イーサリアムクラシック51%攻撃の影響

2019-01-08 13:06[ 松田康生

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今朝方、米大手交換所Coinbaseがイーサリアムクラシック(ETC)の入出金を一時停止した。同社のツィッターによれば51%攻撃により1月5日に2重支払が発生したことが発見された事が理由とされている。国内でもコインチェックが追随している。これに対しイーサリアムクラシックの開発者たちはASIC製造業者のテストによるもので51%攻撃では無いとしている。事実関係はまだ不透明な部分があるが、この事の示す意味を考えたい。

51%攻撃とはPoWを採用するブロックチェーンにおいて過半数を占めたマイナーが自らに都合のいいようにブロックチェーンを書き換え、例えば2重支払などを発生させる行為だ。中央集権的な管理者が存在しないパブリック型ブロックチェーンの場合、2つの異なるチェーンが発生した際にどちらが正当か判断する管理者がいない為、長いチェーンを正当として採用することとされているからだ。ただ、それを行うには大量のハッシュパワーを要する一方で、その攻撃の結果、その通貨自体への信頼が失われ、価格が暴落、結局、自分で自分の首を絞めることになると考えられてきた。昨年、5月にブラジルの研究者がETCにおける51%攻撃のコストを試算した際にも、それだけのハッシュパワーを用意するなら素直にマイニングを行った方がいいとされていた。

しかし、市場参加者は昨年11月のBCHの分裂騒動で51%攻撃こそ行われなかったが、そのリスクを認知するに至った。即ち、BTCとBCH、ETHとETCの様にコンセンサスアルゴリズムが同様で互換性が高い通貨の場合、時価総額が大きく、ハッシュレートが高い通貨から、一時的にコストを度外視してハッシュパワーをシフトすることで、時価総額が小さい通貨をコントロールすることが可能である例を目の当たりにした訳だ。上記の研究によれば、当時のレートでETHのマイナーの2.5%をETCにシフトする事により51%攻撃が可能になると試算されている。攻撃対象のコインの価格が下落しても、ハッシュパワーを元に戻せば返り血も浴びない。いわば、ヒット・アンド・アウェーだ。BCHの分裂騒動は両陣営の意地の張り合いがハッシュパワーのシフトを促したが、そのことが寝た子を起こした可能性がある。

この結果、①規模の小さいコインの淘汰②PoWからPoSへのシフト③無意味なハードフォークへのけん制などが考えられる。世界最高峰でマイナイング競争を行っているBTCや、規模が大きくASIC排除の動きを進めているETHなどは安泰だろうが、何らかの対策が打ち出されなければ、ETCやBCH/BSVなどは厳しい展開が予想される。最終的にBTC以外では数えるほどしかPoWは生き残れない可能性があろう。また、PoWを採らないXRPには一時的に買いが入る可能性もあろう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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