Huawei起訴:米中貿易戦争激化と仮想通貨相場

2019-01-29 16:56[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン リップル

今朝方、中国通信機器大手Huaweiを米司法省が起訴したという衝撃的なニュースが入って来た。BloombergによればニューヨークでHuaweiと関連会社2社、Huaweiの孟CFOをイランとの取引に関わる銀行詐欺罪など13の罪で、シアトルで米大手通信会社TモバイルUSAからの企業秘密窃取などの罪で起訴、レイFBI長官は「米国の企業と金融機関を不当に利用し、自由で公正な世界の市場を脅かすHuaweiの恥知らずで強引な行為を暴く」と語ったとされる。今月30日31日に予定されている米中貿易協議への悪影響が予想されるほか、両国の貿易戦争は新たなステージに入ったと考える。

貿易戦争は解決しない

結論から申し上げると米中貿易戦争が円満に解決する可能性は無いと考えている。何を以って円満に解決というかにも依るが、最終的に中国が折れ続けるしか選択肢はない。今回の交渉経緯を見ても明らかで、昨年7月に米国が対中輸入品340億ドル相当に25%の追加関税を課すると、中国も同じく対米輸入品340億ドル相当に25%の追加関税を課した。相互主義といったところだろう。8月になると両国は更に500億ドル相当分に追加関税を課したが、9月にアメリカは更に2000億ドル相当分に追加関税を課したが、中国はここでこのチキンレースから降りた。米国から中国への輸出は1308億ドルに対し、輸入は5065億ドル(外務省)あるので同額ずつ関税をかけ続ければ、中国に関税をかけるモノが無くなってしまうのは最初から明らかだった。また、それぞれのGDP(米19.5兆ドル 中:12兆ドル 2017 IMF)に占める対中、対米輸出の割合も、米国が0.7%に満たないのに対し、中国は4%に上回る。米国には世論があるので単純には言えないが、普通に考えればこの勝負の行方は火を見るより明らかだった。ともすると日本のマスコミはトランプ大統領が無茶な主張をして逆に苦境に陥っているといった論調が聞かれるが、どうしてこのような単純なマクロ分析が出て来ないのか不思議になる。

自由貿易は万能か

一方で自由貿易を理由に米国を批判する声もあるが、やや的外れだ。自由貿易の理論的支柱はリカードの比較清算説だ。各国が比較優位な生産に集中することにより全体のパイが大きくなるという考え方だが、その結果、途上国のモノカルチャー化を呼び格差と貧困を拡大させる結果を招いた。そもそも比較優位に立つなら日本は直ちに農業を全廃すべきという政治的に受入不可能な結論に至ってしまう。理論的にも、リカード理論は失業者がいない世界を前提としており、失業者が普通に存在する世界では出来るだけ自国の労働者を職に就かせようとするのは当たり前だ。この点で、トランプ政策は理論的にも正しい。それでも尚、世界が自由貿易を標榜する本当の理由は世界大戦の防止と考える。現在の自由貿易の牙城であるWTOの前身GATTは1947年に創立された。大恐慌後のブロック経済化が大戦を招いた反省として、ブレトンウッズ会議においてIMF、世銀とともに設立が採択された経緯になる(発効までは若干紆余曲折あったが)。

本当の目的は安全保障

一方、中国が世界の工場として台頭したのは2001年のWTO加盟以降だが、その中国が経済的に成長し、米国にとって軍事的な脅威となりつつある。更に中国製造2025では先端産業で世界の先頭グループ入りを目指すとしている。今でこそ圧倒的数量の差を技術でカバーしているが、技術で追いつかれてしまうと対抗しようがなくなってしまう。好戦的な独裁国家が世界最強の軍事力を持ってしまう事を阻止する、そうした動機で米国は貿易戦争を仕掛けているのだろう。トランプ政権発足時からホワイトハウスで徴用され続けているピーター・ナバロ大統領補佐官は著書:米中もし戦わばの中で、中国は間違いなくアジアの平和と安定にとって脅威となるとし、サイバースパイや伝統的スパイ、リバースエンジニアリングを組み合わせて外国の軍事技術を盗み出しており、米中の技術的差は急速に縮小した結果、長期的には米中の軍事バランスは逆転しかねないと述べている。こう考えると明らかになってくるのが、米中貿易戦争も今回のHuawei起訴も安全保障上の戦略に基づいたものであり、米国が引く可能性は低い(もし、そうなったら日本は危機的状況に陥る)。そこまで言わなくとも、中国が他国の技術をコピーして成長を続けていること自体は世界の常識で、知的財産で言えば、ドラえもんや新幹線の際に日本が言いたくても言えなかったことを、米国が代弁してくれているだけのことであろう。

相場への影響

以上を踏まえた上で、相場に対する影響はどうなるだろうか。まず、米中貿易戦争は安全保障の問題であることから米国は引かず、一方で貿易の不均衡が解消することも考えにくいので、当面は解決しない。常にあり続ける問題なので、市場はリスクオフに反応したい時はこの問題が悪化したと言い、リスクオンに反応したいときは緩和したと都合よく解釈しがちになる。その結果、この問題が悪化し(たと言われ)相場がリスクオフに反応したら買い、リスクオンに反応したら売り方向で良いと考える。いわゆる逆向かいだ。仮想通貨に関してはリスクオン・オフ時の決まった動き方がまだ確立していないので判断に迷うところだが、まずは逆向かいだと考える。次に、ブロックチェーン技術に関しては中国に劣後してはいけない、創世記のインターネットを支援した様に国を挙げて産業を興していこうという動きが加速することが予想される。その場合、マイニングが中国に集中しているBTCでなく、XRPやその他のブロックチェーンが支持される可能性もある。実際、そうした視点からホワイトハウスとリップル社が定期会合を開いていることは以前お伝えした通りだ。最後に、この点が最も重要なのだが、このイベントが世界景気、特に米国景気にどのような影響を与えるか。金融市場ではいずれの市場でもこの視点が最も重要だ。この点は、前半でお伝えした通り、米国にとって中国への輸出のGDPに占める割合は0.7%に過ぎず、中国製品をシャットアウトすることで米国に雇用が戻ることで大半はカバー可能だろう。中国に関しても、いざとなればありとあらゆる対策を打ち出すことが可能であり、そもそも社会主義である中国に景気循環論が通用するのか疑問だ。ただ、こうした景気循環が仮想通貨相場に与える影響については次稿でご説明したい。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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