2018.12.07【SV価格がABCを逆転、時価総額5位へ】

2018-12-07 20:05[ 松田康生

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Review

年初来安値更新

今週のBTC相場は揉み合い推移するも、安値圏でじりじりとレンジを切り下げる展開となった。BCH分裂騒動はCoingeekの加Squire Miningへの身売りという形で幕を閉じた。テザーに関する不安も後退し、週初は上値トライするも48万円台で失速。米SECがICO違法販売への取締りを強化していることや北朝鮮のハッカー絡みの報道、また北京市高官のSTO違法発言などのネガティブなニュースが影響するも、Nasdaq関係者が来年BTC先物開始報道を認め、同社やフィデリティ―が仮想通貨交換業へ参入予定のErisXに出資するといったポジティブなニュースには反応薄で、じりじりとレンジを切り下げ、CBOE分のETF承認の来年2月への延期に加え、ABCに対する民事訴訟が提起されたこともありSV価格がABCを逆転すると年初来安値39万円を割り込み、37万円台までの急落を見せている。

Outlook

底割れの理由

来週のBTC相場は市場の落ち着きどころを探る展開を予想する。11月に60万円台を大きく割り込んだ背景として、分裂騒動とテザー懸念による信用不安を指摘した。その両者に目途がついたことから、11月に付けた安値39万円を底に60万円台へ値を戻す展開を予想していた。しかし、先週はネガティブなニュースに反応し易い地合いが続き、遂に39万円を割り込んでしまった。この市場の不安心理の背景には何があるのだろうか。ひとつにはBTCのハッシュレートの低下が挙げられる。BTCのハッシュレートは8月のピークから3割近く低下しており、発掘コストにBTCの価値の源泉を求める立場からすれば価格に低下圧力がかかって然るべしとなる。しかし別稿でお話しした通り、価格の低下によりハッシュレートが低下している事が足元で起こっている現象であり、逆ではないと考える。もうひとつはハッシュウォー終結後もBCH(ここではABCをBCHとしている。なお、下図では分かり易いようにABCと記述している)が下げ止まらないことが挙げられる。BCHは1週間で4割以上下落、その結果、BTCも先週末から2割近い下落を見せている。

BCHとBSVが逆転

この背景にハッシュウォーに一区切りがついたことで、各交換所がBCH取引を再開し始めたことがあると考える。本邦交換所はSVの取扱い方針がまだ定まっていないが、海外ではBCHとBSVとして付与、取引を再開するケースが増え始め、この結果、SV支持派がBCHを売却してSVを購入に回っている動きが指摘されている。BCHは週を通して下落する一方でSVは堅調に推移、6日辺りからは仮想通貨全体が急落する中、2割近い急騰を見せて、遂に両者の価格は逆転した。一体、何が起こったのかと市場を不安にさせているが、もう完全に二つに分かれた通貨であり、価格が逆転しても何も起こらない。ただ、2つ付与された通貨を整理する動きが出ているだけだ。今後は、この逆の動きも見られるだろうし、仮に本邦交換所がSVを付与せず現金化して配布する方針となれば、SVに換金売りが出るであろう。これは騒動の再発と言うより、テクニカルな騒動の後始末と言うべき動きと考える。

4か月連続下落

Bloombergによれば2011年以降、BTCが月間ベースで連続して下落したのは2011年7月から11月の5か月が最長だが、今回は8月から既に4か月連続で下落している。その間にも機関投資家の参入に向けた準備や市場の透明化に向けた取り組み、更にはXRPを中心とした実用化が進んでいることを考えると、市場は悲観的に振れ過ぎていると考える。(上記の見立てが正しければ)今回のBCHの下落は予め予想できた動きであり、それに対する過剰な反応は、あたかも自分の影に怯える状態に近い。テクニカル的に重要な水準を割り込んだことにより、一旦は下値余地を探ろうが、こうしたBCHのテクニカル的な売りが一巡すれば、元の水準に向け相場は切り返すと考えている。因みに上記2011年の5か月連続下落した翌12月は43%上昇している。

予想レンジ BTC 30万円~60万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は軟調な展開。週初は時事通信によるICO規制で来年の通常国会での金商法改正を目指すという報道に、規制は厳しくなるが実質的に中断している日本でのICOが再開するとの期待、さらにETHの共同創始者であるジョセフ・ルービンがブロックチェーン技術やイーサリアムの発展を例に時価総額は実態を表していないとすると堅調に推移した。しかし、米SECによる違法ICO販売への取締り強化に加え、相場の低迷により資金難に陥ったイーサリアムクラシックの開発チームの一つETCDEVが解散するとし、前述のルービン氏が率いるコンセンシスがコンセンシス2.0として構造改革の為にリストラも辞さない姿勢を示すと相場に不安感が広がり値を下げる展開となった。ただ、リップル社のガーリングハウスCEOが指摘しているように、コンセンシスの組織改革は急速に拡大した事業をきちんと評価して整理するという企業として当たり前のことであり、また違法なICOの販売の取締りもむしろICO再開への一歩と考えられる。市場はやや悲観的になり過ぎていると思われ、大きな反発もあり得ると考える。

XRP:週前半は比較的堅調に推移していたが、BCHを始めとする仮想通貨相場全体の軟調さに連れ安、40円を割り込む展開となっている。材料的には、KuCoinに続き取扱高でTop10に入るBiboxでの取り扱い開始、以前別稿でご紹介したR3がXRPを使用しトレードファイナンス分野で仮想通貨決済を導入しようとする動きがいよいよ始動、先日のSBI側の発表に続きR3側から来年1月中の合弁会社の設立が言及された。また、リップル社は欧州でNEM財団など4社と合同で業界団体を設立するなど、他のコミュニティーとは一線を画す動きを見せている。今回のコンセンシスの組織改革に関連してブロックチェーンの実験自体はビジネスモデルではなく、現実の問題を解決するのにはベストな方法を見つけなくてはいけないと、いわば非中央集権に拘る他コミュニティーに対する勝利宣言とも取れるコメントをしている。先月のシンガポールでのイベントでタイ大手のサイアム商業銀行によるxRapid導入を仄めかしている。これらは、非中央集権と中央集権との採集的な決着はともかくとして、実用面でXRPが他を圧倒していることを示している。今回のPoWなどにまつわる仮想通貨への不信は、ことXRPに関する限り無関係で、今回の売られ過ぎた相場はいずれ大きく反発するものと考える。

BCH:SVのスポンサーだったCoingeekがカナダのSquire Miningへの身売りするとのことで今回のハッシュウォーを終結を見せた。買収先のCEOはCoingeek出身でSVと密接な関係があるとされるが、少なくともカナダで上場している企業であるため、今回の様な採算を度外視したり、他のチェーンへあからさまな敵意を見せると言った行動は自重されるからだ。そうした中、2万円台半ばまで値を戻したBCH相場だがずるずると1万円台半ばまで値を下げ、遂には急騰するSVと価格が逆転、時価総額5位の座も明け渡すこととなり、仮想通貨市場の悲観的なムードを主導した。また、CCNによればフロリダのUnitedCorpというマイニングを行っている会社が、今回の騒動で損害を被ったとして、Bitmain社やロジャー・バー氏、早々にABC支持を打ち出した交換所クラーケンなどを相手に民事訴訟を起こした模様。木曜から金曜にかけてのBCHの下げに関しては、同時期にSVが大きく値を上げていることもあり、ハッシュウォーが一服したことでBCH、BSVの取引が再開され始めた結果、SV派が付与されたBCHを売却しSVを買い支えていると指摘する声もある。そうだとすれば、いずれBCHの売りも一巡する可能性が高い。この場合、本邦の交換所でもそうだがBSVの付与方針がまだ定まっていないケースも多く、どこかのタイミングでもう一度のSVの売りはありそうだ。一方で、今のところ前述の原告企業とSVとの関係を指摘する報道は見られていないが、もし何らかの関連がある場合は、騒動の第2弾ということで市場の不安が高まるおそれもあり注意が必要だろう。

LTC:先週と同様、目立った材料もない中、他の通貨に振らされるだけの展開が続いている。フィデリティ―やNasdaqなどが出資して話題となったErisXにLTCも上場予定とのニュースに値を上げる局面もあったが、それ以外にニュースも見当たらず、良くも悪くも注目を集める上位通貨を後目に、時価総額でも順位を落とし、定位置だった5位から既に8位に転落、この位置もBSVに肉薄されている状況。見通しは明るくない。

Calendar

12月12日 Hong Kong BlockChain Summit 2018  Bloomberg共催 OKexスポンサー
12月12-14日  Hard Fork Decentralized(ロンドン)eToro IOTA Cointelegraph CEOなど参加

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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