2019年アメリカ景気動向と仮想通貨相場

2019-01-30 17:55[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

昨日のトピックで米中貿易戦争の米経済への影響は限定的と述べた。しかし、やはり米景気後退を懸念する声は後を絶たない。こうした中、今年の株式市場や為替市場の変調を指摘する向きも多く、弊社サイトに特別寄稿頂いている田中泰輔も昨年12月にドルの上昇サイクルは終盤戦に入りつつあり、今後1-2年で90円台を視野に入れているとしている。年初にあたり今年の株や為替が上がるか下がるかという議論が多くみられる。もちろん、それらは多分にして、米景気次第なのだが、今年はその米景気拡大の継続性に大きな疑問符が付き始めているところが若干、例年と異なると考えている。以下では、何故、市場参加者が米景気を懸念し始め、またそれがどう仮想通貨相場に影響を与えるか考えたい。

長すぎた景気拡大局面

前出の田中泰輔氏は、景気の終盤入りのシグナルとして金利上昇を嫌がって住宅部門が失速していることを挙げている。また景気のリスク要因として米中貿易戦争の激化を挙げる人も多い。小職は前職だった昨年年初にはFRBのオーバーキルを問題視していた。ただ、おそらく殆どの人の頭の中にあるのは、米景気の拡大が長すぎるので、そろそろ減速するだろうという経験則だと考えている。下は70年代からの米国の実質GDP成長率(前年同期比)だが色掛け部分がいわゆるリセッションで、下の数字は景気拡大期の継続月数だ。景気拡大局面が観測史上最長を記録している状況下、誰だってそろそろ後退期が到来すると考えるだろう。問題はそれが今年なのか、来年なのか、再来年なのかだ。

景気拡大が最長記録を更新すると考える理由

一方で、IT化やサプライチェーンマネージメントの進展などにより在庫管理が最適された結果、従来のような在庫調整による景気循環は消滅したという考え方も存在する。いわゆる90年代に台頭したニューエコノミー論だが、世界から不況が消滅したというのは楽観的過ぎることが、その後の2度の不況によって証明されている。しかし、確かに在庫調整の影響が軽減されている兆しが見られないではない。上図の緑で印をつけた2015年後半から2016年前半に米成長率は減速を余儀なくされた。これは、米景気の回復と利上げ観測によるドル高により米輸出が停滞し、一時的な在庫調整を余儀なくされた。しかし、深刻な不況に至らなかったのは、産業構造の変化により、こうした伝統的な在庫循環が経済に与える影響が軽減されつつある証拠なのかもしれない。もしこの時に在庫調整が一巡しているのならば、過去最長の120ヶ月を超えて景気が持っても不思議では無い。更に度重なる利上げにより米国経済には利下げ余地がある。ねじれ国会の下で手足を縛られているとはいえども、インフラ投資など財政刺激策の余地もある。そうした中、現政権は何とかして大統領選挙のある2020年までは景気を持たせるのではないかと考えている。

仮想通貨が迎える初めての不況の影響

米景気の見通しに関して個人的に書きたいことは山ほどあるが、それはさておいて本題である仮想通貨相場への影響を考えたい。というのは、2009年に誕生した仮想通貨はまだ本格的な不況を経験しておらず、今年か来年か、いずれは到来するであろう米不況にどういった反応するのか定説が無いからだ。不況になったら、為替なら円高、金利は低下、株は世界同時株安を経てしばらくすると金融緩和による金融相場入りとおおよそ教科書的な値動きが定まっている。ひとつの参考になるのは2015年後半から2016年前半にかけた米プチ不況だ。この時のBTC相場は一貫として上昇している。これは2015年8月の人民元ショックを受け人民元安が進み、その資本逃避の受け皿となって上昇したとさている。

米不況は歴史的ショックを誘発する

この一例が今回も当てはまるのか否かは心もとないが、この事と前述の米不況の歴史を照らし合わせると見えてくるものがある。緑で示した米不況期間というのには公式な定義が存在する。全米経済研究所(NBER)によればマイナス成長が2四半期続いたらリセッション入りとし、景気の山谷を発表している。これによれば前回のリセッション入りは2007年12月、出たのは2009年6月だ。世間ではよく誤解があるが、2008年9月のリーマンショックは不況の引き金ではなく不況の結果なのだ。確かに、オイルショックやITバブル崩壊は不況の引き金となったが、ニクションショックはスタグフレーションの結果だ。このように、米国の不況は歴史的な危機を呼び起こす影響力がある。2015年の例は米国が風邪を引いただけで中国は肺炎にかかった良い例だろう。

相場の本格回復は2020年以降

次回の米不況がそこまで深刻化しないことを願うばかりだが、仮想通貨にはそうネガティブではないかもしれない。2019年は何とか景気を持たせ、不況入りが早くて2020年後半から2021年とすると、BTC相場は、2019年中は底堅いが上値も重く小幅なレンジ相場が続き、本格的な相場上昇は2020年に入ってからという弊社見通しとも整合的だ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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