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急落相場の覚醒(Episode1)ハッシュ・ウォー

2018-11-20 18:32[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号通貨 ビットコイン ビットコインキャッシュ

昨日のコラムでご紹介した通り、BCHの”ハッシュウォー”でABCがコスト見合いの水準に戻りつつあるのに対し、SVがコスト度外視で追いつき、一時逆転していました。これに対し、分裂前にはSVにリードを許しながら分岐と同時にBTCから大量のハッシュレートをBCHへシフトしてABC優勢の道筋をつけたロジャー・バー氏が率いるマイニングプールBitcoin.comが再度ハッシュパワーをBCHへシフトして再逆転をしたのですが、BCH全体の価格下落に歯止めをかけるには至りませんでした。

その後の動向を見ると、SVの急速にハッシュレートを低下、足元では1500PH/s前後となっています。一方でこの動きを見たABCも一時の6000PH/sから4500PH/s程度まで低下させています。この水準で試算*すると、現在のBinanceにおけるBCHABC/BTC(0.045)・BCHSV/BTC(0.0128)の水準から勘案すると、赤字幅を大幅に縮小した水準となっています。実は、昨晩の水準ではほぼトントンの水準になるはずだったのですが、そこから相場が大きく低下しているため、このハッシュレートでもまだ赤字が残る形になっていました(BCHABC 27000円→23000円、BCHSV 11000円→6500円)。この背景には、ツイッターなどを見る限りSVの中心人物クレイグ・ライト氏はファイティングポーズを崩していないが、周りのマイナー達は既にSVの元を去り始めている可能性があると考えます。

今回の騒動がBTCおよび仮想通貨全体に飛び火した背景に、以前から申し上げてきたようにSVが優勢になると(Bitmain社という予想に対し、実際にシフトしたのはBitcoin.comでしたが)ABCがBTCからハッシュパワーをシフトした結果、BTCのハッシュパワーが下がり始めたことが挙げられます。詳細は別稿に譲りますが、小職はBTCの価格の源泉が消費電力など採掘に要したコストという立場は採りませんが、価格が上昇すれば採掘コストが高くてもマイニング収益が上がるのでマイナーの競争が激しくなりハッシュレートは上昇し、価格が下がれば高コストのマイナーから採掘を諦めるのでハッシュレートは下がるといった様にある程度の因果関係はあっても不思議ではありません(ここ1年を見る限りあまり相関関係は見られませんが)。そうした直接的な関係以上に、これまで右肩上がりで上昇してきたBTCのハッシュレートの下落は市場心理に悪影響を与えていると考えます。

本稿のテーマであるハッシュパワーの推移から考えるに、今回の弱気相場が落ち着くにはBCH分裂騒動が収まり、交換所やメディアがBCHと認めつつあるABCの安定稼働(もちろん採算の取れるハッシュパワー下での話ですが)が確認され、BTCにハッシュパワーがきちんと戻る事が必要と考えています。BCHのハッシュレートを見る限り、そうした動きは見られ始めていますが、現水準で両陣営のマイニングが黒字化するにはABCで3500PH/s SVで1500PH/s程度まで下がる必要があり、もう一息必要かもしれません。相場が落ち着くにはあと1-2週間必要だと考えます。

急落相場の覚醒(Episode2)歴史の逆襲へ続く…

*マイニングにはマイニング機器が発する熱を冷ます空調代や機械の減価償却、場合によっては場所代や人件費もかかるのですが、ここでは限界的なコスト試算という事で電気代のみを勘案、稼働率も100%としてベースとなる機器も代表的なBitmain社のS9(14TH/s 1320W 同社HPによる)でマイニングしたと仮定して計算しています。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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