2018.1.18【合意なき離脱懸念で、新規口座殺到】

2019-01-18 21:17[ 松田康生

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Review

祝、芥川賞受賞

今週のBTC相場は横ばい推移。39万円を中心とした狭いレンジでの揉み合いとなった。Bitmainのウー・ジハンCEO退任観測に続き、同社がテキサス・オランダ拠点閉鎖の報に38万円台まで下落するもBakktが老舗運用会社の株取得がCFTC承認に向けたAML/CFTの整備の一環と好感され40万円をトライ。しかしロシアの外準による仮想通貨購入がフェイクニュースとされBakktの承認が4月にずれ込むとの観測もあり上値を重くする展開。ニュージーランドでのハッキング事件やETHのアップグレード延期で値を下げるも、Binanceの英ジャージー州での営業開始などもあり下げ止まる。ハッキングされた通貨の一部をBinanceが凍結し、また前週のETC51%攻撃がホワイトハッカーのものと判明するとじりじりと値を上げ、再び40万円をトライしている。またマイニングをテーマにした小説ニムロッドが芥川賞を受賞、仮想通貨の認知度向上に一役買うか注目されている。

Outlook

反発するにはしたが、、、

来週のBTC相場は底堅いものの上値の重い展開を予想する。先週は、ロングポジションが解消されておらず若干の下押しはあろうが、期待感をくすぐる材料もあり反発を見せると予想した。実際、週前半に38万円まで下落するも40万円近くまでの反発を見せている。ただ、それ以上の上値追いが見られなかったのは、ロシアの外貨準備による仮想通貨買いという期待が早々に否定された事や米政府閉鎖が長引きBakktやETFの早期実現の期待が後退したことによるものと考える。加えて、先週も申し上げたBitMEXのロングポジションは寧ろ増加しており、来週も上値は重そうだ。しかし、今週も市場参加者の期待感から堅調な相場推移を予想している。

期待感(その1)

米政府閉鎖は過去最長を更新、もうすぐ1か月になろうとしている。これがいつ終了するかは何とも予想がつかないが、永遠に続くわけではないことも事実だ。共和・民主両党の協議は決裂したままだが、WSJによれば17日民主党のペロシ下院議長は閉鎖に終止符を打つ追加法案を可決すべく、来週にも下院を再招集する構えだ。この閉鎖によりBakktの開始が4月まで遅延するとの見方がSNSで出回ったが、ETFの承認作業にも影響を与える可能性が高く、仮想通貨相場の上値を重くしている。逆に言えば、政府閉鎖解除は仮想通貨相場にポジティブに働くと考える。

期待感(その2)

Binanceが英ジャージー島に交換所を開設、EURやGBP建て取引を開始したが、英議会での離脱協定否決により高まった合意なき離脱に向けて仮想通貨への資金逃避の受け皿を目指しているとされている。同社によれば、この交換所は早くも新規口座開設が殺到していると同社CEOは呟いている。昨日のトピックで述べた状況が現実味を帯びてきた形だ。同トピックで指摘した様にEUとの再交渉は容易なものでなく、仮想通貨の買い材料となることが予想される。

期待感(その3)

コインチェックの登録認可は既に観測記事が出ていたせいか、思った程、市場は反応しなかった。しかし、これを皮切りに次の新規登録業者への期待感が高まる可能性がある。それ以上に、コインチェックの登録は日本の交換業業界の喪明けという側面もある。マイニングを舞台にした小説ニムロッドの芥川賞受賞は業界への認知度を向上させる。ネット検索数など認知度が高まれば参加者も増加するとの見方もあり、市場の雰囲気が好転する可能性がある。

底堅いが上値は重い 

こうした期待感から来週のBTC相場は底堅い展開を予想するが、米政府閉鎖解除によりBakktやETF承認時期が早まるとの期待も、3月末に合意なき離脱に陥り大混乱の中、仮想通貨に退避資金が殺到するとの期待も、日本で次の認可先が出たり、仮想通貨へのネガティブな印象が一掃されるとの期待も、いずれもすぐに結果が出るものではなく、やはり期待先行の材料と言わざるを得ない。こうした材料から相場がさらに上昇すれば、溜まったロングポジションの重さから、早晩調整を迎えざるを得ない。従って、来週の相場は底堅く、上値が重い、狭いレンジでの取引を予想する。

予想レンジ BTC 35万円~45万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は揉み合い推移。週初はBTCの上下に振らされるもETC51%攻撃の一部が返金されたことやCoinbaseやKrakenなど海外大手交換所がコンスタンチノープルのアップデートをサポートするとしたこともあり比較的堅調に推移。しかし、同アップデートに脆弱性が指摘され急遽延期が伝わると下落。しかし、その迅速な対応やバグを事前に防いだコミュニティーの堅牢さが好感され徐々に値を戻していたが、BitMEXが多くのICOプロジェクトで運営側が5割以上の損失を抱えているとの報道もあり再び値を落とした。その後、CointelegraphなどでETC51%攻撃の被害が全額返済されホワイトハッカーによるものだったと判明するとじりじりと値を戻している。2度目となるアップグレードの延期は失望感を呼び、これが昨年11月であれば大きく売り込まれて不思議では無かったが市場は底堅さを見せている。やはりICOに絡む売り圧力がピークアウトしていることを示しているものと思われ、引き続き底堅い展開を予想する。

XRP:今週のXRP相場は揉み合い推移。BTC下落もあり34円台に値を崩すもBTC相場の回復やQuoineのキャンペーンもあり36円台に値を戻す展開。イーサリアムネットワークを用いたXRPクラシックなるものの登場が嫌気され上値を押さえられるも、英送金業者のxRapidでの送金報告などもあり値を戻している。先週のEuro Exim銀行が銀行として初めてxRapid採用したことが論議を呼んでいる。CNBCやフォーチュンなどの大手メディアはxRapidを大手銀行が採用した訳ではなく影響は限定的としたのに対し、Cointelegraphの取材に大口投資家セス・リム氏が反論している。リップルネットの参加者が200社を超え、xCurrentを利用する銀行は増えているが、xRapidの利用を表明した銀行は今回が初めてだ。ここでおさらいをすると銀行の海外送金には送金内容を伝達し決済銀行に支払指図を電文で送る伝達機能と、支払指図を基にコルレス口座間で資金を決済する決済機能の2つの機能がある。xCurrentはこの伝達機能をSWIFTからシフトするもので、変更不能なデジタルデータというブロックチェーン的な機能を利用するが仮想通貨は登場せず、法定通貨によるコルレス決済はそのままだ。これがxRapidになると送金銀行と受取銀行の決済を仮想通貨であるXRPを通じて行うという意味で画期的となる。すなわちxCurrentはブロックチェーン技術の書き換え不能という面だけ利用し、xRapidは抵コストで世界中の誰にでも瞬時に価値を移動できるという性質も利用する訳だ。利用者の利便性、更にコスト面で後者が有利なのは明白だが、なぜ銀行が導入しないかといえばリクィディティー・プロバイダー、すなわち送金銀行の法定通貨とXRP、受取銀行の法定通貨とXRP、この交換を同時に行う金融機関がいない、ないしは確立していないからだ。これを自行で行うのか、他行でカバーするのか、交換所でカバーするのか、その場合に売りと買いの価格は同じなのか、マージンを取られるのか、そうした事がまだ何も固まっていないからだ。主に個人相手の送金業者であれば多少のコストを顧客に転嫁しても銀行送金よりは安くできるが、銀行だとそう容易ではない。従って、今回のEuro Exim銀行がどうやってXRPと法定通貨との値決めを行うかは一つのテストケースとして多くの銀行の注目を集めることとなろう。そういう意味では、大騒ぎをするのは早計だともいえるが、やはり大きな一歩だと言える。CNBCでは「大企業にXRPが採用される確率はかなり低い」とされていたが見当違いも甚だしく、むしろこの決済を見て、大企業自らが銀行に頼らずに送金ができることに気付くことこそが本当の意味でのイノベーションを呼ぶこととなる。非常に低コストで海外赴任者に本社から直接給料を支払うことも実は可能になったのだ。パンドラの箱は徐々に空きつつあると考える。

BCH:今週のBCH相場は目立った材料も無く揉み合い推移。概ねBTC相場に連れて上下する展開となった。しかし、ウー・ジハン氏のCEO退任報道に続いて、Bitmainがオランダやテキサスでもリストラを行うとしたことが嫌気されてか週間で1割弱値を下げている。ETC51%攻撃はホワイトハッカーによるものと考えられるようになったが、この事はBCHにも警鐘を鳴らすこととなっている。また昨年の分裂騒動により決済面での利用拡大も期待薄となった。加えてメインのサポーターであるBitmainの弱体化はBCH価格推移にも影を落としている。

LTC:今週のLTC相場はBTCの動きに連れながら概ね横ばい推移。発行量が60百万に達したこともあり祝賀ムードの中、堅調に推移したがBTCに連れての上下をこなすと、創始者チャーリー・リーの偽SNSが出回ったこともあり上値を重くした。アルトコインの中での存在意義を見出しにくい厳しい状況が続いている。


FXcoin Weekly Report 2019.01.18.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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