「金融庁がETF承認を検討」報道を考える

2019-01-09 19:27[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

7日Bloomberg社が日本の金融庁が仮想通貨ETF承認を検討している(原題:Japan Explores Crypto ETFs After Snubbing Futures)と報じて話題になった。昨年後半は米SECによるETF承認があたかも機関投資家参入へのお墨付きとして注目を集めており、また来月に控えるCBOE分とされるETF承認可否判断期日も大きな材料とされている。一方で、日本に関しては、先日公表された仮想通貨交換業研究会の報告書でもETFという言葉は見当たらず、CoinpostによるJVCEA奥山会長のインタビューでも、検討されている可能性は考えられるとしつつも初めて聞いた話としている。そのせいか、市場でもこの材料に関して判断しかねているというのが実情ではないだろうか。以下では、相場の材料としての影響について考察してみたい。

日本で仮想通貨ETFを実現させるにはいくつかパターンが考えられる。小職なりに思いつくところで、①海外(カナダ等)で上場済の仮想通貨ETFに投資するFund of Funds②仮想通貨に連動する債券(ETNとか)投資ないしトータルリターンスワップをして組成する債券投資ファンド③先物市場に投資するデリバティブファンド④現物をコモディティーとして購入しカストディアンに預ける商品ファンドなどが挙げられる。①と②は関係当局が認めれば外国ETFとして現法制下でも対応可能と思われるが、仮想通貨デリバティブを冷たく扱う(Snubbing)一方でETFを検討しているという記事の内容からしておそらく③を指しているものと考えられる。④に至っては仮想通貨現物をコモディティーとして投資信託の対象としカストディーも整備する必要があり、4つの選択肢の中で最もハードルが高いと考える。

では③の仮想通貨デリバティブ、すなわち先物ないし証拠金取引に投資する国内ETFファンドを開始するのに必要なものは何だろうか。東証の上場規程によれば内国ETFは金商法で規定された投資信託であって特定の指標の変動率に一致させるよう運用する必要がある。金商法上で規定された投資信託とされるには投資対象が金商法で規定されたデリバティブである必要があるが、現時点では仮想通貨デリバティブは金商法の対象ではないとされており、ETF実現には同法(もしくは内閣府令)の改正が必要だ。ところが、上述の報告書では利用者保護の観点から「仮想通貨デリバティブ取引については、これを禁止するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていく必要がある」とされており、図らずも国内ETF実現に向けた最大の障壁が解決されようとしている。Bloombergの記事は関係者の話としているが、報道はこのことを指しているのではないだろうか。

そうすると、例えば3月頃に金商法改正案が提出され、うまく可決したとすれば、国内ETF実現に向けた大きな第一歩と言えるかもしれない。しかし、実際の実現には公正な先物ないし証拠金取引市場と指標の存在が必要であり、それ以外にもやるべきことは山ほどある。既にいくつもの申請が出され、審査基準も明確化されつつある米国のETFと比較すると、その実現には少なくとも1年以上の隔たりがあると考えるのが自然だろう。上記報道の解釈が果たして正しいかはどうかは別として、この材料は売りでは無いとしても、直ちに買える材料でも無いと考える。

なお、記事が言うように仮想通貨デリバティブが金商法対象となれば、証拠金取引を提供する交換所に外為FX業者と同様に金融商品取引業者第1種の取得が義務付けられ、販売員も証券外務員資格の取得が義務付けられる可能性もあり、新規参入のハードルは上がる。一方で外為FXと同様に源泉分離課税の適用が議論される可能性がある。藤巻参議院議員の活動もそうした事を念頭に入れていると思われる。BTCが2013年をピークから8割下落した相場は、EUが仮想通貨取引を非課税としたことをきっかけに反騰した。おそらく2020年以降となろうが、こちらの議論が盛り上がれば相場は急騰すると思っている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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