーの急増や空ブロックの採掘、分岐したチェーンへアタックなど脆弱性をついた攻撃はブロックチェーン技術に対する信用を傷つけた。特に相手が元自称サトシで真偽はともかくブロックチェーン技術を知り尽くしたクレイグ博士だけに不安感を煽っている。従って、例えばABC側が分岐して新たな安定した運営を見せるなどこのフォーク後のBCHコミュニティーが自浄作用を働かせて、正常に運営されていく姿を確認できれば市場の信用は戻るかもしれないが、これには少なくとも数週間は要することだろう。

結局、想定していなかった市場の価格形成やブロックチェーン技術への信用を揺るがす材料が出たことにより予想に反してサポートを下抜けたと考えているが、特にBCHに関しては読みが甘かったと言われても仕方がないし、下抜けする前の上値の重さを見てこの事態を予想すべきだったかもしれない。幸い、インフラ整備が整ったおかげでいくらかの機関投資家はこの底値を拾うものと考え、更なる底割れは考えていない。プロ投資家の中でも、いま参加しているヘッジファンドなどは安値を拾うことが得意だ。しかし、市場の動揺が収まり、70万円を回復するには少なくとも数週間要するものと考える。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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