2018.11.16【BCH分裂騒動、土壇場でABCが逆転】

2018-11-16 22:24[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム リップル ビットコインキャッシュ ライトコイン



Review

SV派勝利見込みを嫌気したBCH売り

今週のBTC相場は大幅下落。BCH分裂騒動の連れ安で、三角持ち合いの下限を下抜けると年初来安値水準まで下落した。週初はBitfinexが高額な出金手数料を設定したことで逃避買いが入るも、テザーに対する懸念が再燃、また日米株安もあり上値の重い展開。BCHの分裂騒動でハッシュパワーの7割以上を占めたSV派が勝利する公算が高くなると、OKExの先物停止をきっかけにハードフォークで入出金停止する前に資金を引き揚げる動きが加速、BCHが大きく値を下げた。これに反応してBTCも値を下げると、直近のサポート69万円を割り込み、年初来安値水準を下抜けると60万円近辺まで急落した。その水準では利食いや大口の売りもあり乱高下したが、懸念されたBCHの分裂に際してABC側がハッシュパワーで圧倒、チェーンも順調に伸びていることを受け、若干値を戻している。

Outlook

BCH騒動で失ったもの

来週のBTC相場はハードフォーク後のABCチェーンが安定して推移するかを見ながら乱高下する展開を予想する。今回の急落のきっかけを作ったのはBCHだが、最後はBTCの下落が仮想通貨全体への波及を主導した。かねてより、機関投資家の参入に向けたインフラ整備と規制の整備に寄る仮想通貨市場への信頼回復、そしてXRPが主導する実社会での利用拡大の3つのテーマが拮抗して三角持ち合い相場を形成していると申し上げてきた。その中で、今回は、Bitfinexの高額出金手数料設定によるテザー不安の再燃とBCH騒動によりブロックチェーン技術への信用が揺らいだことが、下値ブレークの背景にあると考えている。元自称サトシ・ナカモトのクレイグ・ライト氏が予告するABCや他チェーンへの攻撃は、PoWアルゴリズムが一部の悪意ある攻撃に耐えうるのかという問題を突きつけた。お互い信頼できない者同士をマイニング収益の付与と言う形で正しい合意形成へ導く、というビザンチン問題への現実解が、損益度外視して攻撃を仕掛けたり、一時的には収益を無駄にしても相手方のチェーンを乗っ取ることで最終的な利益を得ようとするものを排除できるかが問われていると考える。詳細は別稿に譲るが、BTCの根源的価値は信用であり、それは2重払いが出来ないデジタルデータであるからだと考えていて、今回その最も重要な土台が守られるのかが問われていると考える。今回、ABCでなくSVが優勢になって下落した相場が、ABCが逆転しても元の水準まで戻れない理由はそこにあると見ている。従って、クレイグ氏が言うように今後数週間かけてのマラソン攻撃にABCチェーンが耐えきれば、BTC相場は元の70万円台、更に上値追いが可能となろうが、しばらくは情勢を見ながらの神経質な展開が続こう。

ハッシュパワーのシフト

今回のハッシュウォー、すなわちマイニングにおける計算能力争いは、SV派が急速にシェアを伸ばし、フォーク前日には8割近くまで達しカルビン・エアー氏が勝利宣言をした後に、ロジャー・バー氏がBCH全体のハッシュパワーに匹敵する4,000,000テラハッシュ(1秒間に400京回)の計算能力をシフトしてSVを凌駕した。ただ、実際には両者互換性がなく、チェーンは分岐したままそのまま違う通貨として進む可能性が高いので、ハッシュパワーの違いは象徴的な意味しかないのかもしれない。ただ、このシフトをいつまでも続けていてはコストが嵩むので両者はいずれ戻す必要があると考える。これだけのハッシュパワーでマイニングするには現在のBCH価格は低すぎると考えるからだ。そうした時を狙ってSVが例えば一旦ABCを実装して51%攻撃を仕掛けるなどのアタックも考えられるし、常人では考えつかないクレイグ博士ならでの攻撃もあり得る。従って、今しばらくは事態の推移を見守る必要があろう。

ハッシュパワーが戻っても大丈夫か

上記の様に両陣営は直ちにノーサイドとはなっていない様で、平和条約締結まではしばらく時間がかかりそうだ。ただ、結局は市場の予想通りABCが優勢となっており、テザーの残高減少により影響度が小さくなり、今回シフトしたハッシュパワーが元に戻ってもABCの安定推移することが確認できれば70万円台への回帰はそう遠くないと考える。

予想レンジ BTC 55万円~75万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は大幅下落、BCH分裂騒動に端を発したBTCの急落に連れ安となった。週初こそタイで月内にICO審査プラットフォームが承認され来月にも認可されたICOが開始されると報道やテザー不安の再燃、コインチェックでの入金・購入再開などもあり底堅く推移したが、相場の下落によりETHのマイニングが収益を出せなくなっているとの報道もあり上値の重い展開が続いた。BCH・BTCの急落に連れ安となると好材料の続いたXRPに時価総額2位の地位を明け渡す結果となった。ただ、タイに限らずICOにきちんと規制をかけることにより再開する方向性は出ており、近日中とされる米SECの証券定義が固まれば、期待感からの買いが予想される。また、先日イスラム圏でシャリアに準拠するステーブルコインが認証されたが、これもイーサリアムベースである。値動きこそ冴えないがイーサリアムを利用した開発は進んでおり、徐々に底堅さを増すものと予想する。

XRP:XRP相場は仮想通貨相場が大きく下落する中、比較的堅調な推移を見せた。先週末のMUFGによる日ブラジル間送金への利用に加え、中国でもAMEXとの共同開発が承認され、またシンガポールでのイベントで配られた資料にxCurrentの利用者がシームレスにxRapid利用が可能と記載されると60円近くまで上昇。リップル社CEOがIMFの副法律顧問との対談で分散台帳技術が決済を変えることで一致、またBloombergとのインタビューでSWIFTを追い抜く事が目標だとするなど堅調に推移した。BCH・BTCの急落に流石に連れ安となるも、BCH騒動によってPoWアルゴリズムに対する懸念が広がった結果、XRPのコンセンサスアルゴリズムを評価する見方も広がり、比較的堅調に推移している。今後発表される米SECのガイダンスにより証券問題に片が付けば、もう一段の上昇が期待される。

BCH:ハードフォークに向けた内紛騒ぎで大幅に値を下げる展開、仮想通貨大幅安の引き金を引いた形。昨年のBTCからのハードフォーク時には最終的に値を上げたこともあり比較的楽観的な見方が広がっていたが、反主流派であるSVの中心人物クレイグ・ライト氏がハッシュパワーでSVが過半数を取ったとした頃から様相が変わり始める。更に、後に誤報とされるが主流派ABCの中心人物ウー・ジハン氏がBitmain社のCEOを解任されたとされ、Poloniexのフォーク後の両コインの先物市場でSVの価格がABCを上回り、OKExがBCH先物を突然停止すると急落を始めた。結局ABCがメインとなり、更に分裂したSVコインも付与されるという参加者の期待があったところに、SV派が勝利する公算が強くなったことで、失望売りを誘った形。ABCについた中間派のロジャー・バー氏を口汚く罵ったり、対立するチェーンへの51%攻撃や様々な妨害を公然と口にする元自称サトシのクレイグがBCHの中心を支配することに嫌気したものと思われる。また、いかにブロックの拡大や使い勝手の向上などを実現するかという路線で対立してきたのだが、この騒動による混乱で、そもそも実社会での使用拡大の芽を自ら摘んでしまったことも失望売りの背景にあろう。その結果、ロジャー・バー氏が率いるBitcoin.comがBTCのハッシュパワーをBCHにシフトしてSVに逆転した結果、BCH相場も下げ止まりはしたが、上値は重い展開が続いている。ABC開発者アモーリ・セシェ氏もクレイグ氏のABCチェーンへの警戒感を表明しているが、初戦で完敗を喫したクレイグ氏は、これは100メートル走でなくマラソンだと不気味な発言を続けており、ABCチェーンが安定するまで予断は許さない展開が続いている。

LTC:先週、空ブロックをマイニングすることにより他のチェーンへ攻撃を仕掛け、得た収益でBCHを購入することを目的にしたシャークプールというプールが発表され、公式ツィッターで攻撃対象のアンケートでLTCがトップとされたこともあり、上値の重い展開。BCHやBTCの急落に連れ安となっている。独自の材料に欠け、実用面でXRPに差を付けられていく厳しい状況下、埋没気味に値を下げる展開が続いている。

Calendar

11月18日 Future of Money~マネーの未来を探る~ このタイミングでウー・ジハン ロジャー・バーが東京に集結
11月19-20日 NodeTokyo 2018 イーサリアム関連のトピック多い
11月24日 仮想通貨・ブロックチェーン業界合同企業説明会in東京


FXcoin Weekly Report 2018.11.16.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ