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2018.11.22【セリング・クライマックスを占う】

2018-11-22 21:36[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ リップル イーサリアム ライトコイン



Review

SV派巻き返しにより再び下落

今週のBTC相場は大幅続落。前週はSV派優勢を嫌気したBCHの下落をきっかけにBTCがレンジを下抜け、一時60万円台を割り込んだが、ABCの逆転劇により相場は落ち着きを取り戻しました。KrakenやHuobiなどはABCをBCHとして扱うなど事態の収束に期待して63万円台に値を戻していました。しかし、SV派のクレイグ・ライト氏がXRPなどSV以外の様々な通貨に攻撃的な態度を示し、また一時はABCが圧倒していたハッシュパワーをSVが逆転したこと、更にHoubiが予定していたABCの入金再開を延期したことからBCHが急落、BTCも急落しました。ABC側がSVを追い抜いたこともあり一時50万円台前半で下げ止まりましたが、Bakktの延期もあり45万円台までの急落を見せました。その後、SV派のスポンサー、カルビン・エアー氏が停戦を持ちかけ50万円台に戻しましたが、クレイグ氏が徹底抗戦の構えを示すと50万円前半で上値の重い展開を続けています。

Outlook

いつ、どこまで下がるのか

来週のBTC相場は引き続きABCチェーンが安定して推移するかを見ながら、徐々に底値を固めていく展開を予想する。今週は3回シリーズでこの急落相場の落ち着きどころを分析した。市場が下げ止まるには①ハッシュウォーに関しては、未だに高すぎる、特にSVの赤字採掘が是正されることが必要と考える。②2013年12月をピークに2015年1月に底を付けた相場を参考にすると、まずピークから1/3を底に1年近く好材料にも反応しない相場が続き、最後にそこから4割程度の下落を見せたところがセリングクライマックスで、きっかけは悪材料の出尽くしだった。今回で言えば、ピークの213万円の1/3にあたる71万円近辺でサポートされていたものが底抜けすると42-3万円あたりが底値の候補となる。ポイントは悪材料の出尽くしであり、今回のBCHの分裂騒動やBakktの延期、更にテザー騒動の着地辺りがきっかけとなるか。BCHにしてもテザーにしても、もう少し時間がかかりそうだが、今回の46万円という安値はレンジの下限から1/3程度下げており、この水準が今回の底値であったとしても不思議ではない。そして③今回の騒動で失ったのは仮想通貨の価値の根源であると考える信用、それもブロックチェーン技術に対する信用だったと考える。従ってABCチェーンが、SVの攻撃に耐えるか、SVが攻撃を諦めるかし、安定して推移することが条件となる。

SVの懐事情

先週はハッシュパワーでABCが優勢になっているが、コスト的にこの水準は維持できないので、元に戻した時にどうなるかに注目したいとした。最近の相場(BCH ABC≒BCH 24000円程度)では電気代が1kWhあたり5円で計算すると3800PH/sあたりが損益分岐点。電気代以外のコストも勘案すると3000-3500PH/sあたりが許容範囲と言えそうだが、ABCがその水準に戻ろうとするとSVが伸ばして逆転しようとする関係が続いている。しかし、SVの価格は6000円程度なので、ABCの1/4すなわち1000PH/s弱あたりが損益分岐点となる。SV内部でどのような会話がなされているか不明だが、一度はそのコスト水準まで引き下げるも、再び4000PH/s近辺まで引き上げている。おそらくこの水準がSVの限界なのであろう。しかし、このフル稼働状態だと、電気代だけで1日35百万円の赤字となる。もうほぼ決した勝負に費やす費用としては無視できない。こうしたことからビジネスマンであるカルビン・エアー氏は停戦を呼び掛けたのだと考える(試算方法に関しては別稿ご参照)。

矛を収めるタイミング

来週、28-30日にロンドンでCoingeek Weekが開催され、カルビン氏とクレイグ氏が登壇し、注目を集める。その前日にはSV派のマイナーを集めたイベントもあり、その辺りでクレイグ氏も矛を収めるのではないだろうか。大富豪といえども、やはり1日35百万円(もしくはそれ以上)の赤字は効いてくると考えている。

予想レンジ BTC 40万円~70万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は大幅下落、BCH分裂騒動に端を発したBTCの急落に連れ安となった。15日のICO ratingのレポートでは第3四半期のICOは2030億円と第2四半期の9350億円から8割減となっており、上値の重さを確認する展開。米SECからも2つのICOトークンが証券と認定され罰金を課せられた。一方でETHを含むETP(上場投資商品)がスイスの取引所に上場されるという報道も反応は限定的だった。すると、BCHの分裂騒動で対立するABCへの攻撃を示唆しているクレイグ・ライト氏がICOトークンどころかETHまで証券法違反だと言い始めると、攻撃の矛先が向くことを嫌気してETHにも売り圧力がかかり始めた。ただ、ステーブルコインなどプラットフォームとしてのイーサリアムの活用は広がっており、遅延してはいるがアップデートが進むことで分散型のグローバルコンピューターとしての地位を固めつつある。一時的なICOにからむ需給ギャップで上値が重い展開が続いているが、第3四半期にここまで下がれば、今後の下げ余地は限定的と考える。SECによりICOトークンの取扱いが明らかになれば、証券にあたらないICOが復活するとの思惑からETHは大きく値を戻すと考える。

XRP:先週の仮想通貨全面安の展開の中、比較的堅調な推移を見せていたXRP相場だが、今週は流石にBCHやBTCに連れ安となり、相場の下げは限定的だった。BCHの分裂騒動、特にクレイグ氏のABCチェーンへの敵対心を隠そうとしない姿勢は、BTCやBTCなどを支えるPoWという制度自体への不信感となり、逆にマイニングを必要としないXRPが買われる展開となった。しかし、そのクレイグ氏がXRPは証券だ、詐欺だとコメントし始めると、流れ弾が飛んでくるとの不安感からBCHやBTCと連れ安となり、50ドルを割り込んだ。その後、中華系のBit-Zが対テザーでのXRP取引を開始したこともあり底堅く推移している。今週はBCH騒動のとばっちりを受けた形だが、仮想通貨全体の中では堅調な推移を見せており、また時価評価2位の地位も確実なものとしている。相場の回復局面では大きく値を戻す展開を予想する。

BCH:ハードフォークに際し、クリプト・ゴッドことロジャー・バー氏率いるBitcoin.comがハッシュパワーをBTCからBCHへ移動させ、SVに圧倒的な差を付け勝負ありと見えたハッシュウォーだが、この対立に勝者はおらずどちらが負けが少ないかというバー氏の発言はBCH自体の信用を失墜させやや軟調に推移、しかしKrakenやHuobiなどがABCに軍配を上げる動きも見え始め4万円台を回復した。しかし、クレイグ氏が見境なく他チェーンへの敵対心を露わにし、またハッシュレートを下げ始めたABCをSVが追い抜くなどSV側の反撃の動きを嫌気すると、HoubiのABC入金再開延期の報にBCHは急落した。Bitcoin.comが再びハッシュパワーを戻したこともあり一旦は落ち着きを見せるが、ABC入金が開始されるとSV側の付与されたABC売りもあり3万円を割り込んだ。しかし、SVのスポンサーで最大のマイニングプールを率いるCoingeek率いるカルビン・エアー氏が” I have a plan to end the world’s first Bitcoin hash election”という停戦提案とも受け取れるコメントを出すと値を戻し、一方ABCは分岐したサイドからの攻撃を防ぐリオーグ・プロテクションを装備した新しいバージョンを発表、これで一気に終戦に向かうかと思われた。しかし、依然としてクレイグ氏が徹底抗戦の構えを示すと相場は反落した。結局、民主的にマイナーの支持で方向性を決めるとされたハッシュウォーは採算度外視の意地の張り合いによりPoWという仕組みが成り立たないのではないかという疑問を産み出した。また、エアー氏は停戦を呼びかけ一時はハッシュパワーを採算ラインに近い1000PH/s近くまで引き下げたが、足元では4000PH/sにまで増やしABCを逆転している。既に、ABCをBCHとして扱う交換所やサイトが続出しており、また両チェーンが元の一つに戻る可能性は消えているのにハッシュパワーを下げてはおらず、いわば停戦を提案したが武装解除はしていない状況が続いている。ただ、足元の価格およびハッシュパワーでは電気代を1KWh5円で見積もってABC側でなんとかチャラ、SV側は1日3-4千万円の赤字を垂れ流している状況。事態が収束するのは時間の問題と考えるが、相場の回復にも多少の時間はかかろう。

LTC:先週と同様、目立った材料もない中、他の通貨に振らされるだけの展開。LTCを含むETP(上場投資商品)がスイスの取引所に上場されるという好材料があったが、BCH騒動はLTCも採用しているPoWに対する不信感につながることから上値の重い展開が続く。その後はBCHやBTCの下落に連れ安となっている。BCHのハッシュウォーはBTCのマイナーがその気になれば、容易にLTCのチェーンで51%攻撃を仕掛けることが可能であることを露呈してしまった。引き続き、厳しい展開が続こう。

Calendar


11月24日 仮想通貨・ブロックチェーン業界合同企業説明会in東京
11月26日 第10回仮想通貨交換業研究会
11月26-27日 G20財務次官級会議
11月27日 Consensus: Invest 2018 Coindesk主催 Bakkt CEO登場
11月27日 Coingeek主宰Miner’s Day
11月27-29日 Coingeek Week カルビン・エアー、クレイグ・ライト登壇
11月29日 G20財務相ワーキング・ディナー
11月30日 CME BTC先物取引最終日
11月30-1日 G20首脳会議


FXcoin Weekly Report 2018.11.22.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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