2018.11.30【ハッシュウォー終戦か】

2018-11-30 20:56[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ イーサリアム リップル ライトコイン



Review

40万円割れ

今週のBTC相場は大幅下落した後、切り返し、下に行って来いの展開となった。既に先週末の時点でSV派のスポンサー、カルビン・エアー氏から停戦提案らしきものが出ていたが、同氏がSVはビットコインの継承者でありBCHの名に拘らないとするとクレイグ氏もようやく同調し、騒動収束の目途が立ってきた。しかし、相場の方はBloombergの仮想通貨最悪の1週間といった報道など悲観的な見方が払しょくしきれず、週明けには一時40万円を割り込んだ。SECヘスター議員のいずれETFは承認されるとの発言もあり46万円台に戻すも、ICOを巡るSECのコメントも嫌気され再び40万円をトライした。しかし、CoingeekがSVにリプレイプロテクションを実装し、完全に別々の通貨として発展を目指すとすると反発、ナスダックのBTC先物開始報道などもあり50万円近くまで値を戻している。

Outlook

信用問題に区切り

来週のBTC相場は市場の落ち着きを見ながら上値余地を探る展開を予想する。Coingeekのリプレイプロテクション実装の動きを契機に市場は落ち着きを取り戻している。今回の分裂騒動が仮想通貨相場全体の急落に繋がった理由はBitfinexの出金手数料引上げに端を発するテザー不安と分裂騒動によるPoWへの不信、すなわち仮想通貨の価値の源泉である信用が傷ついたことであると別稿で申し上げた。今回、手数料は高いがテザー社が一般顧客へ1テザー=1ドルでの交換に応じ始めたこと、そしてハッシュ―ウォーの終戦でこの両者に目途がついたと考える。年末にかけて元の三角持ち合いの下限レベルまでは値を戻す展開を予想している。

ハッシュレートは平時レベルへ

Coingeek Weekでは威勢のいい発言が聞こえてくるがSV陣営、特に最もコストを負担していたCoingeekのエアー氏の腹は終戦で固まっており、ここからの一波乱は考えにくい。その証左が先週もご紹介したハッシュパワーの落ち着きだ。直近24時間の平均で見ればABC陣営が約2000PHS、SV陣営が約1300PHS。この水準は、以前にご紹介した電気代のみの試算で、電気代が5-6円であれば何とか限界利益がプラスになるラインだ。これを見るに陣営を纏めるためのコメントをともかく、既に平常運転に切り替えていることが見て取れる。

各陣営のマイニング収支試算(試算方法に関しては別稿ご参照:単位は円)

予想レンジ BTC 40万円~70万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場はBTC相場に連れ下に往って来いの展開。先週末にBakktからBTC以外も検討との発言もあり14千円近辺で堅調に推移するも、BTCの急落に12千円割れ水準まで下落、その後持ち直すも、金融庁主催の勉強会で一部のICOに金商法適用を検討すべきという報道が伝わり、米SECのジェイ・クレイトン委員長がCNBSのインタビューで多くのICOは証券だとすると、再び12千円をわりこんだ。しかしBCH騒動の沈静化やBTC相場の回復もありETH相場も切り返すと、同じくクレイトン委員長がNYでのカンファレンスで再び有価証券にあてはまるICOプロジェクトを取締っていく姿勢を見せるも、地合いの変化か、ETH相場はむしろ上昇した。フィデリティ―・アセットのトム・ジェソップ氏が証券でないと確認できている時価総額の多い通貨から取引を始めるとすると、BTCとETHが有力と言う見方から14千円近辺まで値を戻している。需要の先食い的性質のICOが第2四半期から第3四半期にかけて激減した影響でさえない値動きを続けているが、第3四半期の調達額が極端に少なかった故、今後はその影響が軽微となると考える。開発チームは2019年6月に新たなアップグレードを発表しており、ワールドコンピューターとしての地位は益々重要となる可能性が高い。仮想通貨相場の回復局面では大きく値を上げる可能性があると考える。

XRP:先週末にリップル社最高戦略責任者コリー・ジョンソン氏がXRPは既に実用面でBTCより使用されているとするなど堅調に推移していたが、BTCの急落に40円割れまで急落。コインチェックのXRP取扱再開もあり値を戻すも再び40円割れとなった。CoinpostによるxCurrentユーザーがxRapidにスムースに移行できるxCurrent4.0導入状況に関する記事や世界銀行主催イベントにリップル社が参加するとのニュースにじりじりと値を戻すが、上記カンファレンスでSEC委員長がXRPの証券問題に関し明言を避けたこともあり上値を重くしている。他の通貨の実用性がまだ技術開発や将来の普及を夢見ている段階なのに対し、XRPは技術開発の段階を終え、ユーザーへの普及段階に移行しつつあると言える。そうした中、以前申し上げたFASBやホワイトハウスからのお墨付きや今回の世銀イベントへの出席など当局との良好な関係を保つこともグローバルビジネスを動かすには必要不可欠な動きと言えよう。実用性でリードを広げるXRPが12月の相場の牽引役となる可能性もある。

BCH:コストを度外視したハッシュウォーを嫌気してかCoingeekを率いるカルビン・エアー氏の停戦提案に元自称サトシでクレイグ・ライト氏が徹底抗戦の構えを見せていたが、エアー氏がSVはビットコインの正当な継承者であり、ビットコインキャッシュの名前には拘らないというロジックを編み出し、これには暴走気味だったクレイグ氏も同調、SVが急騰するなど事態は収束方向に向かうと思われたが、その後、BCHは急落。これを見てかCoingeekは今までABCの実装が噂されながら実現しなかったリプレイプロテクションをSV側が実装し、ABCとは別のBSVとして新たに出発する意向を示すとようやく値を戻し始めた。時価総額データなどで権威のあるCoinMarketCapでもBSVとして時価総額7-9位程度の独立した通貨として記載を始めた(月報のチャートはABC・SV合算)。注目のCoingeek WeekではBTCやBCH(ABC)への批判が多く聞かれた模様だが、上記のSVはビットコインの継承者であるから、今後はABCとは決別するという基本線は守っており、クレイグ氏の講演もインターネット2.0と大分穏やかなものだった模様だ。BCH(ABC)が問題なく存続することはPoWへの信頼を守ることも示しており、仮想通貨相場自体は落ち着きを取り戻すものと思われる。ABC,SV両陣営ともハッシュパワーも通常運転に戻っており、5割を超えるマイナーも姿を消している。ただ、今後は両陣営から付与された互いの通貨の換金売りも予想され(これに関しては自陣の買い支えに向かえば問題なさそうだが)、また今は安定しているが、いつでも51%攻撃が可能だという事を示してしまった点は痛恨だった。決済面での利用拡大は非常に遠のいたと言え、相場の戻りも限定的か。

LTC:先週と同様、目立った材料もない中、他の通貨に振らされるだけの展開。一時は、単独の通貨として認められ始めたBSVに時価総額で抜かれ9位に転落する局面も見られた。幸い相場はリバウンドし、上位通貨の中では珍しく週を通してプラス圏での取引となっている。そうとは言っても、LTC独自のヘッドラインは殆ど目にすることはなく、引き続き存在意義が問われる厳しい展開が続いている。

Calendar

12月3-7日 MONEYVAL欧州議会AML/CFT委員会会合


FXcoin Weekly Report 2018.11.30.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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