進化する次世代型ステーブルコイン
2021-09-30 10:10[ Fracton Ventures ]
直近のCrypto VCからの資金調達事例からこうした新しいアプローチのプロトコルをいくつかまとめ、それらの傾向などを分析してみましょう。
DeFiの世界で特徴的な進化が進んでいる一つがステーブルコインです。
以前のステーブルコインは、TetherのUSDTなどドルベースな担保を取ることで、同価値になるステーブルコイントークンを発行するというオーソドックスな仕組みを採用していました。
それが、MakerDAOのような暗号資産を担保にするステーブルコインの誕生により、より進化が進み、ETHのような担保として用いるにはボラティリティが高いアセットであっても、難なくシステムを維持できる設計が施されました。その後、MakerDAOはマルチアセットを担保に入れることをプロトコル側に組み込むといった方策を取りました。
こうした中でステーブルコインの仕組みは更に新しいものへと進化していっています。
最近資金調達を果たした、または活発になっているステーブルコインをまとめてみます。
Liquity

出典:Liquity
Liquityはアルゴリズム型のステーブルコインです。根本的なアイデアはETHを担保に借りる債権型タイプのステーブルコインという点でDAIと被りますが、いくつかの点でDAIにはない特徴をもっています。
1つ目は、少ない余剰資産で発行できるステーブルコインであるという点です。Liquityでは、通常時は担保率110%を最低担保率とすることでETHを担保に借りることのできるステーブルコイン、LUSDを発行しています。MakerDAOでは、通常130-145%程度の余剰担保を求められるので資金効率があがることが期待されています。また2つ目として、ステーブルコインを借りていることにより発生する支払い利息を返却時に支払うモデルから、貸出時に一度だけ支払うモデルに変更をしており、変動金利ゆえの返却時利息の変動というリスクをヘッジすることができます。
こちらは米国の老舗Crypto VC、Pantera Capitalを中心に2021年3月に$6Mの資金調達を行っています。
Angle Protocol

出典:Angle Protocol
Angle Protocolも、同様なステーブルコインです。ただAngleはこの後に紹介をするUXD Protocolと近いアプローチで、担保資産を用いてデリバティブのポジションを形成し、その一定のポジションを維持することによって金利を稼ぐことでステーブルコインを発行するというモデルを採用していると読み取れる、プロトコルの発表がされています。
2021年9月28日に発表された資金調達ではシリコンバレーのVCであるAndreessen Horowitzなどから$5Mを既に調達しています。
UXD Protocol

出典:UXD Protocol
UXD Protocolは、海外在住の日本人開発者、稲見氏が中心となって開発を進めているステーブルコインです。これは主にSolanaブロックチェーン上にて展開をされることを優先しており、その点でAngleなどとは異なるポジションを形成することが期待されています。
UXD Protocolは、Solana上に展開されているDeFiの暗号資産デリバティブプロトコルを介しデルタニュートラルなポジションを形成し、ステーブルコインを生成するモデルを採用しており、ファンディングレートをステーブルコイン発行者側が受け取れるようにする仕組みを考案するなど、ステーブルコイン発行元が限りなく原資産のドルベースでの上限に左右されず、むしろ発行者にメリットがあるようなインセンティブ設計が施されていることが特徴です。
こちらのプロジェクトも、2021年9月に米国大手Crypto VCであるMulticoin Capitalを筆頭に合計$3Mを調達していることを発表しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。ステーブルコインは第一世代のUSDTやUSDCなどの法定通貨ペグ型に始まり、MakerDAOなどのような暗号資産担保型へ、そしてアルゴリズムやストラテジーを用いることで価格を安定させる次世代型ステーブルコインへと急速に進化していっています。このような変化は、DeFiという組み合わせ(コンポーザビリティ)が可能なマーケットだからこそ起きるものであり、またその流れがEthereumだけではなくSolanaやAvalanche、Polygonなどの他のブロックチェーン特有のエコシステムの中でも生まれていっていることが窺えます。
Fracton Ventures (フラクトン ベンチャーズ)
Fracton VenturesはWeb3.0の未来を支援者ではなく貢献者として共創していく専門家集団です。Web3.0社会の実現に向けてグローバルエコシステムの一助を担うべく活動を行うと共に、サステナブルかつオープンなプロトコルを育てる為のトークン設計を行っていきます。