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ハッシュレートの低下:番外編 51%攻撃のコスト試算

2018-12-04 19:32[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ

今回のBCH分裂騒動で判明した都合の悪い事実のひとつに、BTCから容易にBCHにハッシュパワーをシフトして過半数を握ることが出来ることが判明したことだ。一時的に採算を度外視してしまえば51%攻撃をしかけることは可能だし、そのコストも経験的に大体分かってきた。若干、救いとなったのはSVの最大のマイナープールCoingeekがカナダの上場マイニング会社Squire Miningに売却されたことだ。同社のCEOもCoingeek出身で関係は深いとされるが、上場企業のガバナンスの下に入ったことは意味があろう。同じ文脈でSBIのシェア拡大も待たれるところだ。
一方で、相場の低迷によって電気代の高い地区のマイナーが脱落している可能性があるBTCのマイニングはどうだろうか?下図は過去24時間のマイニングプールの分布だが、最大でも15%で、過半数を握るプールは現れていない。しかし、それぞれ15%を占めるBTC.comとAntPoolいずれもBitmain社が運営しているとされており、合わせれば30%を占めている。ただ、これらは同社が個々のマイナーを募ってプールに仕立て上げているだけで、運営に疑問を持てばマイナーはいつでもプールを変えることは出来る。ここでは頭の体操として、今15%を占めているマイナープールが、過半数を取るために必要なコストを試算してみよう。


仮に現在のBTC全体のハッシュパワーを40,000PTSとすると、その35%を獲得するには14,000PTS(=14,000,000THS)必要になる(本当は35%を足すので18,900PTSとなるが簡単化のため)。これを準備するために14THS・1320WのASICを中古で1台10万円で購入すると仮定すると、このASICを100万台分で1000億円。従って、初期費用は1000億円+100万台分の設置費用と場所代など。ランニングコストは、1320Wのマシンを1台1時間稼働させると1.32KWH電力を消費、中国など1KWHあたり5円程度の世界最安値水準なら1日158.4円。これを100万台稼働させると電気代は1日158.4百万円。因みに東京電力のスタンダードプラン、月300KWH超過分の1KWHあたり約30円で計算すると1日950.4百万円となる。これに空調代がプラスとなる。すなわち1000億円以上の初期費用と1日数億円のランニングコストを支払えば、BTCのコミュニティーを1日貸切ることが可能ということだが、人によって価値観は異なると思うが、小職にはやや高すぎる気がする。そもそも、コストをかけて51%攻撃に成功してしまうとBTC価格が暴落するので、攻撃によりいくらBTCを手に入れても意味がなくなってしまう、従ってBTCの51%攻撃はコストに合わず、実際には発生しないと考えられている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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