ICO, IDO, IEOとは?
2021-10-18 10:00[ 岩壷健太郎 ]
岩壷教授の経済教室 第29回
ICO(Initial Coin offering)とは仮想通貨(暗号資産)の新規発行による資金調達方法の一つとして、2013 年から始まった。資金調達者はプロジェクト遂行のために独自の仮想通貨を発行、販売する。投資家はプロジェクトが提供するサービスを利用したり、出資した仮想通貨の価格上昇により自己資産を増やしたりすることができる。2017 年に盛り上がりを見せたが、審査や手続きが簡易なため、詐欺や資金の持ち逃げが多発し、ブームは終焉を迎えた。そこで、登場したのが、取引所が間に入って資金調達を行うIEO(Initial Exchange offering)である。取引所がプロジェクトの精査を行ったり、資金を一時的に預かってくれたりするため、投資家にとってICOよりもリスクが低く、信用性が高い。仮想通貨取引所がプロジェクトやトークンの宣伝や販売を代行してくれるので、資金調達者にとっては開発や事業に集中できるというメリットがあり、仮想通貨取引所にとってはトークンの購入量が増えるほど手数料収入が入るというメリットがある。例えば、世界最大の仮想通貨取引所であるBinanceでは、月に1回IEOが行われている。反対に、IEOのデメリットには、仮想通貨取引所を利用するので、独自通貨を保有しなければならなかったり、抽選だったりすることである。たとえば、BinanceはIEOに参加するために独自通貨(BNB)の保有が必要になる。
最後に、IDO(Initial DEX Offering)とは分散型取引所(DEX)が間に入って資金調達を行う方法である。中央集権型のIEOでは、仮想通貨を取引所に預け、取引所に仮想通貨の秘密鍵の管理を委任する形となっていた。一方、IDOでは運営会社(管理者)がいない取引所(DEX)のため、仮想通貨を売買したい人たち自身が秘密鍵の管理やウォレットアドレスを用いて直接取引することになる。IDOではIEOのような取引所による審査や制約はない点が特徴的である。したがって、IEOのような「抽選」ではなく「先着順」になる。その結果、投資家は高い手数料(GAS)を積んでIDO開始直後、最初のブロックに取り込んでもらうことを目指す必要がある。
岩壷健太郎 (いわつぼけんたろう)
岩壷健太郎
神戸大学大学院経済学研究科 教授 早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学経済学研究科修士課程修了、UCLA博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、一橋大学経済研究所専任講師を経て、2013年より現職。財務省財務総合研究所特別研究官、金融先物取引業協会学術アドバイザー、日本金融学会常任理事を兼務。為替、株式、国債、コモディティの各分野で論文多数。主要著書として、『コモディティ市場のマイクロストラクチャー』など。