2018.12.21【仮想通貨、急反発。どこまで?】

2018-12-21 22:09[ 松田康生

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Review

年初来最安値から3割反発

今週のBTC相場は年初来安値を付けた後、急反発。週末に35万円台の安値を付けるも米大統領首席補佐官に以前ブロックチェーン議連を立ち上げたミック・バルバニー氏を指名したこともあり下げ止まる展開。19日に控えた更改でDifficultyが10%近く下がると見込まれていたこともありハッシュパワーの低下に歯止めがかかったことも好感され40万円台に値を戻した。Bloombergがテザー社の裏付けとなる預金を精査したことで再び上昇を始めるとコインチェックの年内認可との日経のスクープで44万円手前まで上昇。韓国の交換所の出来高水増し疑惑やCBOEの先物最終取引日で40万円近くに値を下げるも、Reuter社のSEC委員長のETF承認問題やICO取締りに対し議会共和党が不満を高めているとの報道や仮想通貨を証券と見做さずSEC管轄から外すという法案提出もあり46万円台まで、実に安値から3割以上の反発を見せている。

Outlook

売り材料出尽くし

来週のBTC相場は堅調な推移を予想する。18日のトピック:急反発の背景:ハッシュレート低下に歯止め?および19日のトピック:売り材料出尽くしでBTC大底形成か?BTC上昇の影にBCH急騰あり。で申し上げた通り、今回の反発は、それまでの下落要因、BCH分裂騒動、テザー不安、ハッシュレートの低下に一応の目途がついた事による売り材料出尽くしと考える。ダマしであったが三角持ち合いを上抜けたかに見えた戻り高値74万円から年初来安値35万円まで下落した相場なので、半値戻しの54.5万円近辺が戻りの目途となる。その前に11月29日に付けた戻り高値である50万円近辺までは、行き過ぎた悲観論の巻き戻しだけで値を戻していくものと考える。加えて、今回の下落過程でマイナーのヘッジ売りが加速したとの報道もあり、そうした売り圧力の緩和や場合によっては買戻しが相場の原動力となり得る。

ドルから仮想通貨へのシフトを米国がリード?

ところで、New York Timesに米国は外貨準備の仮想通貨へのシフトをリードするべきとの記事が掲載された。筆者はコインベースの幹部なので同紙の意見では無いが権威ある同紙がこうした意見を掲載する事には一定の意味があると考える。内容は、ドルを外貨準備とするのは負担だから(米国にはこうした考え方が存在する。すなわち、ドルが基軸通貨である為、準備通貨・決済通貨としての需要でドルが買われ過大評価される。その結果、米国の競争力が失われ、貿易赤字となり、職を奪われる。実は、我々海外から見れば、それを上回る基軸通貨特権を享受しているのだが、人は得ている恩恵は忘れ、負担だけ気にするものらしい。この点に関しては別稿ご参照)、その役割を他国にでも仮想通貨にでも渡してしまえばいい。その代わり、他国が作った仮想通貨を使わされる羽目に陥らないために、30年以上前にインターネットの発展でイニシアチブを取った時のように、仮想通貨やブロックチェーン技術の発展でリーダーシップを発揮すべき、というものだ。

米国内の焦燥感

奇しくも、Reuterの報道で議会共和党からSEC委員長への不満が高まっているとされた。その規制強化の姿勢が民主党的だとされており、おそらくはETF承認の遅れやICOへの取り締まり強化などを指していると推測する。また、超党派での仮想通貨を証券法適用外とする法案も上奏されている。クリプト・ママと称されるヘスター議員は、SECは必要以上の口出しをして技術革新の芽を摘むべきではないとしているが、これらに共通しているのは、金儲けの邪魔になるといった業界団体などの利益を代弁しようとしているのではなく、次世代の金融技術もしくはそれ以上のイノベーションに米国が乗り遅れることへの焦燥感の現れではないかと考える。この議論がどこに繋がっていくのかといった詳細は別稿に譲りたいが、米国での議論の潮流が変わり始めている事が読み取れる。現時点の相場へのインプリケーションは、ホワイトハウスがお墨付きを与えたXRPにはポジティブと言えるかもしれない。

研究会報告書

本日、仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書が公表された。内容は既に自主規制として示されているものと比して主な変更点として、①証拠金取引を金商法対象にする②ICOを証券に準じた法規制を課す③不公正な現物取引を市場参加者全員に対し禁止する④仮想通貨の呼称を暗号資産に変更する、の4点が挙げられる。①と②は登録制だった交換業者に証券会社と同等の免許取得を義務付けるもので、それ以外のものも今まで法改正が必要で時間がかかるとされていたものを、来年の通常国会にかけようとするもので、このスピード感もG20の議長国として世界の規制および市場整備のイニシアチブをとっていこうとする金融庁の意欲が感じられる。この動きも、21世紀の金融革新に乗り遅れまいとする日本なりの焦燥感の現れかもしれない。一部には仮想通貨とブロックチェーンは別物という考え方もあるが、送金しかり、トレードファイナンスしかり、さらには証券化や起債など、具体的にブロックチェーンに代替されようとしている市場の多くはXRPかイーサリアムが絡んでいる。

まずは50万円トライ 

今回の反発はあくまで悪材料出尽くしで、ここから直ちに昨年のようなバブル相場になるとは現時点では考えていない。ただ、これだけの大相場の反発であり、少なくとも50万円前後までの戻りは見ておいた方がいい。

予想レンジ BTC 35万円~55万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は年初来安値圏から急反発。BTCの下落やICOプロジェクトからの売りもあり週末に値1万円を割り込むんだが、夏ごろに今回のBTC下落を予想したBitMexのアーサーヘイズCEOがETHの反発を予想、ETHアドレスが5千万を超えたとの報道もあり11千円台へ回復。ICOプロジェクトが過去30日間に40万ETH以上売り込んだとの報道もあり若干値を下げるが、BTCやBCHの急反発もあり再び上昇に転じた。議会共和党がICO取締りを強めるクレイトンSEC委員長に不満を抱いているとの報道や米下院に仮想通貨を証券法適用外とする法案が提出されるとICO復活に資するとして更に値を上げている。ただ下落局面でのICOプロジェクトからの売りは必要な資金を前倒しで現金化する動きで将来の売り圧力の減少となる。また先週申し上げた通り、11月のICOは年初来最低水準で需要の先食い的な動きはピークアウトしつつあると考えられる。まだ最終結論には至ってないが日米ともICO(STO)再開に向けた法整備が進んでおり、今後の需要を先読みした買いが入る可能性がある。

XRP:今週のXRP相場は安値圏からの反発。多くの仮想通貨が年初来安値を更新する中、週末には32円近辺で比較的底堅く推移。Huobi Japanが新規口座キャンペーンとしてXRPを無料配布するといったニュース、韓国企業が現時点ではxRapidは韓国国内では法制上利用不可といった硬軟材料あるもあまり反応は薄かった。しかし、リップル社ガーリングハウスCEOがAMA(ask me anything)でリップル社はXRPのエコシステムの一部で同社が無くなってもXRPは存続することを理由に証券でないとし、SECの見解を楽しみにしているとし、またBTCはBCHが急騰すると急上昇38円付近で揉み合うもイスラエル企業のリップルネット参加や世界的送金業者ウェスタンユニオンCEOが仮想通貨での送金に前向きな姿勢を示すと40円台半ばまで上昇、ETH欄でご紹介した米国における証券適用除外方針もサポートした形。リップル社は年次報告書でxRapidの銀行での利用はまだないことを明らかにしたが、その理由について同社関係者はXRPや仮想通貨の法的性質や規制が明確でないことを挙げている。従って、法規制の整備が進めば銀行におけるXRP使用が拡大する可能性が高いことを示している。タイのサイアムコマーシャル銀行は同国中銀の特区制度を利用して、実証実験の準備を始めているとの報道もある。既にXRPを利用した送金はFSB世銀ホワイトハウスのお墨付きを得ており、XRPの普及が拡大するのも時間の問題と考える。

BCH:今週のBCH相場は年初来安値を更新、9千円を割り込んだ後、25千円台まで急反発する荒っぽい展開となった。分裂騒動の最後の後始末として両陣営が保有する相手側の通貨の換金売り、特にSV陣営はある程度進んだと見られているが、ABC陣営の最大の保有者Bitmain社の動向が上値を重くし8千円台を付け、一時は時価総額でLTCを下回る展開。BCHとBTCとの同時受渡を可能とするアトミックスワップがリリースされたとのニュースもあり1万円台を回復するも、SV派のカルビン・エアー氏が来年の見通しでBTCはゼロになると未だに他陣営に攻撃的な発言を繰り返すと上値を重くした。またBitmain社のIPOに香港当局が消極的になっているとの報もあり、再び1万円を割り込むが、ハッシュパワーの下げ止まりやテザー不安の払拭もありBTCが上昇するとBCHも連れ高に。ロジャー・バー率いるBitcoin.comがBCHを用いたスマートコントラクトシステム構築を発表すると上昇を始め、目立った売り圧力が無い中、2万円台半ばまで暴騰した。今回の仮想通貨相場の反発(特に後半)を主導したBCHの反騰だが、行き過ぎた悲観論やそれに伴うショートポジションの巻き戻しを指摘する声も多い。一方で。ここまでの暴騰を見せた背景として、分裂したSV陣営からの売り圧力が一巡したことも挙げられると考える。場合によっては、既にBCH陣営からのBSV売りとBCH買いもこの相場を牽引したのかもしれない。即ち、先週指摘した分裂騒動の最後の後始末が順調に進んでいるとの見方が仮想通貨相場全体へ安心感をもたらしている。今しばらくはこうした買戻し相場が続こうが、その後の反落にも注意が必要だ。

LTC:今週のLTC相場は買戻し優勢。ライトニングネットワークの完成間近との見方が広まり堅調に推移、またBCHでリリースされたアトミックスワップが将来的にLTCにも対応するとの観測もサポートした形。値動き自体はほぼBTCに連れる形となったが、安値からの反発率で言えば、BTCの約3割に対し、LTCは4割近く上昇した。コミュニティーはこのライトニングネットワーク実装に向け盛り上がっており、もう一段の上値追いが期待されるが、現時点では小口決済利用に至る道のりは見えておらず、その後、反落する可能性が高いと考える。


FXcoin Weekly Report 2018.12.21.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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