2019.2.1【ETF申請取り下げ→再申請】

2019-02-01 17:47[ 松田康生

Monthly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ リップル イーサリアム ライトコイン



Review

期待先行

1月のBTC相場は当初は期待感で上伸も、その後軟調に推移した。年初は不安定な為替・株式市場に方向感の無い取引となったが、パウエルFRB議長が利上げペースの見直しを表明、株式市場が値を戻すと、BTCは年始のレンジを上抜け44万円台へ上昇。しかしETCで51%攻撃が観測され、またビットメインのウー・ジハンCEOの退任が報じられると40万円近辺へ値を戻した。米政府閉鎖によりETFやBakktの審査に影響が出るとの懸念も上値を重くさせた。トランプ大統領が重大発表を行うとすると41万円台まで上昇するも、その後の妥協案を民主党が拒否すると一時37万円台まで値を下げた。その後、ETF申請が取下げられ、閉鎖が解除されても40万円台回復に失敗すると値を下げはじめ、36万円台の安値を記録した。その後、フィデリティ―のカストディー3月開始報道やアルトコインの反発もあり、若干値を戻している。

Outlook

昨年の安値でサポートされるか

先月のBTC相場は、年始は比較的楽観的な年間見通しを背景に買いが優勢となったが、ETCの51%攻撃、国内ETF承認検討報道の否定、米政府閉鎖長期化によるBakkt開始延期、更にビットメインやブラックロックの人事など悪材料が続いたこともあり反落。その後も、その後フェイクニュースとされたが経済制裁を嫌ったロシアが外貨準備にBTCを加えるとの期待や、英議会のEU離脱協定案否決による合意なき離脱懸念からの仮想通貨への逃避買い期待、米政府閉鎖解除への期待など、期待先行で40万円台を回復するも、買い材料が続かず再び下落している。弊社の年間見通しでは40-65万円の狭いレンジでの取引を予想しているが、ここ数年荒っぽい値動きを続けているBTC相場がどうやったらそういう凪相場を実現するのか若干疑問であったが、1月11日のWeekly Reportで申し上げた通り、今年はこうした期待が先行して上がっては、材料がついて来ず振り落とされる展開が続くものと考えている。現在の水準は上で申し上げた40万円を割れているが、年間見通しを見ていただくとお分かり頂けるのだが、予想は3か月毎の月末時点での予想を繋げて算出しているもので、月内のレンジとしては上下5万円、すなわち35万円から70万円程度のブレが生じるとご理解いただきたい。従って、足元の水準は36万円台だが、昨年の安値35万円ではサポートされると考えている。但しその当時から円高が進んでいるので、ドル建ての安値は割らないが、円建てでは一瞬タッチする可能性はあるが、円建て・ドル建てともに明確に昨年の安値を割り込むようであれば、昨年の悲観的相場からは脱するという見立てが誤っていることとなり、見通しを修正させて頂きたいと考えている。

昨年12月との違い

昨年の安値を割り込まないと考える理由は、売り材料が無いことだ。昨年の安値はテザー騒動とBCH分裂騒動により仮想通貨への信用が揺らいだことだ。その両材料とも落ち着いた現時点での売りは、昨年安値を割り込めば相場が走るだろうと考えるスペック勢の売仕掛けと考えられる。即ち、先に売って、買い方に投げ売りさせて、そこを買い戻す作戦だが、ここまでホールドした買い方が35万円を割り込んだ程度で投げ売りをするのかは疑問だ。材料的にも、ETFの早期承認は遠のいたが、VanEck社が言う通り、いずれ再申請をする。米政府閉鎖暫定期限となる2月15日が一つの焦点となるが、ここさえ乗り越えれば、ETF再提出、Bakkt承認期待が再燃するのではないか。少なくともカストディーサービスは整いつつある。月次のアノマリーで見ても上昇・下落がほぼ半々であった1月に比べ2月は比較的上昇しやすい傾向にある。また弱気相場の継続性に関してもこの6か月連続というのは過去最高だ。今月も35万円ではサポートされ、反発するが上値も限定的と考える。

予想レンジ:35万円~50万円



Topic

イーサリアムクラシック51%攻撃の影響
ETHとETC、BTCとBCHなどコンセンサスアルゴリズムが同様で互換性が高い通貨の場合、時価総額が大きい通貨からハッシュパワーをシフトすることで時価総額が小さい通貨をコントロールすることが可能であることが示された。この結果、①規模の小さいコインの淘汰②PoWからPoSへのシフト③無意味なハードフォークへのけん制が考えられる。時価総額最大のBTCへの影響は限定的か。
「金融庁がETF承認を検討」報道を考える
Bloomberg社が日本の金融庁が仮想通貨ETF承認を検討していると報じられたが仮想通貨交換業研究会の報告書でもETFという言葉は見当たらず違和感がある。3月頃と噂される金商法改正で最大の障壁は解決されるが、それ以外にやるべきことは山ほどある。この材料は売りでは無いとしても、直ちに買える材料でも無いと考える。(その後、この報道は否定されました)
CBDCから垣間見える中国当局の意図
スェーデン・ウルグアイ・カナダ・イギリス・シンガポール各中銀が積極的。日銀は民間銀行の信用創造機能や日銀のラストリゾートとしての機能を重視、取得されるビッグデータも民間で利用されるべきとして消極的。中国当局の実は狙いはそこにあり、CBDCの発行により国民生活の隅々まで把握することにあるのではないか。そうであるならば、中国が規制緩和に動く可能性は低い。
第3の本丸:HSBC、外為決済で27兆円の意味
HSBCが2018年にブロックチェーン技術を使った外国為替取引で約27兆円の決済を行ったと報じられた。一般論として、外資系大手はインターバンクとの接点を本店名義などに限定、各支店は本店との内部取引を行うので、その決済としてSWIFTを代替したと推察する。世界の貿易量年間17兆ドルに対し、為替の銀行間取引は年間400兆ドル。仮想通貨が代替するポテンシャルは高い。
仮想通貨送金元年:送金業者は何故リップルに恋したのか
英MercuryFXのCEOはリップル社のシステムを「初めて見た時から恋に落ちた」としたが、送金業者にとって既存の銀行決済に頼らない最終的な法的通貨決済は悲願だ。銀行にxRapidが普及しない理由は仮想通貨と法定通貨との交換方法が確立しておらず、またトレーディングやコルレス決済など既得権益が侵されるから。Euro Exim銀行の採用が風穴を開けるかが注目される。
ハードブレグジット:合意なき離脱の可能性が浮上
英下院はEU離脱協定案を大差で否決、合意なき離脱の可能性が浮上した。そうなった場合、通関や入管、また英国で取得した金融関連免許などがEU圏で有効でなくなるなど予測不能のリスクに晒される。不戦同盟的な設立の経緯や他の加盟国の結束を守る意味から、交渉は困難を極める可能性がある。混乱の激化は逃避資産として仮想通貨への買い材料となろう。
ニムロッドを2回読みました
2回読んだが最後まで作者が伝えたかった事は何なのか分からず仕舞い。それでいてすんなりと2回も読める、読み易さがある。芥川賞の対象である純文学とは話の筋より文章の芸術性に重きを置くものらしく、それがよく分からないまま2回読み通せてしまう凄さか。仮想通貨は終わりだという人に対する「だからこそチャンス」なのだという言葉に勇気づけられた。仮想通貨の入門書として是非薦めてみたい。
Huawei起訴:米中貿易戦争激化と仮想通貨相場
中国通信機器大手Huaweiを米司法省が起訴により両国の貿易戦争は新たなステージに入った。米中貿易戦争は解決しないので、常にあり続ける問題として市場は都合よく解釈する。従って、この材料で相場が動けば逆向かいが基本と考える。またマイニングが中国に牛耳られているBTCよりXRPに有利に働くか。米GDPに占める対中輸出は0.7%に満たず、米景気への影響は限定的と考える。
2019年アメリカ景気動向と仮想通貨相場
今年の予想で米景気の後退を懸念する声が多いのは、景気拡大が過去最長となったから。ただ2015年後半から2016年前半にかけて在庫調整でガス抜きしており、利下げ余地、大統領選挙のタイミングから2020年央までは景気は持つと考える。米不況は歴史的な危機を巻き起こす傾向があり、仮想通貨にはネガティブではない。

 

Altcoin

ETH:ASICによるハッシュパワーの寡占化への対抗策としてProgPoWの実装が仮決定したこともあり堅調に推移するも、イーサリアムクラシック(ETC)への51%攻撃が伝わると大きく値を下げる展開。更にコンスタンチノープルのアップデートが直前でバグが発見され延期になると更に値を下げた。その後、ETCの51%攻撃は全額返還、ホワイトハッカーの仕業だったと報じられ、コンスタンチノープル実施も2月27日に再設定、さらに大幅リストラが懸念されていたETH共同創始者ジョセフ・ルービン率いるコンセンシスのレイオフが1割程度とされたことなどもあり底堅さを見せていた。しかし、BTC投資家ブロック・ピアーズ氏がイーサリアムは今年中にスケーリング問題を解決する必要があるとし、トロン(TRX)ベースのICOが好評を期すと、ETHの地位低下が嫌われてかじりじりと値を下げる展開となっている。BloombergがJPモルガンのグローバルリサーチへのインタビュー記事でブロックチェーンの応用分野としてトレードファイナンスが期待されているとされたが、記事では例としてイーサリアムのブロックチェーンを利用したスペインの銀行によるシンジケートローンへの応用が紹介されている。膨大な書類が行き交う起債やシンジケートローン、証券化などもブロックチェーンによる代替が期待される分野だからだ。トレードファイナンスの様な日々の決済となるとイーサリアムの処理能力的に限界があろうが、そうした金融の分野ではスマートコントラクトの機能への期待はむしろ高まっている。ただ、その為にも早々にコンスタンチノープルを片付け、昨年話題となったイーサリアム1x(POSへの移行を含むセレニティーへの移行には時間がかかる為、ひと足先にスケーリングなど喫緊の課題に対処しようとする改善提案)による容量問題への対応が期待される。

XRP:年始に藤巻参議院議員に絶賛されて話題となったが、その後もETCの51%攻撃でPoWへの不安が浮上した際にリップル社CTOは同アルゴリズムに頼らないXRPの優位性を指摘、新たにリップルネットに13社加盟、うち銀行を含む5社はXRPを決済に使用するxRapid採用、BOE総裁が2017年からのリップル社との協議を明かすなど好材料が続き40円台に値を戻していた。その後、英送金業者Mercury-FXがxRapidを使用した送金成功と大幅なコスト削減などを発表、同社CEOはXRPに恋に落ちたとまで絶賛、35円近辺で底堅さを見せた。しかし、サウジとUAEとが送金用のデジタル通貨の開発で合意、SWIFTは仮想通貨は危険だと発言するなど、次世代の送金業務の覇権を巡る争いの激化を嫌気してか上値を重くする展開。更に発表された第4四半期のリップル社の決算で市場でのXRP売却が前期比3割強増えていたことも嫌気され、31円近辺まで下落した。しかし、SWIFTがGPIという自社システムとR3のコルダ・ブロックチェーンとを接続すると伝わると、コルダによって決済通貨として採用されているXRPの利用可能性が高まるとしてXRPは急騰した。ただし、詳しくは別稿に譲るが、この提携はXRPの利用促進が目的ではないと考える。むしろ、R3によるトレードファイナンスの電子化(具体的にはL/C発行や他の取り消し不能なドキュメントの電子化)の流れは止められないとして、銀行間およびレアケースだが銀行と企業間の決済をSWIFTが担う形を想定しているのではないか。則ち、今まではLCの発行や通知業務もSWIFTが担っていたが、そこは諦めて、コルレス決済だけはXRPなどに取って替わられない様に守ろうとする戦略と考える。また、SWIFTはLCの銀行間の通知業務は自らに残そうと意図しているのかもしれない。これで、R3によるトレードファイナンスのブロックチェーン化は大きく前進、今後はその中で、どこまでがSWIFTが担い、どこまでがR3で、どこまでXRPが食い込むのか、そうした勢力争いが見られると考える。

BCH:年始にBSVが新たなロゴを発表するなど別々の道を歩み始めた安心感もありBCHも堅調にスタート。しかしBCHのサポーター、Bitmainのウー・ジハンの退任が報じられるとBTCの下落もあり大きく下落。更に同社がオランダやテキサスでリストラを進めていることが伝わるとじりじりと値を下げたが、同社が分裂騒動以来となる公式声明で、分裂騒動では、ハッシュウォーにまでは至っておらず、BSVも独自の目的に向かって進んでいるとエールを送ると一旦値を戻す場面も見られた。しかし、BTCが再び値を崩すと大きく下落。5月のアップグレードが革新的なものとなるそうだと伝わると若干値を戻した。昨年の分裂騒動でも懸念されたがホワイトハッカーによるとされるETC51%攻撃でも、BTCと同じアルゴリズムを使用しているBCHは容易に51%攻撃を受け得ることが白日に晒されてしまった。また分裂騒動で決済に使用される為に一番重要な信頼を失っている。その為、仮想通貨が売られる局面ではより大きく売られ易い展開が続こう。

LTC:ライトニングネットワークのノードが100を超えた事もあり堅調に始まったLTC相場だが、ETCの51%攻撃でLTCにも同様のリスクが懸念された。創始者チャーリー・リーは51%リスクが無ければ、非中央集権とは言えないと強がったが、BTCの下落が始まるとより大きく下落した。しかしウォレット業者Coingateがライトニングネットワークの試行を始めるとすると値を戻し、アルトコインの中では比較的堅調な推移となった。チャーリー・リーは代替可能性と匿名性を高めていくとし、後者の年内の実装を表明しているが、そうすると匿名通貨を禁止している自主規制上、日本国内の交換所での取扱いが停止される可能性があり注意が必要だ。


FXcoin Monthly Report 2018.02.01.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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